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犬を育て、看取るということ。①

私が9歳のころ。彼は家にやってきた。
ラブラドールレトリーバー、カラーはイエロー。大型犬。雄。名前はなんとも単純明快、「ラブ」である。
先住の犬(雑種、中型犬)が寿命で亡くなり、数か月後に我が家に来たのがラブだ。私の父は根っからの犬好きで、子供のころからずっと犬を飼っていたのだという。

そんな父が選んだ犬種が、「ラブラドールレトリーバー」。
盲導犬をつとめていることが多い犬、といえばピンとくる方も多いだろう。気性がやさしく、賢く、子供の頃はやんちゃだけれど、2歳ごろになると落ち着くらしい。父は知人のブリーダーからそう説明を受け、私たちには父から説明があった。
確かに一般的なラブラドールといえば、おとなしくて、盲導犬もできるくらい賢くて、可愛くて、というイメージ。

ところがどっこい。
我が家に来たラブちゃん。生後2か月でうちに来たラブちゃん。
まず顔。顔がおじいちゃんである。
まぶたが下がり、くしゃっとした顔はまさにおじいちゃん。目がくりくり、ぴょこぴょこはねて可愛い…なんていう子犬らしさはほぼゼロ。手足が太くおなかもまんまる、ずんぐりむっくりなおじいちゃん。
正直、はじめて見たときは顔が可愛いとはみじんも思わなかった。
顔については、成長していくに従いとても可愛らしくなり、そして老犬期にはおじいちゃん顔に戻る。という現象が起こった。まあ、可愛かったからよしとしよう。今では我が家のラブちゃんは世界一可愛かったとか言うレベルで好きな顔である。

性格。
まず大食漢である。それはまあいい。よく食べ、よく育つのはいいことだ。
しかしながら、とにかく「食い意地が張りすぎている」のである。
まるで私たち飼い主が餌を与えていなかったかのような食いっぷりを毎回見せる。しかもおやつも際限なく食べる。おやつがなくなると「まだあるんじゃないかな?」と疑い私たちの手をとりあえず甘噛みしてみる。と。
ご飯時には目をきらきらとさせ、「もうない」とわかると明らかにしゅんとする。あまりの落ち込みっぷりに、なんだか悪いことをしている気分になったこともしばしばあった。

そして、明るく活発。だか活発すぎた。
「2歳になれば落ち着く」を信じてきた私たちだが、彼は2歳を過ぎても、3歳を過ぎても、ついには10歳を過ぎても「落ち着き」をまったく見せなかった。
食べる。はねる。遊ぶ。リード(散歩の紐)をひっぱって私を転ばせる。そして食べる。寝る。起きてまた食べる。みたいな。とにかく食べることが好きなので、大人になっても一日2回のご飯を食べていた(大人は普通、一日一回でOK。ラブちゃんの場合、適切な給餌量を単純に半分に割って2回食べていた)。そんな子だ。

9歳、小学生から一緒だったものだから、ラブちゃんと私はとてもよく遊んだ。私の出身地は田舎で、友達の家まで遠かったからということもあるだろう。
散歩に出かける。庭で遊ぶ。一緒に川で水遊びする。などなど。
川遊びのときは、父が必ず一緒にいた。父と母と姉と私とで、4人と1匹で水遊びをすることもあった。

私が中学、高校と進学するにつれ、遊ぶ時間は少し減った。けれども休日は必ず一緒に散歩に行った。
大学生のとき。県外に進学したため、長期休暇にしか家に帰れなかった。それでも実家に戻ってきたときには一緒に出掛けた。

ラブちゃんは私のペットであり、友達であり、弟だった。

そして私は大学を卒業し、地元での就職を決めた。
実家に戻り学生として最後の「春休み」を過ごしていたその日。

ラブちゃんに、小さな異変が起きた。


==================================お読みいただき、ありがとうございます。
この記事は「大型犬の介護」と「うちのラブちゃん」についての記録です。お分かりかと思いますが、ラブちゃんは17歳8か月、ちょうど1年半ほど前に息を引き取っております。

大型犬の介護は、女性でしかも小柄で、力にも自信がない私にとっては非常に大変なものでした。介護食や経過についても書いていきますので、現在犬を介護中の方、またまだ子犬や若いけれども犬を飼われている方。そして犬を飼われていない、飼ったことのない方にも。
ご興味があれば、ぜひ読んでいただきたいと思います。
よろしくお願いいたします。

やもや ありえ


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