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言葉・名づけることの意味

「雑草という草はない」

コロナをきっかけに、ここ数年NHK朝ドラにはまっています。
現在は、高知出身の植物学者、牧野富太郎博士をモデルとした「らんまん」。毎日楽しみにしています。
「植物は自分の恋人」という牧野さん、植物が大好きな様子が伝わってきます。その中で以下のような名言がありました。

雑草という草はないすべての植物を自分が名づける」

植物に対する思いとともに、そのとき人生に迷い、雑草のような生き方の人に向けた優しい言葉でもありました。

通勤のとき、ランニングのとき、山を登っているとき、多くの植物にあいます。きっと名前がついている植物たち。

名づけることの意味

そして思い出すのが、現代哲学スイスの言語学者フェルディナン・ド・ソシュール。その後の構造主義に絶大な影響を与えた「近代言語学の祖」。
ソシュールが指摘したのは以下のようなことでした。

世界に存在する実体要素に対して、人が名前をつけているのではない。世界のそれぞれの言葉を話す人々は、自分の眼前に広がる世界を自分なりに整理して、すなわち世界に区切りをつけて記号をつけ、さまざまな実体要素を認識しているのである。つまり、連続体である自然を分断することが文化の本質であるとソシュールは考えました。

出所:哲学と宗教(出口治明)

牧野さんは、ひとつひとつの植物を区切り、それぞれに名前を付けました。有名な話ですが、日本人は蝶と蛾を区別するために名前を分けていますが、フランス語では両方とも「パピヨン」。英語のツナは、日本語ではカツオとマグロ。ドイツで5色といわれる虹は、日本では7色。

文化によって自然からの分断の仕方、言葉の区切り方が異なります。
言語学について多くは知りませんが、きっと四季のある繊細な日本は多くの言葉があるのではと思います。

言語化の本質的な意味

このような哲学はいろいろなことを考えさせてくれます。
仕事で「言語化は大切」とよく言いますが、自分の考え・感情を整理するため、言葉にし、できるだけその意味を正確に持たせること。それをすることで、より適切なコミュニケーションができると思います。

ある人には全部同じようにみえる山々も、山好きの人なら「北穂高」「奥穂高」「前穂高」など見分けられ、ひとつひとつの山に名前・意味があります。星が好きな人ならひとつひとつの星、星座に名前がある。世界にも196個の名前を持つ国があります。(2023年1月現在)

そして、わたしたち自身にもひとりひとりの名前がある。
「名前」は両親や家族・親戚が、子供を特別なものとするため、意味を持たせるために名づけてくれた大切なものだと思います。

ひとつひとつの言葉・名前を覚えること

そう考えると、日々出会う植物・花や名前を覚えること。名前や語彙を多く持つことで人生が豊かなものになるのではと思います。

そして日々出会う人の名前を覚えること。名前をしっかりと覚えることは、数多くの人からその人を特別な存在にすることだと思います。

先日亡くなった義母は多くの人に愛されてこの世を旅立ちました。
音楽や芸術、文学や短歌、言葉を愛するひとでした。
きっと言葉の本質的な意味を知り、言葉やひとりひとりを大切にしていたのではと思います。

この日を忘れずに、生きたいと思います。


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