映画館だと、いくらか我慢してしまうけど、家でひとりで映画をみてると、ラストシーンとかで不意に「うっ、うぇぇぇ、えっえ…」と泣いてしまうことがある。

今回、盛大に泣かされたのは、『ザ・フォール/落下の王国』だ。

吹き替え版をみて泣き、あまりにおもしろかったので、次の日、字幕版をみてやはり泣き、続けて監督のコメンタリー版をみて、また泣いてしまった。

劇場にいけないのはさみしいけど、家でなら気軽に号泣できるのはメリットではある。
こんな状況だから、泣ける映画をみるのも良いのだろう。

『ザ・フォール/落下の王国』は、変な映画

大傑作だが、変な映画だ。

そもそも作り方が狂ってる。
たどたどしい英語を話す６才の少女と対話しながら作った物語を、世界２４ヵ国をまわって撮った映画（しかも自費で）だそうだ。

映像や構造としてはカルト映画に近いけど、コンセプト自体が、少女向けに作られてるので、普通にファミリーでみても、楽しめる作品になってる。

不思議でつかみどころがない映画だけど、４回もみると、なんとなく似てる作品がみえてくるので、紹介しよう。

ミツバチのささやき

「むかしむかし…」からはじまる、少女と寓話について映画、という大枠が同じ。
細かいところでいえば、少年少女を半ば盗撮気味にとったりする演出なんかは、意識してるんじゃないのかなと思う。

あとは、ミツバチのささやき自体が、いろんな映画のオマージュを使っているので（ラ・シオタ駅への汽車の到着とか）、オマージュ元が一緒なのかもしれない。

不思議の国のアリス

監督がインタビューで「基本になる考えは１つ。映画や本がない頃のような語り聞かせだ　聞き手の反応を見ながら　話を作り上げていく　子供の頃に経験したような双方向の物語なんだ」と、いっていたので
少女と対話しながら、即興で作った寓話、といえば『不思議の国のアリス』
物語自体は別にそんなに似てないし、構造もぜんぜん違うけど、作り方や、作品のあり方は似ている。

ミザリー

映画にもなったスティーブン・キングのホラー小説。
両足が動かない状況で、命をかけて、即興の話を作るというシチュエーションが同じ
現実と、作り話が交互に展開していくという物語構造が同じ
※映画版はみてないので、映画が同じかどうかはわからない

ミザリーでは、千夜一夜物語のシェラザードのように、生きるために物語を紡いでいくのだけど、『ザ・フォール/落下の王国』では、その逆になっていて、それがまたせつない。

以上。似てると思った作品でした。
あくまで、わたし知ってる作品の中で似ていると思っただけなので、公式的なものではないです。

監督自体はインタビューや、コメンタリーで、黒澤明、小津安二郎、タルコフスキー、デビットリンチ、モンティパイソンなどの名前をあげていました。

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』は、かなり似てる。

2018年に公開され、日本では今年になってようやく公開された『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』はかなり似てる、というより、主人公がCM監督だったりするあたり、意識的に似せてるんじゃないかと思う。

ターセム・シン監督自体が、コメンタリーで、モンティパイソンの名前をあげてるので、長いこと撮影中止になっていた『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』の設定を持ってきた可能性もある。

大きく違うのは、『ザ・フォール/落下の王国』は聞き手（少女）のために作られた映画だが、『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』は、どちらかというと、作り手（おっさんや、老人）に向けて作られた映画なので、ドンキホーテのほうがより内向的な作品な感じがする。

また、『ザ・フォール/落下の王国』は虚構と現実とはっきりと切り分けて描いているけど、『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』はその辺が曖昧になっている。

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』をみたとき、連想した作品が、
語り手の物語と、語り手の現実が交錯する、フェリーニの8 1/2や、

虚構と現実と願望の区別をあえてつけないデビットリンチのマルホランド・ドライブとかだったので、似てるけど、ぜんぜん違う。ぜんぜん違うけど、似てるっていう感じではある。

『ザ・フォール/落下の王国』は、めちゃくちゃおすすめ

いろいろな映画の名前をあげたけど、その中でも『ザ・フォール/落下の王国』は、純心な少女から、夢やぶれたおっさんまで楽しめる傑作だった。
泣けるかどうかはわからないけど、感情を強く揺さぶることは間違いない。

少なくても、わたしは3回みて、3回号泣した。そして、気分がすごくすっきりしました。

おもしろい映画を探していたら、ぜひどうぞ。