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第5期アローバース 感想

アローバースが毎年恒例の『ARROW / アロー』と『THE FLASH / フラッシュ』のクロスオーバー・エピソードの枠を拡大し、『レジェンド・オブ・トゥモロー』と『SUPERGIRL / スーパーガール』も加えた計4番組のクロスオーバー・イベント『インベージョン!』を実施した第5期をふりかえる。


『ARROW / アロー〈シーズン5〉』感想

お気に入り度:★★★★★ 5 / 5 

世界を滅ぼさんとするジェネシス計画を打破し、現在は市長としても活躍するオリバーの前に、彼の血塗られた過去が生んだ漆黒の殺人鬼が現れる。

『アロー』はここ何シーズンか、新番組に合わせてコミック的要素を増やすことに専念していた。だが、シーズン5はオリバーの過去を物語の焦点にして、シリーズ初期のようなリアルでダークな作風へと回帰した。過去最凶のヴィランの登場に震え上がる。

漆黒の殺人鬼 プロメテウスは、オリバーの過去そのものを武器としたヴィランだ。オリバーやその仲間を直接殺すような安易な手は使わず、ひたすらオリバーの自滅を狙う。オリバーの罪と欺瞞をオリバー本人に突きつけるプロメテウスはシリーズ五年目ならではの究極の敵対者である。また、脚本上のその正体の隠しっぷりも見事で、これにはまんまと騙された。

ただ、プロメテウス単体の描写に力を入れすぎたのか、プロメテウスに肩入れする連中の描写は今ひとつ。結果的にプロメテウスの狡猾さが際立ったと云えるが、それにしたってプロメテウスの言う通りに動いてばかりで、どういう人間なのかがあまり伝わってこない。

一方で、チームアローに加わった新米ヒーローたちの描写は良かった。本筋が本筋なので終盤では存在感が薄れていたものの、全体的には活躍が多く、各々の背景がしっかりと描かれ、古参キャラクターに劣らない魅力を見せている。まあ、ラグマンが『アロー』という番組にとってはその能力が強すぎたのか、早期退場となったのはかなり惜しいけれど。

オリバーの地獄の5年間を描いた過去編が完結を迎えたことも印象に残る。最後の過去編は、現在編がオリバーの過去を焦点としていることもあって、最後に相応しい充実っぷり。シーズン1の現在編へと繋がる場面も多く、特にシーズン1の冒頭と直接繋がる結末なんて感極まりない。

それと、シーズン5は脚本だけでなく映像にも力が入っていた。キレのある生身の殴り合いと特撮を掛け合わせたアクションシーンは、これまでとは桁違いの迫力がある。グリーンアローの仕掛け矢は種類が増えてますます楽しい。とは云え、後半では前半ほど迫力のあるアクションはなかったので、物足りない気持ちがないこともない。

『アロー〈シーズン5〉』は新キャラクターが多数加わる傍ら、シーズン1から続いた過去編が完結するなど、シリーズの新たな出発点でもあり、一区切りでもあった。5シーズン目らしい進化と5シーズン分の歴史を感じられて、アローバース全体でも上位に好きなシーズンだ。

『THE FLASH / フラッシュ〈シーズン3〉』感想

お気に入り度:★★★・・ 3 / 5 

一つの願いが生みだした異なる世界〈フラッシュポイント〉。未来から現れた最強の敵〈サビター〉。変わってしまった過去と変わらない未来が、地上最速の男を苦しめる。

シーズン3では、敵と別時間軸の自分を死に追いやり、私情で歴史を変える禁忌を犯したバリーが、そのツケを払う。新たな敵の出現、シスコの兄の死、ケイトリンの別人格の覚醒……バリーの過ちからチーム・フラッシュは過去最悪の状況に置かれ、自分たちの絆を試される。バリー、アイリス、シスコ、ケイトリン、ジョー、セシル、彼らの三年間の重みを感じられた。

だが、古参キャラクターたちの描写に注力している反面、新参キャラクターの存在感が薄くなってしまっている。終盤になって恋が始まるHRは勿論のこと、ジュリアンも古参キャラクターの絆の強さを引き立てる為にいるという感じで、早々に退場ルートに入っていた。

シーズン2からいるウォリーも気の毒だ。念願だった超スピードを手にし、スーパーヒーローとなり、一時は「バリー以上」と持ち上げられるも、結局は「バリー以下」に落とされる。ウォリーには第二の主人公と云えるくらいの活躍を期待していたので、これにはかなり落胆した。

メインヴィランであるサビターの描写も惜しい。「またスピードスターか」という感じがするとは云え、金属製のクリーチャーのような外見は格好良く、気の毒なくらい悲劇的な背景も魅力的ではあった。しかし、リバースフラッシュやズームと比べるとそれほど悪役的な活動をしておらず、壮大な設定のわりには悪役としての存在感がない。

