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国際機関でのキャリアアップと国際機関勤務のメリット・デメリット

この記事は教育分野で活躍されているJPOの方が書かれた以下の記事から着想を得ました。

以下の目次に沿って、自分なりの考えをシェアしたいと思います。ぜひ皆さんの考えも知りたいです!


1.国際機関でのキャリアアップに関わる要因

国際機関でのキャリアアップに関わる要因

ここでのキャリアアップはP2からP3、JPOから正規職員になる場合を想定しています。①自分で変えられる要因、②外部の協力が必要な要因、③自分では変えられない要因の3つに分けて説明します。

①自分で変えられる要因

最初はシンプルに職歴です。組織によって若干の差はあるかもしれませんが、P3になるには最低5年以上の関連職歴が必要です。

次に応募できるポストの多さです。これには自分の専門分野や行ける国が関わってきます。例えば、専門分野が教育であれば、多くのUNICEF国事務所には大きめの教育ユニットがあり、NY本部及び地域事務所にも教育の部署・ユニットがあるため、Education Specialistのポストは比較的たくさんあります。Nutrition Specialistも同じことが言えるかもしれません。一方、Innovation SpecialistやKnowledge Management Specialistといったポストは多くない印象です。行ける国の数は自分の語学力やハードシップの高い地域に行けるかが大きく影響します。英語は世界中ほぼ全てのポストで必要ですが、これに加えて、仏語が話せれば仏語圏のポスト(西・中央アフリカ、ハイチ、マダガスカル等)にも応募できます。ハードシップはH(本部)及びA(困難レベルが低く、家族帯同OK)からE(困難レベルが高く、家族帯同NG)までありますが、「独身もしくは家族とも別居OK!どんな場所でも行く!」という人であればハードシップの高いアフガニスタンやスーダン等のポストにも応募でき、幅が広がります。

3つ目の自分で変えられる要因は、応募書類や面接のスキルです。今や国際機関の応募書類・面接に関する情報は公式のものでも、経験談でもインターネットで検索できますし、国際機関就職に特化したキャリアアドバイザーのサービスもあります。自分の時間とお金を投資することで、改善できる要因の1つです。

②外部の協力が必要な要因

外部の協力が必要な要因として2つあげました。1つ目のPERというのはパフォーマンス評価のことで、パフォーマンスを業務計画や指標に照らし合わせ、自分の上司が記入をします。次のポストの採用時に参照される重要な資料です。もちろん自分が良いパフォーマンスを発揮し、上司の評価を上げることもできるかもしれませんが、一定程度相性の合わない上司や不条理な評価をする上司もいるかと思います。

2つ目はネットワーキングで、自分の存在を知ってもらう、できれば自分に対し良い評判を持ってもらう、のが目的です。ただ、私もネットワーキングの重要性を認知していながらも、今までそれが直接採用に繋がったというケースはありません。一方で、縦と横の繋がりがあると、空席情報が入ってきたり、おもしろい仕事を振ってもらえたり、自分からも積極的に情報共有をして長期的に構築され、必ずしも見返りを求めないものなのかなと思っています。

③自分では変えられない要因

自分で変えられない要因として、空席が空くタイミングとポストの競争率の2点を挙げました。空席が空くタイミングは文字通り、自分のレベル(P3)と専門性に合致したポストがなかなか公募されないと応募することさえできません。ポストの競争率も自分ではどうにもできません。これは運に近いですが、①で述べたように自分の応募できるポストの幅を広げることで、競争率の低めのポスト(例えば、仏語圏のハードシップが高い地域、マリとか…?)に応募することもできます。ただ家族帯同NGの地域であれば、単身での赴任になりますし、ハードシップの高い緊急支援の現場ではメンタルへのストレスも高く、ある程度プライベートの犠牲を払って仕事に打ち込むことになるかと思います。後から説明しますが、これが20代後半から30代前半の結婚・出産等のライフイベントと重なるから難しいのです。

2.国際機関勤務のメリット・デメリット

国際機関で働くメリット・デメリット

どんな仕事をするにしてもそのメリット・デメリットを天秤にかけ、精査することが重要です。私が思うメリットとデメリットを7つずつリストアップしました。

メリット

①世界の諸問題解決に貢献するという誇り
これは人それぞれ感じる場面が違うと思いますが、前職では自分が携わったプロジェクトの様子を見たり、無事終了したりした時に微力ながら貧困削減や栄養・衛生改善に貢献できたかなと達成感を感じていました。今の職場は現場から遠いので、大きな会議が終わった時や自分の所属組織のトップが人道原則に基づき、子どもの権利保護を世界にアピールしているのを見ると、この組織に居て良かったと感じます。

②ホワイトでフレキシブルな勤務体制
勤務体制は事務所によって差がありますが、現在の職場は天国かと思う程ホワイトで、コアタイムはありますが、同僚はそれぞれ好きな時間に好きな場所から仕事をしています。組織の制度的にも年に数カ月はリモートワークをOKにしたり、有給は年30日だったり、民間企業と比べて良いと思います。

