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【書評】ルーズな文化とタイトな文化

今日は書評でも書いてみようと思います。

「ルーズな文化とタイトな文化―なぜ〈彼ら〉と〈私たち〉はこれほど違うのか」ミシェル・ゲルファンド (著), 田沢恭子 (翻訳)

amazonの書籍情報を転載します

たった一つの尺度で社会は読み解ける!

静まりかえった東京の通勤電車と、騒々しいNYの電車――その違いの根底には〈タイト/ルーズ〉という文化の違いが潜んでいる。歴史や地理条件に応じて、世界にはルールに厳しい〈タイトな文化〉とそうでない〈ルーズな文化〉が存在し、それが国々の差異を生み出しているのだ。

〈タイト/ルーズ〉のロジックを使えば、社会階級の格差、企業合併の失敗、組織内の対立、さらには国際紛争やテロなど、現代の多様な問題も読み解ける。長年にわたる国際調査に基づき、さまざまな社会集団の分断と差異を解読する画期的な研究。

と、書いてあるとおり、ルーズな文化とタイトな文化の比較がこの本の焦点。

各地域のルールへの厳しさへの態度を、元にアンケート調査の分析を元に、ルールへのタイトさを数値化し、ルールに厳しいタイトな文化の国や地域、それほどでもないルーズな文化の国や地域、(と、中間の国)に分類。


ルールに厳しいタイトな文化の特徴としては、長所としては社会秩序があり誠実で自制心の高い人が多い、しかし、短所としては狭量で因習的で文化の停滞が起きやすい。

一方、ルーズな文化の特徴としては、長所としては寛容で創造性があり適応性や多様性に富んでいる、一方短所としては社会の無秩序や協調の欠如、衝動的な行動がおきやすい傾向があるとしています。

ところで、ルーズとタイトどちらが良いかというと、少なくとも経済発展の間には余り相関がない、ルーズなアメリカも、タイトなシンガポールやドイツもどちらも経済的には成功しているとして、タイトな文化、ルーズな文化、どちらかに肩入れするわけではなく、比較考察を繰り返していきます。

何がタイトとルーズを分けるのかと言えば、タイトな文化の傾向が強いのは、地政学、災害、資源欠乏などで安全性が低く統率や団結が必要だった地域、ルーズな文化は豊かで安全性があり、人の行き来が活溌で多様性がある立地という、地理的要因を見出しています。

そして、ルーズなアテネとタイトなスパルタとの争いや、近年の分断においては、財産があり生活安全性の高いルーズな文化の富裕層と、生活安全性が低いタイトな文化の労働者階級、アメリカ国内においては、ハリケーンなどで自然条件が厳しい南部州ほどタイト文化で、ルールと指導力を求める素地があったことがトランプ支持に繋がっている。

あるいは、タイトな文化のダイムラーと、ルーズな文化のクライスラーの合併など、様々な事例をタイトとルーズのフレームワークで読み解いていきます。

そして、タイトとルーズのカルチャーギャップに人はなかなか着いていけないことも示します。たとえば、エジプトでは独裁政権のタイトな文化が、革命により急激に自由度の高いルーズな文化に移行したカルチャーギャップによる混乱を読み解いています。

そして、タイトでもなくルーズでもない、中間点を探る、企業経営で言えば、タイトな文化とルーズな文化の『両利きの経営』こそが、これからの社会に必要だと論を進めていきます。

そのためには、それぞれが双方を理解すること。理解のためには、まずは自分がタイトな文化を指向しがちなのか、ルーズな文化を指向しがちなのかを把握し、そして他の文化への寛容度を高めること。

企業組織で言えば、タイトな組織は柔軟なタイトさ、ルーズな組織は決まり事のあるルーズさを目指していく。

国家から、社会、企業組織、個人の付き合いまで、タイトとルーズと言う切れ味の良いフレームワークを提供していきます。

正直、少々切れ味が良すぎて、ちょっと強引な解説かなと思いつつ、世の中を読み解くフレームワークとして、タイトかルーズか、という視点とその背景メカニズムは知っておいて良いのかなと思いました。


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