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CO2から何かを作るとそれより多くのCO2が排出される法則

  まただよ。

こういうエコのふりをした非エコな話を斬る話なら、何度でも書きましょう。どうやらバックナンバーのビューを見る限り、環境問題の話題のほうがウケるようだし。

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(環境問題の記事はまだ3つしか書いていないけどすべて閲覧数が多い)

  タイトルに書いたとおり、二酸化炭素(CO2)を原料に何かを作ると、残念ながらそれより多くのCO2が排出されます。その残念な理屈を解説します。なお、これを説明するためにはどうしてもエネルギーを理解してもらう必要があります。理科が嫌いな人は多かろうと思いますが、できる限り素人でもわかるように意識して書きましたのでお付き合いを。

■なぜCO2が発生する反応は発熱なのか

  まず、分子は化学反応で別の分子になるときに、ほぼ必ずエネルギーを得るか失うかどちらかが起きます。そしてエネルギーを得る場合は熱を奪い(吸熱)、エネルギーを失うときは熱を放出(発熱)します

  CO2と水(H2O)はそれらのエネルギー(専門用語では「生成エンタルピー」)があらゆる分子の中でも屈指の低さ。だから都市ガス、灯油、プラスチックなど炭素(C)と水素(H)でできたものが酸素(O)で燃えてCO2とH2Oになるときに、エネルギーを失って発熱するのです。

標準生成エンタルピー (気体、小数点以下略)
メタン(都市ガス)                 75 kJ/mol
ドデカン(灯油の代表成分)  24 kJ/mol (C1あたり)
酸素                                       0 kJ/mol
水                                     -242 kJ/mol
二酸化炭素                       -394 kJ/mol

■CO2が他の何かに転化すれば吸熱する

  ということは、CO2から何か別の物質を作ろうとしたら、どうしなければいけないか。CO2を生じるときと逆なので、エネルギーを得る、すなわち吸熱する必要があります。吸熱反応には室温でも空気中の熱を奪って進む、冷えピタや熱さまシートのようなものもありますが、残念ながらCO2は室温ではビクともしないので加熱が必須です。そして反応で何かしらの素材に転化するとき、その熱を奪っていくので加熱を止めるわけに行きません。

  高温にしないと反応しないし、しかも熱を奪っていく。これがCO2を原料に何か他の物質を作るときに問題となるポイントです。

■CO2を排出しない熱源を探す

「じゃあどうやって加熱しよう」

  ここまでサラッと「加熱」「熱を奪う」「高温」というワードを出してきましたが、この熱源が今回の環境問題を考えるキモになります。

石油を燃やす? CO2が出ます。
LPガスを燃やす? CO2が出ます。

CO2を減らすためにやっているのでCO2が出ない方法でなければ意味がありません。一度熱に変換するプロセスはロスがあって効率は100%になり得ないから、CO2を出して熱を得る方法は素材になるCO2より排出するCO2のほうが多いからです。

電気を使う? その電気はどうやって作る?
火力発電? さっきと変わらずCO2が出ます。
原子力発電? 安全が確保できず再稼働の承認がなかなか下りません。
水力発電? この素材だけのためにダムの水は使えません。
太陽光発電? ソーラーパネルを作るのにCO2が出ます
地熱発電? 場所が限られるし、発電総量が小さすぎます。
風力発電? 場所が限られるし、発電総量が小さすぎます。

そうです、CO2を出さずに加熱しようとすると、手段がきわめて限られることに気がつきます。

■結局は地球上のどこかでCO2が排出される

  そこで素材メーカーは裏ワザを使います。

「社外で出るCO2は責任外だからカウントしない!」

結果、知らないどこかでCO2をたれ流しながら作られたCO2を原料にした素材が、メーカーのプレスリリースで発表されるわけです。リリースはSNSによって拡散され、化学やエネルギーがわからない人に絶賛され、このプロジェクト推進している環境省の役人の評価が上がります。

  そして、数年、あるいは数ヶ月この素材生産を継続したメーカーは、次にこう考えるでしょう。

「よし、環境に優しいアピールは十分できたから、そろそろ止めよう。赤字だし!」

CO2転化ビジネスはどうやったって赤字になるのです。ここまでの理屈を知ればわかること。CO2を他の物質に転化するときにそれ以上のCO2を出しながら熱を食わせないといけないので、エネルギー代がペイするはずがありません。通常のナフサや合成ガスという原料を使うよりコストが高くなるのは当たり前で、価格競争力なんてないのです。

  以上、CO2を原料に何かを作るとそれより多くのCO2が排出されるメカニズムでした。

  理科嫌いの人にも読んでもらうために細かいことをだいぶ省いたので、むしろ理系の人にこそ「不正確」「データ不足」と怒られそうですが、理系なら自分で計算できると思うのでやってみてください。大筋に異論はなかろうと思います。化学反応式とかエンタルピー計算とか厳密な転化プロセスとかまで書くと、大衆には最後まで読んでもらえないので、ご理解ください。

■CO2のまま使ったほうがいい

  おまけで少しだけ現行のCO2ビジネスを語っておきます。

  ゴミのように扱われるCO2にもいいところがあって、それは少し冷やせば簡単に固体になり、少し圧縮すれば簡単に液体になること。だからドライアイス、飲料用炭酸、石油採掘加圧用ガスという、CO2のまま使う方法ならビジネスとして成立して実現しています。下手にCO2を転化して素材にしようと考えるのではなく、工場排ガスのCO2の純度をいかにして上げてこれらに使えるようにするかという発想のほうがまだ可能性がありますよ。


ではまた、次の記事で。


Yoshiyuki IZUTSU

https://www.linkedin.com/in/yizutsu/


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