③多国籍な職場環境
特に説明は不要かと思いますが、事務所には世界中から来た人が集まり、常に様々な言語は話されています。

④男女平等
日系企業と比較した場合ですが、「女性だからお茶くみや雑用をすることを期待される」、「男性だから育休が取れない」なんてことはありません。もちろん完璧ではありませんが、私にとっては愛想笑いをしたり、飲み会で気を使ったりなんてする必要がないので、気が楽です。

⑤日本の企業と比べた待遇の良さ(扶養の枠も広い)
昨今の円安も相まって、日本企業と比べ、基本的に待遇は良いと感じています。今の国際機関に入る前に民間企業の内定を2件もらいましたが、そこでオファーされた給与よりも良い待遇です。国際機関の給与はOECD等一部機関を除き、国際スタッフか現地採用スタッフかの違い、ランク、赴任先別で一律で決まっています。こちらで計算可能です。また日本の扶養枠103万円と比較して国際機関の扶養枠は広く、こちらも正確な数字を知る方法があるのですが、年に25000ドル(400万円)程だったと思います。

⑥常にスキル・アップ、リスキリングが求められる
これは自称向上心の塊の私にとっては最高の職場環境です。新しい概念や潮流、言語や馴染みのない国・地域等常に自分の知識を広げ、深めることが求められ、またそのサポートもある程度得られます。

⑦世界中に赴任する可能性がある
これも好奇心が強い私にとっては、大きなメリットです!もちろん、言語や自分の専門性、ハードシップ度によって行ける国は限られてきますが、世界中に事務所があるので、理論上は例えば2年毎に違う大陸にある違う国に赴任することも可能です。

デメリット

①不安的な雇用体系
ご存じの通り、国際機関では次のポストが自分で積極的に応募し、探すことが求められます。YPP試験で入った職員やある程度勤務歴があり、ランクが高く、Mobility Exerciseに入っている職員なら、いわゆる終身雇用なんでしょうか?私もまだはっきりわかっていません。基本的にJPO後は自分で次のポストを探す必要がありますし、Fixed-termポストが取れなければ、TA(Temporary Assignment)やコンサルタントで食いつなぐ必要があります。これは有期ポストが多い、国際協力分野全般にも言えることですね。

②帯同家族への負担や別居の可能性
今まで説明した通り、ハードシップEの地域には家族を連れていけません。C-Dだとしてもインターネットや教育・医療施設等のインフラが整っていない場所に家族が行きたがるでしょうか?夫婦2人とも働いている場合は、リモートワークOKでない限り、どちらかが休職したり、退職する必要があります。別居になったらなったで、1-2年のはずが4-5年に延びたりして、幸福度が下がってしまいます…。

③Family Planningがしにくい
①と②を掛け合わせると何が起こるでしょうか?そうです!Family Planningができなくなってしまいます!不安定な雇用体系、1年後に世界のどこに行くか分からない状態、独身または夫婦で別居、こんな状態では婚活・妊活はかなり困難です。

④日本より生活費が高い上、住居手当が少ない
日本は世界各国と比べインフレ率が低く、昨今の円安も相まって日本での生活は世界標準と比べかなり安くなっています。現在暮らしている欧州では約1.5-2倍の生活費がかかっており、以前いたアフリカでも日本より高い生活費がかかりました。住居手当もこちらで計算可能で、家賃のほぼ全部カバーされる日系駐在員と比べると国際機関では一部しかカバーされません。よって、待遇は良くても支出が多くなってしまいます。

⑤1ヵ国に滞在しないため、株や不動産投資がしにくい
国際公務員として基本的に副業は禁止されているため、株や不動産をしている人はいます。一方、海外から日本株の購入は制限があり、また不動産を買うにしても海外で外国人が不動産を購入する際やローンを組む際の制限もあります。

⑥Up or Outの精神的なプレッシャー
①に関連して、次のポジションを見つけられなければ、国際機関以外の職も探す必要があります。常に就職活動をしているようなプレッシャーや不安があります。

⑦異動に伴い、1から生活を立ち上げなければいけない
2年毎に国を変え移動しているので、自分の荷物は強制的にスーツケース2個で収まるようになります。特に私は家具付きアパートに住んでいるので、自分で購入した家具はほぼなく、服も最低限しか持っていません。新しい赴任先では季節に合わせて防寒具を買ったり、なければ調理器具等を1から揃える必要があります。また離任の際には荷物の重量制限で泣く泣く譲ったり、捨てなければならない物もあります。ミニマリスト的な生活はいいですが、自分の家を持ち、お気に入りの家具を揃えたいという願望もあります。

今回は1.国際機関でのキャリアアップに関わる要因と2.国際勤務のメリット・デメリットを紹介しました。参考になった場合はスキとコメントお願いします!

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