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美味しい瞬間を誰と分かち合うか『どこかでだれかも食べている』

こんにちは、石川由弥子(ゆみこ)です。

オノ・ナツメさんが好きです。それはオノ・ナツメさんの描く食事が本当に美味しそうだから。『ACCA』の時に出てきた食パンの美味しそうなこと、『リストランテ・パラディーゾ』『GENTE』の料理の数々。なんでこんなに美味しそうなの!?

今日は、そんなオノ・ナツメさん初の食べ物にまつわる漫画『どこかでだれかも食べている』をご紹介いたします。

『どこかでだれかも食べている』のあらすじ

ひとりで食べても、だれかと食べても――。「食べる」ことから、やさしいドラマが生まれる。実家のロールキャベツの味、初めてはんぺん入りおでんを作った日、願いと共に齧り付いた恵方巻、結婚を決めたチャーハンの店、小さいころから数えきれないほど食べたカレー……。どこかでだれかも食べている、あの食べ物から生まれたやさしいものがたり。ほわっと胸があたたかくなるオノ・ナツメ初のフード・コミックです。

『どこかでだれかも食べている』のおすすめポイント

人と食の話

食の思い出って人それぞれあると思います。試合で負けて泣きながら食べたおにぎりとか、初デートで緊張して味のしなかったハンバーガーとか、幼い頃取り合ったおやつとか。特別ではない、日々の「食べる」を描いたのが本作です。

「食べる」にまつわる短編がたくさん入っている作品なのですが、私がお気に入りの作品は、5話目に収録されている「つつむもの」。

それぞれ結婚した姉妹が「ロールキャベツの味付け」について話すシーンから始まります。旦那好みに味付けをしたロールキャベツを見ながら、姉妹で実家の味について思いを馳せます。母がケチャップを使うのが好きだったことや料理が好きじゃないと言いながらも手間のかかる料理を作ってくれた思い出などを話しています。

「自分も母になっていて分かるようになったけどそういうところ尊敬するね」

その後、姉妹の元に母から「おいなりさん作ったけどいる?」なんて電話がかかってくるのですが、娘たちが巣立った後も母が手の込んだ料理は健在、と言うところで話が終わります。

読みながら、私も母の料理の味を思い出しました。母の料理の味は、母の母から受け継いだもののあれば、母が独自に生み出したものもあるでしょう。私や私の妹も、母から受け継いだ味やこれから人生を共に歩む家族と作り上げていく味と、両方があるんだろうなと思いました。

人の数だけ食があり、食の分だけ思い出がある。とても優しい短編がたっくさん入っています。

結局、誰と食べるかが一番大事

食事と共にあるものは、一緒に食べる相手だったり、相手との会話だったり、一緒に過ごす時間だったり、作ってくれた人の想いだったり、色々。食事は全てを内包するものだなと感じます。

どんなものを食べたのか、よりも、誰とその食事を分かち合ったのか。食事ってただ単に空腹を満たすという行為だけじゃないんだなあと改めて思い出しました。人の数だけ食卓があって、思い出があって、想いがある。誰かと分かち合える食卓の豊かさを感じた作品でした。

それでは、また〜

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