一応、サビターも時の牢獄にいた頃なら、脱獄の必要があって色々と暗躍していた。しかし、サビターが脱獄してからの物語は、バリーが未来を変えようとしては失敗する内容が主で、サビターがあまり出てこない。しかも、いつの間にかサビターが迫力満点のCGクリーチャーから着ぐるみの大男に変わっている。あまりに惜しい……。

ウェザー・ウィザードやトリックスターといった馴染みの悪役があまり登場しなかったのも物足りない。とは云え、個々のエピソードでは未来に行ったり、ミュージカルしたり、ゴリラ軍団が暴れたりと、前シーズン以上に多種多様な話が見られて面白かった。アクションシーンも進化し続けている。

時間移動や歴史改変が繰り返された『フラッシュ〈シーズン3〉』は、いつ何があったのかの全貌を掴むことが困難になっていて、モヤつくものがあるが、次のシーズンに向けた伏線は少なく、全体的にはすっきりとまとまっている。『アロー〈シーズン3〉』でオリバーがヒーローを辞めて最愛の人と新しい人生を歩みだした結末とは対照的な結末も良い。

ただ、バリーが過ちを正し、アローのような陰のヒーローではない陽のヒーローらしさを取り戻す物語としては、サビターにはもっと良い退場の仕方をさせてほしかったと思わずにいられない。

『レジェンド・オブ・トゥモロー〈シーズン2〉』感想

お気に入り度:★★★★★ 5 / 5 

現実を改変する力をもった〈運命の槍〉を巡り、歴史を守る使命を帯びたはみ出し者集団 レジェンズと、世界を自分たちの都合の良いものに変えようとする悪の連合 リージョン・オブ・ドゥームが、時を越えて激突する。

シーズン1は破天荒な展開ではあってもどこか重い雰囲気が漂っていたが、シーズン2は完全にコメディ路線に吹っ切り、面白さが倍増した。一般人から急にレジェンドとなる新登場の歴史家 ネイト・ヘイウッドが実に良いキャラをしている。彼の存在もあって、時代の掘り下げが深くなったのも良い。

目玉は『アロー』と『フラッシュ』のラスボスたちが手を組んだ悪の連合 リージョン・オブ・ドゥーム。マルコム・マーリンとダミアン・ダークとイオバード・ソーンが手を組んでるだけで楽しいのに、期待の上と斜めを網羅する活躍を見せてくれるんだから楽しすぎる。

マルコムもダミアンもイオバードも、元の作品では常人にはありえない思考の存在だった。しかし、今作の彼らは「自分が不幸になる運命を変えたい」という普通の人間的な感情で活動する。しかも、時々番組導入のナレーションを担当しているんだから、巨悪なのに親しみも愛着も湧いてしまう。

ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカの登場にも興奮した。何人かは活躍する暇もなく(結構酷い扱いで)退場していたが、それでもレジェンズにない一流感が印象深く、格好良い。初登場時のBGMなんてもう最高。

だが、一番はやっぱりレジェンズだ。一難去る前に次の一難を呼んだり、ちゃっかり変な歴史を残したりドタバタしつつも、一人ひとりが主役として、最後は育んだ絆の強さや人間的成長をしっかり見せてくれる。番組導入の「ヒーローではなくレジェンド」というナレーション通りの活躍だった。

ドゥームワールドでレナードが何が楽しいのかさっぱり分からない強盗に興じていたのは、ミックと交流しようにも犯罪以外にその術が分からなかったからなのかなあ。レナードの望みは妹が平穏に過ごせる家庭環境で、あの世界ではそれが叶っていることだろうから、犯罪をやるにしても危険性のないものをやるようになるのは頷ける。

『レジェンド・オブ・トゥモロー〈シーズン2〉』は、スピンオフ作品らしく他の作品と繋がっている要素が多い一方で、新登場のネイトがレジェンズに加わるところから物語が始まるので、シーズン1や他の作品を観ていなくても視聴を始めやすい内容なんじゃないかと思う。笑って、泣けて、熱くなれて、誰かにオススメしたくなる作品だ。

『SUPERGIRL / スーパーガール〈シーズン2〉』感想

お気に入り度:★★★・・ 3 / 5 

宇宙移民排斥を掲げるテロ組織が現れた地球で、対立関係にある二つの種族の男女が運命の出会いを果たす。

『スーパーガール』はシーズン2から放送局がCBSからThe CWへ移動となった。結果、DEOの本拠地が変わり、キャットが退場し、マックスとルーシーが存在ごと消えるなどの変化が起き、シーズン1とは雰囲気が結構変わってしまっている。恋愛ティーンドラマみが濃くなったようにも感じる。

シーズン1はヒーロー活劇だけでなく、カーラがキャットコーで働く話も面白かったのだが、シーズン2ではそういったお仕事パートは激減している。これはキャット退場の影響以上に、カーラの職を記者に変えたのが良くなかった気がする。超技術で犯罪捜査する政府の秘密エージェントが、自分の足で事件を探る記者の物語と親和性が高いとは思えない。

