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金網のフェンスの向こうに所有された自然

金網のフェンスの向こうで音がなる

樹々の枝を折る音 葉を揺する音 鳥の羽撃き

投げ棄てられた空き缶に目が行くのは

場違いだからか 

見捨てられたものだからか

誰かの罪のあとだからか

立入禁止の看板

所有地 所有林であることの主張

山や樹々の土地を所有しているということはどういうことか

樹々の一本一本を 枝の一本一本を 葉の一葉一葉を

所有しているということはどういうことか

いま この金網のフェンスを隔てて

西陽が差し込む樹々の間に彩られる光と影のコントラストを

風が過ぎ小鳥が揺らす枝と葉擦れの囁き声を

枯れ葉の裏に集く虫の微かな蠢きを

なにひとつ所有していない私が

感ずるということはどういうことか

なにひとつ 捨てていない私が

踏み躙られ アスファルトと混ざれなかった煙草の吸殻を

働きアリたちの棲家にもなれなかったアルミ缶を

絵にもならない風景に捨てられた広告材を

やはりなお 自然のうちにあるものとして

拾い上げてしまうということは どういうことか

金網のフェンスのこちらがわで

囚われているのは果たして私だったのか

自然に所有されない所有だったのか

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