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宇佐見りんの『推し、燃ゆ』を猛烈に推したい件

『文藝 2020秋季号』に掲載されていた文藝賞受賞作、宇佐見りん『推し、燃ゆ』を読んだ。

とてもよかったので、推しnoteを書いておく。

著者は99年生まれ。SNSネイティブ世代だからこそ、SNS時代に若い人が感じている「生きづらさ」が描けている。

若くして文藝賞を受賞した作家というと綿矢りさ『インストール』が思い起こされるが、当時綿矢が「天才」といわれたのに対し、宇佐見りんはもちろん仔細な表現力とか天才っぽいんだけど、普通の女の子のブログを物語に昇華した感じがして、まるで「これは私のことを書いている」と思わせることに成功している。

インスタのストーリーに「推し」の誕生日プレゼントのケーキをアップしてケーキはひとりで食べるけど、それは普通のことだとか、ツイッターの瘴気がいやになってログアウトするけどまた開いちゃうとか、ブログのいいね数を楽しみに生きているだとか、SNS依存の女子高生の感情が読んでいてすらすらと入ってくる。

小説は時代の鏡だ。文藝賞は主に私小説を扱っていると記憶しているが、「私」だけではなく「公」を描くことに成功していると思う。

主人公はなにかの病気(発達障害?)で、学校の保健の先生に「診断書を持ってきて」といわれたり、父親に「病院でいわれたじゃん。あたし、普通じゃないんだよ」とキレたりするが、こうした生きづらさの顕在化が表立って出てきているのが現代なのだろう。

こうした「ブログの物語化」に成功している作家は(これからどんどん出てくるかもしれないが)少なくとも私は初めて見たので、いまあなたが感じているモヤモヤを文学で味わいたいなら、ぜひ読むのをオススメする。


余談:

アイキャッチの言葉は本編から抜粋しました。


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