キャットの後釜的なカーラの新上司も良くない。キャット以上に気難しく、褒めるよりも嫌味を言うことのが多いので、単純に心証が悪い。実際不評だったのか最終話にはいなかった。というか、記者になったカーラには厳しい上司よりも、ライバル記者の方が必要だったんじゃなかろうか。

シーズン1でカーラと結ばれたジミーは、シーズン2早々にカーラと恋人解消し、その後まさかのヒーロー活動を開始。常人ながらガジェットを駆使して超人とも渡り合う姿が格好良い。けれど、ヒーローになった動機があっさりしていて、ヒーロー活動が本筋と無関係なので、作り手が彼の今後の役目を思いつかなくて、とりあえずヒーローにしたような印象は否めない。

そんな不満多き『スーパーガール〈シーズン2〉』ではあるが、人種差別や同性愛などを扱い、「自分らしく生きる事」を描いたシーズン1に続いて、「他者と生きる事」を描いていたと思う。クリプトンのカーラとダクサムのモンエルの種族の垣根を越えた恋愛劇は、イチャコラがうざったく感じることもあったが、シーズン2の主題の体現だった。

悪名高きルーサー家の人間ながら誠実で、自身の複雑な家族関係への苦悩も見せる新登場のレナ・ルーサーも、確実に作品の面白さを一段上げていた。レナ・ルーサーを導入するきっかけとなったという点では、脚本がカーラを記者にしたのは失敗じゃない。

放送局の移動によって製作費が減ったらしいが、アクションシーンは前シーズンよりもむしろ良くなっていた。アローバースには出ないと思われたスーパーマンが本格的な登場を果たし、スーパーガールと空を飛び戦う光景は圧巻。このスーパーマンは明るく頼もしく、それでいて少しポンコツという自分が思い描いた通りのスーパーマンで、更に盛り上がった。

それにしても、レナのママ対モンエルのママという地球と宇宙の最凶毒親対決にキャットまで加わった光景は凄かった。本当、すごかった……。

クロスオーバー・イベント『インベージョン!』感想

お気に入り度:★★★★・ 4 / 5 

『フラッシュ〈シーズン3〉』第8話、『アロー〈シーズン5〉』第8話、『レジェンド・オブ・トゥモロー〈シーズン2〉』第7話の三部で構成されるクロスオーバー・イベント。

第一部のフラッシュ編では、ドミネーターと呼ばれる凶暴な宇宙人が地球に襲来。フラッシュとアローは、双方のチームとレジェンズ、そしてスーパーガールを招集するも、その大半がドミネーターの罠にハマって洗脳されてしまう。フラッシュ&アロー vs 洗脳ヒーロー軍団! 『フラッシュ』らしく超能力対決が目玉のエピソードだ。

vs ヒーロー軍団、といっても殆どがフラッシュに瞬殺されるので、内容は実質フラッシュとスーパーガールのアローバース最強対決。目から光線を放ちながら、フラッシュの超高速に追いついてくるスーパーガールが衝撃的に怖すぎる。実に見応えのある戦いだった。瞬殺組は些か不憫だが。

それにしても、オリバー、フラッシュポイントの件で落ち込むバリーを励ますって、お前はブルース・ウェインか!

第二部のアロー編では、ドミネーターの創り出した幻想の世界に、オリバー、ディグル、サラ、テア、レイが囚われる。『アロー』通算第100話を記念したエピソード。花嫁姿のローレル、懐かしのキャラクターたち、歴代ラスボス軍団など、見どころに溢れている。

自分にとって幸福なはずの世界を手放して、悲劇が繰り返される、しかし助けを求める人々がいる現実に戻っていく彼らの姿に、真のヒーローを見た。

第三部のレジェンド・オブ・トゥモロー編では、レジェンズとシスコとフェリシティが時空間移動をして、ドミネーターが初めて地球に来た際のことを調べる。そして、遂にスーパーヒーロー軍団とドミネーターの最終決戦の幕が上がる。

普段は別番組だから意外に見れないシスコとフェリシティのコンビが可愛い。オリバーはあんなに個性的なスーパーヒーローが大勢いる中でも、存在感を良い意味のも悪い意味のも放っていて流石。エピローグの打ち上げパーティーは、何ともアローバースらしい光景だ。

『インベージョン!』は、ヒーロー軍団がエイリアンと戦うという話自体は映画『アベンジャーズ』の二番煎じっぽいが、エピソードごとに各作品の特色が反映されている点に個性があって面白かった。映像は映画には及ばないにしても、前年の『ヒーローズ・ジョイン・フォース』とは打って変わってVFXがふんだんに使われおり、TVドラマとは思えない迫力があった。

戦闘面がフラッシュとスーパーガールさえいれば十分な感じになっているのはイマイチだが、別の作品と異文化交流するというクロスオーバーの楽しさには満ちたイベントだったと思う。


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