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22/23 第4節 ジローナvsラスパルマス 『効率vsロマン、矛vs矛』


今シーズンのジローナ全試合(4節以降)をレビューするYoccchiです。サッカー好きな方、ラリーガをよく見る方に等々に読んでいただけたら嬉しいです。

▽スタメン

▷ ジローナ 4-1-4-1


GK ガッサニーガ
DF アルナウ・マルティネス / ロペス  / ブリント / グティエレス
MF サヴィオ / マルティン / アレイシ・ガルシア / エレーラ / ツィガンコフ
FW ストゥアニ

2節以降はアレイシ・ガルシアをアンカーに置く4-1-4-1のセットを継続、スタメンの変更もない。


▷ ラス パルマス 4-3-3

こちらは前節から一名のスタメン変更
※メンバー紹介は省略

スタメン(左:ジローナ 右:ラスパルマス)

▽対戦相手紹介

ラスパルマス
昨季2部リーグで2位となり昇格を決めた。6シーズンぶりとなるプリメーラ(1部リーグ)挑戦。ラスパルマスはとことんポゼッションにこだわる曲者集団、ある意味ロマン派集団である。チーム全体として足元の技術が高い印象。どんな相手でも自分たちのフットボールを貫く姿勢にはカッコよさを感じる。

▽ 注目選手

・ジローナ

アレイシ・ガルシア#14
ロメウがバルセロナに移籍したことで、今シーズンからアンカーを務める。昨季はインサイドハーフを主戦場とし、チャンスメイク数ではリーグ6位の65回を記録した。視野の広さと正確なロングキックが武器。

・ラスパルマス
ファヴィオ・ヴィエイラ #21
注目はやはりこの人。サッカーIQが抜群に高いベテラン33歳。ボールキープ能力に優れる。司令塔としてチームを牽引。

▽ ジローナのトリセツ

今季のジローナについて簡単に解説したい。
まず4-1-4-1がベースの形である。プレシーズンで4-2-3-1なども試していたが昨季と同様の形に落ち着いたようだ。
ジローナはリーグ屈指の攻撃的なサッカーが特徴であり、自分はこのミチェル監督のサッカースタイルに惹かれた。ポゼッションサッカーを基調としながらも時折高精度のロングボールを織り交ぜて相手ゴールへと攻め込む。得点を取るために逆算、効率化されたサッカーを目指す。

・GK / DF / 中盤

GKは昨季と同様ガッサニーガが務める。安定感のあるセービングが特徴だ。昨季CBの主力であったブエノがウルブスに移籍してしまったことでCBの質に若干の不安を私は感じていたのだが、デイリー・ブリントがそんな不安を消し去ってくれた。今夏バイエルン・ミュンヘンからフリーで加入したオランダ人CBは、レフティーかつ攻撃の起点となれるCBだ。攻撃的なサッカーを志向するミチェル監督にとっては喉から手が出るほど欲しかった人材に違いない。CB相方のロペスはアンカーも卒なくこなせるほどにパス能力が高く昨季のパス成功率は9割を超えている。ジローナCBの懸念点はスピード不足だろう。ブリントとロペスが33歳、フアンぺが32歳と多くがベテランの域に達しておりフィジカル面でハンディを背負うのではないか。ただ4節終了時点で2失点とここまでは持ちこたえている印象だ。その他、バルセロナからエリック・ガルシアをローンで獲得するなど足元の技術に長けるCBを確保している。
今季から新たな取り組みとしてはLSBのグティエレスが内側に絞ってビルドアップに参加するようになったことだ。最近目にすることの多いビルドアップ時の形だ。ジローナが属している「シティグループ」のトップ、マンチェスター・シティもこれに近い形でポゼッションを行う。しかし、これによってある一つの問題が前半に見受けられたのだが、それについては後程述べようと思う。インサイドハーフにはエレーラとマルティンが入る。両者ともに状況判断能力に優れており、お互いの状況を確認しながらライン間に陣取ったり、後方に降りてボールを引き出している。

