見出し画像

エッセンシャル思考-最小の時間で効果を最大にする-

ビバリーヒルズ高校のピーターズ校長は今朝、職員一同に研修旅行の知らせを告げた。来週木曜、職員全員でサクラメントへ行き、新たな教育メソッドに関する会議に参加する。当日は人類学者のマーガレット・ミードや教育学者のロバート・M・ハッチンズ、カリフォルニア州知事のパット・ブラウンによる講演も予定されている。

グレッグ・マキューン(2014),エッセンシャル思考 最小の時間で成果を最大にする, かんき出版,高橋璃子 訳,p97

さて、この校長先生からの情報を、生徒の目線から要約すると、どのような内容になるだろう。
「先生たちが教育メソッドに関する会議に参加し、学者や州知事の講演を聴講する」といった内容になるだろうか。
ほとんどの人がそう考えるだろうし、私自身もそう考えた。

しかし、生徒の目線で一番重要で本質的な情報(要約)となるのは、「来週の木曜日は学校が休みだ」 ということである。
先生たちがどのような場所でどのような研修に参加してどのような人の話を聞くのか、そんなことは生徒たちにとってはどうでもいい些末なことである。

このエピソードは、本記事のテーマとなる『エッセンシャル思考』の“洞察”の章から引用した内容である。
前回の記事『インプット大全』でも触れたように、情報に溢れている現代社会で、本質的な情報を見出して自分のものにするということはとても重要なことである。

少しでも気を抜けば、汚職、不倫、不祥事といったネガティブで自分に関係のない情報ばかりが入ってくるだろう。
仕事やプライベートでも一緒で、気を抜けば自分がすべきではない(ほかの誰でもできるような)些末な仕事やタスクが舞い込んできていないだろうか。

『エッセンシャル思考』には、無駄で些末な物事を捨て、重要で本質的な物事に集中し、仕事もプライベートもよりよくしていくための具体的な方法が記載されている。

自分の時間がない、仕事の成果が上がらないといった、“無駄な仕事を押し付けられて苦しむすべて人のための必読書”と(本書帯より引用)なっている。

本書の概要

エッセンシャル思考とは、より多くの仕事をこなすための考え方や技術ではなく、自己の意思決定、物事への向き合い方といったやり方を変えるための思考である。
“今(人生で)、重要なことは何か?”を常に考え、重要な事にのみ取り組むことの必要性が説かれ、さらに重要なことに取り組むための具体的な考え方や行動が紹介されている。
本書は主に以下の4章から構成されている。
① エッセンシャル思考とは何か
② 重要な事を見極める技術は何か
③ 瑣末な事をいかに捨てるか
④ 重要な事にだけ取り組むための仕組み化はどのようにするのか
そして、重要なことは少なくシンプルに生きるべきということに気づかせてくれる。

エッセンシャル思考とは何か

4章から構成されている本書であるが、ここでは「エッセンシャル思考とは何か」についてピックアップすることとしたい。

要約に記載した通り、エッセンシャル思考とは、より多くの仕事をこなすための考え方や技術ではなく、自己の意思決定、物事への向き合い方といったやり方を変えるための思考である。

仕事術のようなスキル・テクニックのようなものでなく、自分自身の行動・判断の指針となるものである。

下図は、エッセンシャル思考と非エッセンシャル思考の考え方・行動・結果についてまとめたものである。

エッセンシャル思考


非エッセンシャル思考では、すべての仕事が重要だと考え、すべての仕事を無理に完遂しようとし、中途半端な結果になるかおざなりになり、疲弊する。

エッセンシャル思考では、自らこれをやろうと重要なことを選択し、重要なことにのみ注力できるよう他の些末なことは断ることで、結果として質の高い仕事ができ充実感に溢れた日々を過ごすことができる。

人間の時間や集中力は限られており、一方の物事を進めればもう一方の物事は進まない。
限られたリソースの中で何を選択し、何を捨てるかを選ばなければならず、何もかもを手にしようとすると、何も手に入らない可能性が高いだろう。
このトレードオフを理解することが重要であり、トレードオフを無視することの代償が大きいという事例も本書では紹介されている。

実際の生活では

とはいえ会社で働いていると、どうしても断れない仕事を任されることもあるだろうし、家庭でも家族からあれこれと頼みごとをされる場面もあるだろう。

私自身も決してクリエイティブな仕事をしているわけではなく、ルーティンワークや気の乗らない仕事を頼まれることも多い。

この仕事は必要ですか?本質的ですか?些末なことではないですか?などと上司に進言した日には、きっと社内で干されるか注意を受けるだろう(注意で済めばマシか)。

選択の余地がないのなら『エッセンシャル思考』を読んでも意味がないのでは、と思うかもしれないが、エッセンシャル思考という考え方/それを身に付けるためにはどのような方法があるのか、ということを知り、少しずつ実践していくことが重要である。

少しずつでも本質を見極めるための思考や目を養い(判断基準の確立)、目標を定め些末なことを捨てる技術を身につけ(角の立たない断り方を身に付ける・立ち位置の確立)、それらを仕組化(自動化または周りからの評価を得る)ことができるようになっていけば、最高のパフォーマンスが発揮できるようになっていくと思われる。
最高のパフォーマンスができれば、無駄に追われて失っていく時間を少しでも取り戻すことができ、自分自身にとって重要な物事に取り組む時間を得られるようになっていくはずである。

「千里の道も一歩から」というように、一朝一夕ではエッセンシャル思考は身につかないし、そのような生き方もできないが、エッセンシャル思考を意識して日々小さくでも進歩していくことが重要であると考える。

家族、仕事、趣味、友人……自分自身にとって重要なことは何かを問い、重要なことに集中して生きていきたい。

非エッセンシャル思考の罠から脱け出し、エッセンシャル思考のコアとなる考え方を身につけたとき、エッセンシャル思考のやり方は第二の本能のようにしっくりと体になじむことになるだろう。

グレッグ・マキューン(2014),エッセンシャル思考 最小の時間で成果を最大にする, かんき出版,高橋璃子 訳,p15

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?