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「鳥島近海の中規模地震」は津波に注意

【はじめに】
この記事では、ウェザーニュースLiVE内で、2021年6月9日に放送された「教えて予報士さん」のコーナーでも紹介された「鳥島近海」の浅発地震について、簡単にまとめていきます。

1.ウェザーニュースLiVE 山口さん解説

まずは、ウェザーニュースLiVEの「教えて予報士さん」のコーナーで、山口剛央さんが話した内容を纏めます。(03:45頃~)

直近10年間で津波が起きた(日本付近の)地震を単純に平均すると「M6.8、深さ26km」ぐらい。大体それぐらいが津波のやってくるレベル。

ただし、(地震による津波にも)色々なパターンがあって、M6クラス後半はある程度の目安なんですが、M5クラス後半で津波が起きた事例がある。

その代表例が、今回ご紹介する「鳥島近海」の中規模・浅発地震です。

2.気象庁資料から過去の事例を紐解く

ここ数年で顕著な事例となったのが、2015年5月3日に起き、最大で津波を60cm観測、津波注意報を遅れて発表した地震です。

地震の翌年の2016年に開催された第13回「津波予測技術に関する勉強会」の会議資料からスライドを1枚引用しました。(↓)

(出典)[資料4] 2015年5月3日鳥島近海の地震の事例解析

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表では4例が示されていますが、いずれもMj6前後で、我々が普通「津波」を意識する規模よりも一回り近く小さいものとなっています。

また、「鳥島近海」と一言でいっても、その海域は非常に広くて、東日本をスッポリと覆ってしまえる程の面積があります。

(出典)地震情報で用いる震央地名(日本全体図)「抽出」

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その中でも、特に今回取り上げたような津波を発生しやすいのが、「スミスカルデラ」と呼ばれるものの周辺が主だということなので、もう少し調べてみましょう。

3.スミスカルデラ(須美寿島)について

以下、Wikipedia日本語版からの引用となりますが、ざっくりと「スミスカルデラ」について見ていくことにします。

須美寿島(すみすとう、すみすじま)は伊豆諸島の無人島。行政区画は東京都直轄。欧名はSmith Island。伊豆諸島の南部、八丈島からは南に約180 km、青ヶ島からは南に約110 kmの太平洋上に位置する。ベヨネーズ列岩と鳥島の中間にあたる。

東京都に属してはいるが、2020年1月1日時点で、所属市町村未定のため本籍を置くことはできず、都の直轄として都の行政出先機関である東京都八丈支庁が管轄している。

歴史 [編集]
1853年3月26日、イギリス帝国の軍艦サラワルソン号が発見、その直後英国軍艦ヘーバー号(スミス艦長)が確認し報告。島名はその艦長に由来する。

名前の由来は、本当に「スミス」という人名なのだそうです。おっとクイズ好きの血が騒いでその名の由来を調べてしまいましたが、閑話休題。

気象庁の震源地名でいうところの「鳥島近海」に属する島ではありますが、そもそも「所属市町村未定」な島で、位置としても、鳥島からはかなり北に離れた場所だということが分かります。

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そして、須美寿島の頁には、今日の主題の地震に関する記載もありました。

島の北側には直径10 kmの海中カルデラがあり、須美寿島はカルデラの南側の高まりの頂部である。このカルデラの形成は少なくとも約20,000年前より古いと考えられている。
須美寿島の北北東約7 kmの外輪山上には、白根と呼ばれる水深7.7 mの浅瀬(暗礁)があり、後カルデラ火山の一つとされている。カルデラの下にあるマグマが岩板を押し上げる形の海底地震が度々起き、津波を発生させる。

まだ研究が進められている段階で、実際のところ、これが確定的な説とまでは言えない様にも思いますが、有力な説として、「スミスカルデラ」の地下にある海底マグマが比較的小規模な地震でも津波を発生させる原因ではないかと考えられています。

4.過去の事例について

こうした地震の過去の事例について、今一度まとめてみます。

・1984/06/13 Mj5.9 130~150cm
・1996/09/05 Mj6.2 26cm
・2006/01/01 Mj5.9 17cm
・2015/05/03 Mj5.9 0.5m
・2018/05/06 Mj5.7 0.3m

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平成に入っても度々発生していて、直近では2018年にもMj5.7(Mw5.3)で津波を観測しています。高さは「津波注意報」の基準に当たる範疇であり、海中や海岸付近から離れることが求められる規模です。

「津波はM6後半じゃないと、まず心配ない」と考えるのは、必ずしも適切ではなく、こうした(例外的ではあるものの、)事例があることを、ご存知なかった皆さんには知っていただきたいと思います。

【おわりに】

今回は、「鳥島近海(特に【スミスカルデラ付近】)」に特化して、記事を書きましたが、こうして「M6後半」よりも小さい規模で地震が起きる事象は、この海域だけに限定したものでもありません。

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例えば、2013年4月17日の「三宅島近海」の一連の群発地震(最大震度Mj6.2、最大震度5強)では、6~7cmという規模ではありますが、津波が発生をしています。

カルデラなどの海底の活動のほか、海底地滑りなどの現象でも、通常の地震の規模よりも大きな津波が発生することは考えられます。そうした場合は、想定外であるために被害が拡大してしまう可能性もあろうかと思います。

「M6前半以下で津波が発生する」ケースは確かに例として少なく、大半の地震では津波は発生しません。だからといって、「M6後半に達しなければ安心」などと単純な線引きをすることも、必ずしも適当とは限りません。

頭の片隅にでも、こうした事例があることを記憶に留め、震源が離島などで震度が小さく、殆ど注目されていない地震であっても、こうした事象があることを思い出して(あるいはこの記事を尋ねて)頂ければと思います。

それではまた、次の記事でお会いしましょう。Rxでした、ではまたっ!


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