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そのサラダの味見をさせて【ぽてさらちゃん。ライブレポat大阪尼崎Tora】

2019年は、私の人生において一番「移動」をした一年だった。
その8割は音楽にまつわるもの。様々なライブハウスに足を運び、サイト支援アーティストも含め、彼女を追いかけた一年でもある。その締めくくりとなる2019年12月20日、尼崎Toraでの単独ライブ参戦となった。

大阪での路上ライブ

この単独ライブが行われる前、路上ライブ敢行を知らせるツイキャスのアラームが鳴り、私は運営サイトのデータ整理をしながらイヤホンを手に取った。

車の雑踏。電車のベル。
聞きなれたはずの彼女の声だったが、声調が明らかに違う。声だけではない。口調やその速度、ギターの音も。何故かは明確だった。

場所は大阪。隣ではマイクとスピーカーを使ったシンガーもパフォーマンスをしていたが、何も通さない彼女の声の方が何倍も私の耳を支配していた。

時折酔った通行人が、悪ふざけをしながら入り込んでくるのを上手く捌き、ちゃっかりチップももらっていた。永遠の8歳だが、8年以上続けている路上ライブ。勝手知ったるだ。いくらでもこういう手練れをかき分けて来たのだろう。

その場を通り過ぎようとする人の足が、止まりかける雰囲気を彼女は見逃さずに声をかける。そこからライブ会場へ足を運び、ファンとして定着している人もいる。
寒空の中、マイクを通さない声でも、通りすがりの人を止めるだけの実力がある。そこに「ホーム」で発揮するポテンシャルの高さが加わり、一層魅力は増していく。

冷え込む路面でアウターを着込んだファンがじっと佇む中、彼女はトレーナー一枚。リクエストに応えカバーも交えつつ、3時間近く熱唱していた。

今回の単独ライブは「ぽこぽこさらだはっぴーたいむ」と名付けられ、東京と大阪で計2本。東京では2019年6月1日に行われた下北沢でその姿を見ているので、今回は大阪へ。両方行ける財力は持ち合わせていなかったが、どちらかは目に焼き付けておきたかった。

私はイヤホンから流れてくる彼女の歌声を聞いた時、大阪にしてよかったとモニターの前で一人、笑っていた。

2019年12月20日 ライブ当日

実はプライベートでは初めての大阪。方向音痴も見越して早めの高速バスを予約し、梅田に到着。古き良き阪急と、新しい波を呼ぶ梅田スカイタワーが出迎えてくれた。

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アーケードと三和市場

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大阪駅で行われていた有馬記念のイベントを横目で見ながら、尼崎に向かう。私が拠点としている名古屋市は地下街が多く、アーケードといえば大須商店街なのだが、大阪の商店街は迫力が違う。屋根があるから軒先まで長く商品が並び、自転車利用をする人が多いのにも納得した。

尼崎商店街を外れると、雰囲気は一気に昭和の残る、レトロな雰囲気に変貌するが、アーケードは続いていく。

会場となるライブハウス「尼崎Tora」は尼崎三和市場にあった。邪魔そうに見える看板がなければ、たどり着けなかったかもしれない。

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見ての通りのシャッター街である。

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普通であれば物悲しく映りそうな風景だが、それを通り越してダンジョン感が抜けている。三和商店街では、この景観や空いている店舗をを活かし、撮影会などサブカルチャーイベントを積極的を行っていて「知る人ぞ知る」コアな商店街だった。商店街オリジナル怪獣「ガサキング」など、掘れば掘るほど湧いて出てくるサブカルの泉のような場所。下の写真は怪獣好きにはたまらない店構えの「怪獣ショップ【たんちゃん】」さん。ここと同じ店主が継いだ古本屋「図研」さんも、尼崎駅から徒歩3分にあるが、それはまたの機会に。ご興味のある方は是非。私はHPからしばらく目が離せなかった。

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ここにはまた日を改めて伺いたい。

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このガムテープが更に愛おしくさせる。真ん中の怪獣が「ガサキング」。

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そしてこれは将来「怪獣」になる勢いの2人。ユニット名は「ウォーンとガォーン」。トライアル的に何度かライブをしているが、2020年何か動きがあるようだ。知りたい方はこちらが最速の情報となるのでチェックしてみて欲しい。今回のライブでも新曲のお披露目があったが、控えめに言って、間違いない。

左にいる男性は、ファンにはおなじみの「おのでさん」。彼あってこその彼女。彼女あってこその彼であると私は思う。

斧出拓也さん

彼女を追いかけ始め少し経った2019年5月、時折口していた「おのでさん」。いったい誰なのかと探してみたらYouTubeがヒットし、その中で初めて彼の曲を耳にしたのは、「野球中継」だった。

惹かれたのはやはり「声」。シャウトの中にある彼の声質はとてもよく通り、真っ直ぐでとてもいい声だ。歌詞もごくありふれた日常や、友人への想いなどがベースとなっていて親しみやすい。

