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運休計画良いのか悪いのか

3度目の緊急事態宣言では対象の4都府県の鉄道各社に対して、減便や終電繰り上げを要請した。JR筆頭に多くの鉄道で終電繰り上げが実施され、首都圏では大型連休中日の平日通勤時間帯の列車を減便し、京阪神では5連休の昼間を中心に野洲発着の新快速や大阪環状線、USJ最寄りのゆめ咲線、大阪と奈良などを結ぶ大和路快速が大阪環状線への乗り入れ中止(天王寺〜加茂間のみ運転)などが行われる。しかし、一部では運休したことで「密」が発生して、返って逆効果となったところもある。そんな現状を受けて、通勤時間帯の減便を取りやめた路線も出たほど。

鉄道会社に勤めていた僕からしてみれば、運休することで「密」が酷くなるのは予想の範疇で当たり前。実際、「大型連休狭間の平日」とはいえ、カレンダー通りに仕事している人が大方だと思うから、こうなるのも恐らく分かっていただろう。それでも、行政から突然の要請で焦ってしまった面もあるかもしれない。

コロナ禍以前でも運転再開直後の列車や速達列車の遅れ、自然災害による間引き運転で客が集中し、入り切らない乗客にかなり神経を使った個人的な思い出があって、ピリピリした空気で社員、客問わず怒られることも珍しくない。そんなことが想像できると要請があったとしても自ずと通勤時間帯の運休を避けた鉄道会社は多かったと思う。

大阪メトロは過去の宣言期間中に夜間の減便を実施していたとき、「夜の街」を避ける風潮故に大きな混乱や混雑は無く、人出を減らす効果は絶大だった。
しかし、その成果はあれど、テレワークもそんなに進んでいない統計があるから、結局は会社に行って移動することが必然的に生じる。通勤時間帯の減便が人出を減らすことに効果があるかと言われると微妙だ。

連休合間の平日の京都駅や奈良線、新快速のラッシュアワーはいつもと変わらない風景で、減便がなかった分関東のような混乱は聞かなかった。テレワークがいかに難しい、あるいはやりにくいのかがよく分かる光景でもあるし、これまでもだいたいみんな仕事に行っている光景があることは分かってる上に、1度目の宣言よりは移動を躊躇しない人は多いことでしょう。

コロナ禍で鉄道を躊躇われるようにはなったが、やっぱり列車の定時性の強みは揺るがないし、鉄道における「クラスター」発生事例がないからみんな乗る。さらにテレワークが進んでいないから、オフィスへ移動せざるを得ない。故に減便しても時間帯によっては効果がないことがある。実際、要請であるから従わなくても何か不利益が被るわけではないし、終電繰り上げ以外の時間帯は特段指定がなかった面もあって、「スジ屋※」の方々はダイヤ調整に頭を抱えたことでしょう。悪い面が出てしまったが、これも事業者や行政にとって少し学びになったのではないだろうか?

※1つ1つの列車の時刻を線で示したのを「ダイヤグラム」といい、その線を「スジ」と呼ぶ。それを引きダイヤを作る担当職員のことを俗に「スジ屋」と呼ぶ。

ストリートミュージシャンの投げ銭のような感覚でお気軽にどうぞ。