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言葉

祖父に見守られながら遊んだ川に自然と足がむいてしまった。
自然と言い訳をしながらも心の奥底では理由が判っている気もする。

ゆっくりと腰を下ろすな否や一羽の白い鳥が美しい羽根を広げて舞い降りて来た。
人慣れしているのか余りにも近い距離と目線をしっかりと合わせて来る様子に驚いた。

瞬間に頭へ映るイメージは高級ホテルの優秀なベルマン。
嫌味の無い気高さに荷物を預ける安心感がある

見透かされている。

「あのね」......
音にしない言葉で聞いてもらう事にした。

自分が何か表現すると、自分が飛躍を始めると
いつも全否定されたり、とことん邪魔されるの。

言葉遊びが好きでお小遣いを貯めて原稿用紙を買いに行った子供の頃。恥ずかしく誰にも見せれず隠した。1人の時に出しては書き直してた。
消し過ぎで破れたから裏からテープを貼った。

文章よりも上手になった事は上手に消すコツと
上手にテープを貼るコツ。無駄では無かった。

学校で書く作文は先生が全否定で、赤ペンだらけで説明しながら怒り出して紙に穴が空いた。
百人一首大会にでも出ているのか、デスクから手を滑らせて床に落とす技は速かった。
拾うのはいつも自分。
先生は正しいからその辺りから書くのやめたんだ。

筆が好きでお習字も唯一の楽しみだったが、先生の罵倒で左右の耳を挟まれた。
朱色の墨汁は重ね過ぎると破れると知った。
罵倒の声を遠くに置いて擦り上げた墨汁のキラキラ光る輝きに感動していた。
ビリビリに破れた半紙達はゴミだから残すなとキツく言われ拾い揃えて鞄に入れた。
ありがとうございました。っと一礼して扉を開けた時の空気が美味しかった。
空気が美味しいと感じて感動したんだ。

それでも言葉が好きで言葉遊びが好きで何度も自分を救って来たし、楽しんだよ。

絵を描く事も好きでね、仕事にしたいとは思わなかったけれども絵を描く時の感覚や集中力は大人になってから仕事で役にたったと思うんだ。

言葉と色が手を繋ぐと不思議な個性になると感じる。その感覚....

世の中には言葉や絵を表現する事が得意な人が沢山いてる。感動して手を叩いてしまう。
自分もやってみようかな?っとゆっくり扉を開いてみると...
自由な様で自由で無い様な。
何の為に表現するのか?
書き方描き方の奥深い事。

睨みを効かせた言葉達に頭からつま先まで見られている様で怯んでしまう。
同時に勉強不足を感じる。

持ち前の頑張り屋虫が自分の肩に留まる
良いのじゃないか。それでっと言う。
深く考えない。
何者でも無い気軽さを味わう。

何者でも無い者と敗者とは違う。
言葉遊びが好きな者と書いたネームプレート。

聞いてくれてありがとうねっと伝え
優秀ベルマンの白い鳥から鞄を返して貰った。

またね。

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