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階の十二 「黒い服のバロネス」

黒い黒い服のバロネス
黒い黒い服のバロネス

いつも窓辺に独り立ち
帰らぬ児らの看取り待ち

幸薄かれと願を掛け
価値弱まれと難を避け

明けぬ夜道の父を呼ぶ
巻けぬ鎖は宙を跳ぶ

黒い黒い服のバロネス
黒い黒い服のバロネス

こぶより役に立たぬ空
飛ぶより飽くの待たぬ法螺ほら

貰い物より残した鉄漿かね
暗い眼指落としたうね

胸の空くよな しゃっくりひとつ
爪を剥くよな 徳利荷物とっくりにもつ  

黒い黒い服のバロネス
黒い黒い服のバロネス

お疲れの演をあの児らと見て
お流れの宴をあの人と着て

射手座の空よりもなお高く高く
どてらの裏よりもなお紅く紅く

斯くして女は涙の裏に
隠してかんなが阿弥陀の蔵に

黒い黒い服のバロネス
黒い黒い服のバロネス

いつも窓辺に独り立ち
帰らぬ児らの看取り待ち

黒い黒い黒い黒い服のバロネス
黒い黒い黒い黒い服のバロネス

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