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階の一 「レインラグの劇場入り口にて」

大理石で設えられた劇場の入口で
二人の男が君を待つ
一人は剣を携え
一人は天秤を掲げている
よく似た双子の二柱
剣の男は右眼が碧玉で左眼が蛍石
天秤の男は右眼が蛍石で左眼が碧玉だ
シャンデリアの蝋燭が揺らめくたびに
男たちの瞳が煌めきを返す
階段を登り切る君を
観客として相応しいか見定める眼差し

君よ 測られることを恐れるな
彼らの足は石に縫い付けられたもの
君の足は段を乗り越えて 君を世界へ運ぶもの
君よ 刺されることに狼狽えるな
彼らの口は開かれることを許されぬもの
君の口は歓びを吸い 感嘆を謳い上げるもの
荘厳の白さなど 君の影で覆い隠せばいい
灯火のひかりは 君の表情を照らし出せないから
進んで潜れ 脇目も振らず
それが幕開きのきっかけなのだ

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