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だから、ミルクで(76.8)

珈琲店での話だ。

一息ついて窓に目をやると、なんと「ひょう」が降っている。わたしは携帯電話を取り出し、これから出かけると言っていた後輩にLINEのメッセージを送った。

「おい、雹(ひょう)が降ってるぞ。気をつけろ」
すると後輩からは間髪入れずに返信がある。
「いや、あられですよ」

どっちでもいいだろう。親切なんだから。ありがとうございますで丸く収まるのに、なぜあげつらうんだ。ため息をひとつこぼし、コーヒーをすする。そして何も考えまいと目を閉じると、客と店員のやりとりが聞こえてきた。

「ランチセットのお飲み物はコーヒーか紅茶をお選びいただけます」
「うん。ミルクで」
「あの、お客様。コーヒーか、紅茶。どちらでしょうか」
「だから、ミルクで」
「……いや、あの」

客はミルクティーを頼みたい。
店員はミルクを頼んで欲しくない。

言葉を正しく扱うことは、かくも大切なことなのだ。会計票を手に席を立ち、「あられ」を「雹」と言ったことを反省しながらお金を払った。


今朝の体重は76.8kg。コーヒーはダイエットにいいらしい。

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