最後の桜
いつも通るスーパーの帰り道。
咲き始めの桜というのはみんな咲いた咲いたと喜ぶものだが、最後に残った桜を目にすることはあまりないと思う。
この桜はとても人生に近いものを感じた。
人間だって生まれた時や門出の時は喜ばれるものだ。
葉桜になれば
「あー…もう今年も終わりだね」って言われる。まだ花は残っているのに。
人もある一定の年齢からはシワや白髪が増えたりしてそれが劣化だと言われる。
例えばこの先この桜が切られたり病気をしたりすれば来年は花を見ることはおそらくできない。
(どうか来年も春になったら咲きますように…)
そう思いながら帰ってきた。
うちの実家には病気をしたツツジがある。 もう何年も花をつけていない。葉も色褪せていておそらく花を付けることはない。
それでも私の父は抜いてしまうことはない。
なぜ抜かないのか父に聞いたことがある。
「死んでいないからまた咲くかもしれない」
と、父は言った。
私はこういう言葉を聞くたびに父の娘でよかったと思う。
現に今の私は病気になって色褪せているのかもしれない。 色褪せてはいなくても決して花は咲かせていない。
でも蕾は沢山できたと思う。
その蕾だって枯らしてしまうかもしれない。
でも死なない限り咲くかもしれない。
だから私も待とうと思う。
去年も今年も咲けない草花があっても待とうと思う。
同じ花でも木の年齢は違う。
それでもその年咲く花はいつも綺麗だ。
最後に残った桜はとても綺麗だった。
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