こうした歌詞程、惹きつけるだけの曲と声が必要で、彼はそこをきちんと持ち合わせているシンガーソングライターだということが分かる。

そこから「べっぴんさん」を耳にした。
人気のあるお笑いコンビ出演のMVだけあって、現在再生回数は4万回を超えているが、それだけではない。

これを見ていた時、私自身「金属バット」というお笑いコンビの存在を知らなかったからだ。「斧出拓也が歌っているべっぴんさん」から来ている視聴回数もここには含まれる。

曲のキャラクターや彼が目指している方向がはっきりしていて、東京でも名古屋でもない、大阪のシンガーの魅力が存分に味わえる存在。

2019年7月に行われた投票制コンテスト「MUDIA」の決勝出場が決まった彼女を見るため、EXシアター六本木へ赴いた時、偶然にも前の席にいたのが斧出さんだった。共通の知り合いで私もお世話になっている「Nさん」に紹介してもらい、ご挨拶することが出来たが、MVで張る声や勢いとは真逆に近い、とても控えめで穏やかな青年だった。

最近では竹原ピストルさんのライブでO.Aを務めている。これからきっとその芽からは大輪の花が咲くだろう。何気に彼女が傍にいる所が、また嬉しかった。

劇団乱れ桜

彼女はSNSを始め弾き語り以外のジャンルからもファンを増やしていて、そこからライブハウスに足を運ぶようになった人も少なくない。私が彼女の存在を知ったのは音楽ではなく、「ブログ4コマ漫画家」のマンモスジャパンさんからだった。

そして今回、新たにつながりが生まれたのが「演劇」だ。

この劇団とぽてさらちゃんが繋がったきっかけは、先ほども登場したMUDIA全国大会。同じ決勝の舞台に立ったバンドメンバーからの縁だという。

彼女は舞台にも活躍の幅を広げていて、2019年10月に行われた歌劇「ニセモノたちの革命歌(サイラ)」では、ゲストアクターとして舞台に立った。

今回のライブでは、この劇団で脚本・演出を手掛ける「napomidori(なぽみどり)」氏による、オリジナルショーストーリーもプログラムに入っていた。約5分ほどだったが、劇団員全員が迫力ある熱のこもった演技を見せてくれた。

私もこのライブで初めて知ったのだが、MUDIAと同じように演劇でも「演者が少しでも表舞台に立てるために支援する」サポート会社が存在する。

その一つである「火曜日のゲキジョウ」が主催する演劇バトル『30GP』に劇団乱れ桜は参戦し、決勝進出を果たしている。

「30GP」とは、30分の演劇作品を2団体が交互に上演し、観客の投票数によって勝敗を決めるイベントで、優勝賞金を100万円を懸けて劇団同士が競う。

2019年6月から始まった予選に出展された32作品のうち、6作品が決勝トーナメントに進出できるが、そのうちの一つがこの「劇団乱れ桜」だ。

MUDIAと違うのは、ネット投票がないこと。純粋に足を運び、評価された劇団のみがその100万円を手にすることが出来る。

決戦は2020年1月18日。ここを勝ち上がれば19日の最終決戦に臨むことが出来る。チケットは24日時点で残り半分を切った。年内完売もあるイベント。

ご興味のある方は是非足を運んでみて欲しい。演者は賞金よりも、足を運んでくれた人のために、全力で演じるはずだ。スマホやモニターからは伝わらない熱量を、肌で感じて欲しいと思う。

将来、テレビや舞台で活躍する原石がここにいる。

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ライブを終えて

今回も最高のライブを見せてもらった。

この単独ライブの狙いは「味見」。
ファンに対して、これまで触れたことのなかったカルチャーに触れる機会を与えた形となった「ぽこぽこさらだはっぴーたいむ」。

私がインディーズを追いかける楽しみの一つは、こうして充分に爆薬を詰め込んだダイナマイトが、今や遅しと待ち構えている瞬間が見れる事。

夢がくすぶったまま立ち消えてしまう人も大勢見ているが、こうして成長していくアーティストが現れるたび、並走できた喜びもある。

周りに火の粉をまき散らすような勢いで、彼女は確実にその導火線を短くしながら、爆発する場所を求め前に進んでいる。

有馬記念を控え、私はその日のうちに名古屋へ帰らねばならず、最後を見れずに電車に乗っている事を悔やんだが、これも縁なのかもしれない。

またどこかで「お帰り」が言えるように。
それが蟻のように小さく見えるアリーナであって欲しい。

長文読んでいただきありがとうございました。
是非皆さんの元へも、この熱量が伝わりますように。

(そのサラダの味見をさせて【ぽてさらちゃん。ライブレポat大阪尼崎Tora】-Fin-)

読んでいただきありがとうございました。これをご縁に、あなたのところへも逢いに行きたいです。導かれるように。