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階の三 「太陽の下の牢獄」

螺旋の行く先は太陽の照らす箱庭の中の牢獄

中心となる噴水池をぐるりと囲うように
均等に並べられた柵つきの牢屋が
雛壇のように六段に重ねられている

牢に囚われているのは青々とした植物たち
葉を伸ばし 蔦を伸ばし 根を伸ばし
空にわが身を懸けようと藻掻いている

衣を脱ぎ捨てた看守たちが目線を切ると
たちまちのうちに根は枯れ 
蔦は千切れ 葉は焼け焦げる

他の株が見切られている間に
我先にと尖塔に絡みつく
花弁に仏性が宿っていたなら
蜜を求めて数多の媒介者たちが集っただろう

種子に神性が秘められていたなら
大海を越えて運ばれもしただろう

だが囚われの植物たちに冥応はない
噴水がもたらす僅かな湿気のみが生きる糧なのだから
そこに生い茂る可しと定められたときから
終まで実りは無し

成長とは言えぬ繁茂
習熟とは言えぬ紅葉
錠はないのに扉は開かず
扉から踏み出す足もない

恨み言は太陽に灼かれて
黒幕の太白を識らない葉緑体たちのために
七段目となる花冠を捧げよう

葡萄の房を一つもいで一粒を噛み潰そう
植生の幾何学がいずれ崩れ去るさまを楽しんで想起しよう
その宣言が下されるのを 今は待つだけなのだから

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