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世界を変えるカマ(77.1)

のれんをくぐると顔なじみの店長がいた。
そこで、気まぐれにカマをかけてみたのだ。

「あ、結婚したんだってね。おめでとう」
すると驚くべき言葉が返ってきた。

「えっ誰から聞いたんすか?まだ誰にも話してないのに。ええっ?」
「なんだと…」
「来月入籍っす」

結婚が決まっていたのだ。

このときの奇妙な感覚は人生で初めて味わうものだった。もしかして、わたしがカマをかけた瞬間、無数に枝分かれする現実から「結婚の未来」が選択されたのではないだろうか。もしカマをかけていなかったとしたら彼の未来は独身のまま。

パラレルワールド、そのとびらを開く鍵は「カマ」だった。カマが世界を変えたのだ。ありがとう、カマ。

妙な高揚感のせいで飲みすぎた翌朝の体重は77.1kg。
体重計の上で目をつむり、自分にカマをかけてみた。

「そういえば、10kgのダイエットに成功したらしいね。おめでとう!」

目を開いて体重計をみると77.1kgのままだった。

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