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「令和」は概念発達の好例

英単語の暗記などで、語源というものがあることを知った人も多いだろう。

たとえば、 mo- というラテン語系の語幹は、「動き」という概念を保存している。英語の move, movement, motive, motif は「動き」「動きがもつ力」を表すmo-  からつくられた語である。

英語の moment には、「瞬間」とか「重要性」という意義もある。

瞬間と重要性ではずいぶん違うように思えるが、mo- という元概念に、動き、動きがもつ力という概念がふくまれていることを考えると、

時間の動きそのもの=瞬間
ものごとを動かす力=重要性

となったと納得できる。

歴史ある言語の語彙は、このように他言語(mo- の場合はラテン語)をふくむ、古くからの要素=元概念を保存している場合が多い。

日本語でも、中国・朝鮮半島からとりいれた漢字を元概念にして二個ずつ組み合わせる方法で、幕末から明治にかけて、たくさんの訳語が作られた。

最近話題の「令和」も、それぞれの漢字の来歴や万葉集の記述を背景に保存しつつ、新しい概念が作られた例である。

受け取る内容が聞き手によって変動する「意味」とちがって、概念は個々の話し手・聞き手から独立した、客観的な観念内容である。

語源や漢字は、個々人の知識経験とは別次元で、社会的・歴史的に発展する元概念を保存している。


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