ベースは4-1-4-1。
今季からグティエレスは内側に絞ってビルドアップに参加する。

・WG / FW

ジローナにとってWGはチームの生命線といってもいいだろう。攻撃のベースは両ワイドのチャンスメイクである。昨季はアトレティコからローンで加入していたロドリゴ・リケルメ、冬に加入したツィガンコフらが鋭いドリブルから幾度となくチャンスを創り出していた。今季は右にツィガンコフ、左にサヴィオorクートが軸となる。左右でサイドの縦関係に違いがあるのが興味深い点だ。右サイドでは、ツィガンコフが自由にポジションを取り、それに合わせてRSBアルナウが内外を使い分ける。一方、左サイドではサヴィオが大外で張りグティエレスが絞るというのが半ば確立されている。今季のFWでスタメンを張るのは36歳の大ベテラン、クリスティアン・ストゥアニだ。昨季はカステジャノス(現ラツイオ)が9番の一番手でありストゥアニはスーパーサブ的役割を担っていた。今季のストゥアニは4節終了時点ですでに2得点を記録しており、このストライカーがどれだけ得点を伸ばせるかがチーム上昇の鍵を握っていそうだ。またFWの控えとしてウクライナ人のドヴィクを獲得している。不器用さを感じるものの大きなポテンシャルを秘めた選手であることは間違いなく今後の爆発に期待したい。開幕戦のソシエダ戦ではツィガンコフ→ドヴィクのウクライナホットラインで得点を挙げている。

▽ 試合

▷ 前半

ゲームの入りは慌ただしい展開となった。
前半3分、ジローナDFのギャップをついたスルーパスに反応したペジーノ(LAS#24)がGKとの1対1を迎えるもガッサニーガ(GIR#13)がセーブ。
10分、後方からのロングキックでジローナのカウンター発動。ツィガンコフ(GIR#8)が抜け出しシュートするもGKに阻まれる。
ゲームが落ち着き始めると両チームの狙いがはっきりと見えてきた。ジローナは両CBとガルシア(GIR#14)が、相手SB裏のスペースへのロブパスを徹底的に狙っている。とりわけ左サイドでその狙いがはっきり見え、裏抜けしたサヴィオ(GIR#16)がドリブルでチャンスを作れていた。前半終了間際にカメラがミチェル監督をとらえた際、SB裏を狙うようなジェスチャーを出していたことからもわかるように、狙いはSB裏のスペースを取ることなのだろう。

徹底して相手SB裏のスペースを狙うジローナ。

前半、左サイドではサヴィオのドリブルシーンが目立ったわけだが右サイドはどうであったのか。ジローナの右サイドは徹底して相手のニアゾーンを取りに行く攻撃を展開した。大外のツィガンコフが時間を作りニアゾーンにスルーパス。アルナウ(GIR#4)が折り返しのクロス。こういった具合だ。30分には前半最大のチャンスを迎える。ツィガンコフがエリアの浅いところで切り返すと左足でストゥアニ(GIR#7)にアーリークロス。これをストゥアニが押し込みネットを揺らす!しかしこれはオフサイドの判定。うまく相手CBの背中を取ったのだが、飛び出すタイミングが早かった。

ニアゾーンを狙う右サイドの攻撃。
前半30分のチャンスシーン、ここは惜しくもオフサイドの判定に。

43分にはコーナーキックからストゥアニがゴールを決めるのだが、今度はファールの判定でゴールは取り消しに。エリア内の接触でファールがとられたのだが、正直これはかなり厳しい判定だと私は感じた。ジローナ側はこの判定に納得できるはずもなく前半終了の笛が吹かれると数名が主審に抗議をしていた。

▷ 前半:ビルドアップ時の問題点

さてここで(トリセツより)前述したビルドアップ時の問題点を指摘したい。
前半のジローナは後方でのパスミスや、相手のプレスで詰まってボールを失ったりすることが幾度かあった。特に左サイドでその現象が見られた。グティエレス(GIR#3)が絞って内側でパスコースを作り、サヴィオが大外のコースを作るというのがここ数試合の型であるのだが、これが機能不全に陥っていた。ブリント(GIR#17)がプレスを受け外側へのパスコースしか選択肢がなくなった際のサヴィオの立ち位置が高すぎるのだ。ジローナの狙いはSB裏であるのでそこにフィードを送ればいいのだが、初期ポジションが高いため完全に裏ケアをされてしまっている。表のパスを出そうにも位置が高いためインターセプトされる危険性が高い。ここで一つの疑問が生まれた。果たしてグティエレスは絞る必要性があったのかということだ。シンプルに外回りの迂回経路を築いた方がベターだったのではないかと思う。グティエレスが中央のスペースを開ければマルティン(GIR#23)やエレーラ(GIR#21)がそのエリアを使うこともできる。もし内側へ絞ることがチームの型として決まっているならば、サヴィオはより一層気を利かせてポジショニングを修正する必要があっただろうし、サヴィオの代わりにインサイドハーフが裏へ飛び出す回数が増えてもよかったと思う。前半終盤にブリントがサイドライン際でボールを失いかけた際にサヴィオに対して何らかの声掛けをしていた。内容は定かではないが、ジェスチャーから推測するにおそらくポジショニングについての指摘だったのではないかと思う。

