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餅の未来

 今年も正月にお雑煮を食べた。どちらかと言えば餅は好きな食べ物なのだが、お正月以外になかなか食べる機会がない。本当なら磯辺焼きや安倍川などでも食べたいのだが、お正月以外に餅を食べる機会がないので、結果としてお雑煮になってしまう。

 好きなのだからいつ食べても良さそうなものだが、ついつい餅の存在を忘れてしまう。年末になるとスーパーなどに切り餅や鏡餅が並べられて、あぁそう言えば餅という食べ物があったと思い出し、正月にお雑煮として食べて、いつしかスーパーでは乾物などの売り場の片隅に移され、また年末になるまで気付かれることなく餅はひっそりと息を潜めているのだ。

 これはやはり餅業界の営業努力が足りないのではないか。もっと餅業界は本気で餅を売ろうと努力すべきなのではないか。実は餅の消費量は年々減少傾向にあり、総務省家計調査によれば、平成20(2008)年の一世帯あたりの餅の年間購入数量は2,711gだったのに対し、令和3(2021)年では2,125gになっている。これは餅業界にとって由々しき事態なのではあるまいか。

 年末になれば放っておいても餅が売れるという状況が、餅業界を思考停止にしているのではないか。同じく総務省家計調査によれば、餅の月別購入数量は12月がダントツぶっち切りであり、大袈裟ではなく餅は12月にしか売れない食べ物となっている。あんなに美味しい食べ物なのに、餅業界の怠慢によって12月にしか売れないのだ。

 餅は食事にもなれば甘味にもなる。ならば通年で出番がありそうなものだ。例えばバレンタインデーにはチョコレート餅で愛を告白するとか、夏の土用の丑の日には餅の上に鰻を乗せた鰻餅で暑気払いするとか、ハロウィンにはカボチャ餅、クリスマスには生クリームと苺を合わせたクリスマス餅とか、書いていて具合が悪くなってきた。

 餅は美味しいのだから、変に奇を衒う必要はない。正々堂々と餅を売れば良い。パンが売れているからと弱気になってはいけない。農林水産省の調査によれば、昭和58(1983)年に57.2%を記録していた米類が、平成15(2003)年には42.4%に下落している一方で、パンは21.2%から31.4%へと上昇している。食生活の欧米化は餅にとってはネガティヴファクター。日本人ならパンよりも餅を食べようと、政府がプロパガンダすれば良い。

 しかしながら、全世界を見ても稀有な超高齢化社会になりつつある日本で、餅を食べようと推進していくのは現実的ではないのかも知れない。毎年餅による窒息死は300人程度いて、その9割以上は65歳以上の高齢者なのだそうだ。年寄りにとっては餅を食べるのも命懸けだ。

 ならば若者が率先して餅を喰わねばならない。安倍川餅やからみ餅は食べないくせに、トッポギを喜んで食べている若者はいかがなものか。トッポギ喰うなら餅を喰え。日本の餅の未来は若者にかかっている。

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