腕時計の電池が切れてしまい交換を考えていた。そういえば近所に昔からやっている時計店があったことを思い出し、歩いてでかける。徒歩2分。

お店は最近閉じてしまって、自宅の一部を時計店として営業を続けている。ピンポン♪呼び鈴を押すとご主人登場。二言三言やり取りをして、軒先のイスに座って待つこと5分少々。はいどうぞ。料金を渡して腕時計を受け取る。帰路2分。

家を出て、15分後にはもう電池の入った腕時計を持って家に帰っていた。何だかあまりにも早い仕事に呆然として、すごい方が近所にいたのだなと一人感嘆してしまった。

時計店の近所にこちらも昔から営業されているクリーニング屋さんがあって、冬物衣類をごっそり抱えて初入店した。

年配のご夫婦が長く営んでいるようで、お二人の掛け合いもほのぼのして良かった。主人の作業着ジャンパーは塗料などの落ちにくい汚れが多く、チェーン店のクリーニングでは落ちないことを了承しないと受け付けてもらえない。

ところがこちらのご主人はニコニコしながら受け取ってくれた。「落としがいのある汚れだな～」なんて言ってくれて。だから「全然落ちなくていいんですよ」と伝えたけど、そんなこともお構いなしの様子。汚れを落とすことがクリーニングの仕事だよって顔で満面の笑みで受け取ってくれた。

職人さんて仕事への向き合い方が本当にその人そのままを表している。お客の私に対してあれこれ聞いてくることはなく、時計や衣類を見ている。長年の経験と自信があるから余裕がある。だからこちらも安心してお任せできる。

ふと昔を思い出した。八百屋さんで野菜を買い、肉屋さんで肉を買い、魚屋さんで魚を買う。今はスーパーでワンストップ。オススメの食べ方を聞いたり、調理方法を教えてもらうことはできない。恥ずかしい話だが、旬の食材がよく分からない。そういうお店の方のアドバイスって今思うと貴重だなと感じる。

私は自分の町のことすらよく知らないのだ。スーパーの買い物は確かに便利だ。でもどこへ行っても同じ物がコピーしたように置かれているのって最近は味気なく感じるようになってきた。この町に住んでいるからこそ出会えるお店やサービスがある。時計店のご主人も、クリーニング店のご夫婦も、そんなことを気づかせてくれる素晴らしいきっかけになった。

またトコトコ歩いて近所の職人さんや専門店を探してみよう。そして地域を応援できる人でありたいなと思う。