左サイドでは立ち位置の悪さから、ビルドアップが詰まる現象が多発。

▷ 後半

後半はラスパルマスが攻勢を強めた。ようやく頂点のカバ(LAS#16)にボールが収まり始めパスのテンポも上がっていく。55分、左からのクロスをカバが丁寧なポストワークで落としペジーノがシュート。57分、カルドナ(LAS#3)の深い位置からのクロスにRSBのアラウホ(LAS#28)がヘディングで飛び込むも、ガッサニーガのパラドン(スーパーセーブ)。ラスパルマスは攻めたてるもジローナゴールをこじ開けられない。
ジローナは嫌な流れを変えるべく61分に3枚替えを行う。RSBはアルナウに変え本職WGのヤン・クート(GIR#20)、エレーラに変えパブロ・トーレ(GIR#18)、ストゥアニに変えドヴィク(GIR#9)を投入した。SB起用となったクートは攻撃性能を存分に発揮し果敢に前線に飛び出していく。さらに攻勢を強めたいジローナは疲弊した両翼を交代。ヴァレリー・フェルナンデス(GIR#11)とポルトゥ(GIR#24)をピッチに送り込む。ポルトゥは18/19シーズン以来のジローナ帰還となった。79分、ガルシアからのロングフィードを受け取ったグティエレスがエリア深い位置からマイナスに折り返しマルティンがシュートするも決めきれない。すると88分、ついにジローナが均衡を破る。ヴァレリーが縦突破からファーにクロスを送り込む。SBのクートが飛び込みながら中へボールを折り返す。ボールはポルトゥの目の前に!ポルトゥが冷静に頭で押し込み、ついにジローナが先制点を奪う。交代選手3人で決めきった待望の先制ゴールだ。クートが折り返した時点で勝負ありという感じだった。クロスを先に触れなかったラスパルマスDFのプレーは若干軽率にも見えた。アディショナルタイム6分間はラスパルマスが一点を目指して攻めるもこれといったチャンスは創り出せず。逆に、最前線に一人残ったドヴィクがクリアボールを収めて独力でゴール前まで持ち込むなんて場面も。
90+6分、試合終了。88分の劇的弾でジローナが1-0で勝利。

https://twitter.com/GironaFC/status/1698334010181657083?s=20

▽ 総括

▷ ジローナ

曲者相手にかなり苦戦した試合だった。立ち位置の悪さや、左サイドの(左利き3人を配置しているためか)展開力不足によって、攻撃が行き詰まる場面も見受けられた。とはいえ4節を終え勝ち点10、リーグ2位は上出来。ミチェル監督がどんな修正を施して次戦を戦うのか楽しみ。

▷ ラスパルマス

毎試合いいサッカーを披露してはいるものの勝ちきれない。後半途中からようやくカバの球離れがよくなり効果的な攻めができていた。次戦以降も後半のような攻撃を継続できるかが鍵となる。

▷ MVP

ガッサニーガ
主君のゴールを挙げたポルトゥを選ぼうか迷ったが、個人的にはGKのガッサニーガがこの試合のMVPだ。3分と57分のパラドンがなければジローナは負けていたかもしれない。またこの試合で5セーブを記録、文句なしだろう。

▷LaLiga第5節の予定

ジローナ 2位
vs グラナダ 16位 (A) [9/19 4:00]

ラスパルマス 18位
vs セビージャ 20位 (A) [9/18 1:30]

▷ 一言

4節からレビューを書き始めるという、あまりにも中途半端すぎる…。
一人でも多くの人にジローナ、ミチェルフットボールの魅力を伝えるために残りの全試合をレビューします宣言。




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