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『ALLIANCE』から考える、変わる企業と個人の関係|聴き合う組織をつくる『YeLL』のnote

ひとりひとりが主体的に考え、行動する企業カルチャーはどのようにして作られるのかー。企業と個人の関係性が変わる中で、多くの企業が課題だと感じていることではないでしょうか。

12月10日(木)に開催されたセミナー「自律的組織における人材育成の在り方」では、JT(日本たばこ産業株式会社)で次世代リーダー育成を担う事業企画室 古川さんをゲストにお迎えして実践事例をご紹介いただきました。

「大企業病にかかっていました…」「何とかしないとまずいと感じていた」と話す古川さん。肌で感じていた課題や悩み、実践する中での壁・失敗など、「歴史ある大企業がそこまで言っちゃって大丈夫なの?」というようなリアルなエピソードがどんどん飛び出しました。

セミナーでは、古川さんの取り組みをお聞きしながら、エールの櫻井将さん、篠田真貴子さんと共に「自律的組織とは?」「これからの企業と個人の関係とは?」について考えます。その様子を2回にわたって、YeLLの奥澤がレポートしていきます。

米国における、企業と個人の関係性とは

今回のセミナーのテーマは「自律的組織における人材育成」。もう少し噛み砕くと…「志を持って、自ら主体的に動ける人材を育てていくにはどうしたらいいのか」、と私は解釈しました。大きなテーマでどこから考えていったらいいのか…と思っていたところ、セミナー冒頭では、篠田さんからこのテーマを考える上で土台となる部分についてお話がありました。

篠田さん

「自律的組織を考えるヒントとして、『ALLIANCE』という本を参照したいと思います。どんな本かというと“終身雇用から終身信頼へ”がコンセプトで、“企業と個人が信頼できる関係性を築く重要性”について語られています。本の中では自律的組織といったワードは出てきませんが、概念という点では今回のテーマとまさに同じ意味合いを持っていると私は考えています」

と篠田さん。

『ALLIANCE』の作者はLinkedIn(リンクトイン)の創業者で、アメリカ・シリコンバレーで活躍されている方。ですので、シリコンバレー的な労働価値観、つまり極めて短期的に人が転職するような状況をイメージして書かれた本になります。

ここで語られているシリコンバレーの企業と個人との関係はというと…「仲間だから」「ファミリーだから」と終身雇用をイメージさせる言葉で社員を迎える一方で、短期間でクビになることも珍しくありません。社員も入社したその翌日からもっとよい職場を探して転職活動を始めるのが現状。つまり、表面的な忠誠心を語っていながら、いつでも切れる、切っていい関係だとお互いが思っているのです。著者は、建前と本音が非常に乖離している企業と個人の関係性に警鐘を鳴らしています。

企業の思考として、雇用の短期・長期に関わらず、関係性は長期で持ち、自律的な個人とつき合っていく考え方を提唱しているのが『ALLIANCE』です。

図①

終身雇用から、短期的な付き合いへと変化しつつある日本

篠田さんは言葉を続けます。

「一方で、日本はどうでしょう。
終身雇用を前提にした企業が中心ですが、だからといって忠誠心が高く長期的思考ができるのか。むしろぶら下がり社員が多いだけなのでは?長期雇用関係が長くなるだけに、人間関係が気になって思い切ったことがしにくいのでは?…いろいろ疑問がわいてきます。

そして、日本の企業も事業環境の変化の速度が激しく、成長も鈍化する中で、短期思考になりつつある。変化にどう対応して良いか分からないから、とりあえず今までのやり方で凌ごう、という思考です。それに伴って雇用関係も、終身雇用から、短期的な付き合い方へと少しずつ変化しつつある。図でいうところの、左下ですね。アメリカの流れを追う形になれば、個人の自律性を高める中で、企業への忠誠心を失う関係性へと変化していく可能性が大いにあります。」

図②

企業と個人、長期的に信頼しあえる“パートナー関係”を目指して

本の中には、こんな一文があります。

―忠誠心を得られない企業は長期的思考ができない。長期的思考ができない企業は、将来に向けた投資ができない。そして明日のチャンスと技術に投資しない企業はすでに死に向かっている。

そうならないために。

「シリコンバレー的な関係性を経由しなくても、個人が自律的であり、企業と個人がフラットであり、互いに長期的に信頼しあえる“パートナー関係”を目指せるのではないか」

と篠田さんは言葉を続けます。

個人が自律的であることを前提に長期的な関係をつくるためにはどうすればいいか。

この問いに対する入社時、在職中、退職後のコミュニケーションを『ALLIANCE』では詳しく解説しています。

図③

<入社時>

企業も、個人も双方に「長期で働くかどうかはわからない」ことを前提として契約をする。働く中で企業と個人の関係性が深く、近くなってきた方々が生まれてきた際に、企業と個人がお互いに長期コミットをする。この期待値の前提を揃えることが大事です。

<在職中>
社員には、個人の社外活動や社外人脈の交流を会社して認めることを提唱しています。
旧来の日本企業では、会社の看板や役職名に基づいた人脈や情報以外信じない、逆に個人の活動は会社に持ち込まないでというのが一般的ですが、個人の社外活動や社外人脈との交流を進め、会議室の共有、ランチ代などの交流費や遠隔地の登壇活動の交通費の支給など会社が活動を支援することは、会社にとって新しい情報源であり、世の中がどう動いているかをキャッチしやすくなる利点があります。個人としても会社にいる自分以外の全人格的な自分を会社に認めてもらっている感覚を得るため、互いに信頼関係を構築しやすくなります。

<退職後>
上記のような入社時の共通認識、在職中の関係性をもって退職する場合、退職後もアルムナイとして良質な関係を築き、貴重な社外の情報源や協業先、営業先、人材プールとなる可能性があります。

セミナーレポート第2弾では、特に<在職中>の関係性に焦点を当て、企業と個人の理想の形を目指すにはどうしたらよいのか…JT(日本たばこ産業株式会社)古川さんの取り組み実例を見ながら考えていきたいと思います。


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