与儀明子

ライター。電書レーベル「こどものもうそうブックス」編集。

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最近の記事

成長の報酬

保育園のお遊戯会の練習で、先生が赤いビニールテープを床に貼り枠を作ってくれた。そこに出番の順に並んで待機するのだけど、言うことを聞かず、みんな走り回って遊んでいた。でも、ある日、なぜか、今日なんかいけるな? という空気になった。相談したわけでもないのに私たちはすっと列になった。先生はどんな反応をするのかと息が詰まるほどわくわくする。入ってきた先生は、驚いた顔つきで一瞬フリーズし、それから目をうるませた。大人も泣くんだと知った日だ。

    • 火焔土器、ベートーベンに、鹿、古墳

      シェアハウスに住んでる。みんな自粛のストレスでぱんぱんもの買って、在宅の私がばんばん受け取ってる。ある日アマビエのクッキー型がやってきた。京都のクッキー型専門店sacsacからきた。オンラインショップを見たら数式とかダ・ヴィンチの人体図とかあって楽しい。 「動物」カテゴリーに道成寺の清姫がいる。古墳は12種類もあるけど、やっぱ前方後円墳にときめくなあ。琳派の犬の可愛さがたまらん。 店主は教科書をわくわくしながら読むタイプの子だったんだろうな。

      • もういちど入りたい

        小学校の校庭で1、2、3とステップを数えながら走っていて、4の瞬間に体が縮んでズック靴のなかに吸い込まれたことがある。履き口からのぞく青空がきれいだった。『床下の小人たち』の読みすぎで記憶を捏造したんだろうと思っていたのだけど、最近「不思議の国のアリス症候群」を知った。子供がかかりやすい一過性のもので、物や自分が実際より大きくなったり小さくなったりと知覚が変容する。たぶん、それだ。幻覚とはいえほんとうに体験していたことに驚いた。 短文バトルに参加中です。

        • 戦争がおきました

          「戦争がおきました」と坂中先生が言った。塾の教室の古い暖房がガタガタ鳴って、外は曇り空で、先生の顔は蒼白だった。「確実に入試に出るから解説します」。1991年1月17日。湾岸戦争の始まり。私達は小学生で、中学入試を控えていた。世界地図が配られる。徹夜で準備したのか、先生は缶コーヒーを2回買って、口にしては呻いていた。私は上の空でバルト三国を呪文のように唱えながら、ひょろひょろの坂中先生のやつれ顔を眺めた。 短文バトルに参加中です

        成長の報酬

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        • 集団日記
          0本
        • 短文バトル222用
          3本

        記事

          日記を手紙のように書く

          日記って、手紙のように書く人と、読者を意識せず淡々と記す人と、文体が分かれる。アンネ・フランクは日記に「キティー」と名前をつけて、架空の友人に呼びかけるように綴った。すごいアイデアだと小学生の私はおののき、真似をした。最近それを思い出し、また試してみた。がらっと文体が変わった。伝える相手を具体的に意識するだけで変わるなんて、人間って、そして言葉って、なんと生々しい存在なんだろう。面白いのでぜひ試してみてください。 短文バトル参加中です。

          日記を手紙のように書く

          「床の国と上の国」

          3歳のときよく遊びに行ってた近所のレイニーの家を、床の国と呼んでいた。家具が高すぎてよく見えず、ひたすら床と向き合うことになるからだ。レイニーのお父さんは足しか見えない足人間で、見上げると高みの先に影に包まれた顔があった。ある日、洗面台に手が届かない私の元へ足人間が寄ってきて、黙って私を抱き上げた。ぴゅーんと上の国へ連れてゆかれる。クラクラしながら見わたすと、貝の形の紫の石鹸、青い刺繍のタオル、金縁の鏡。床の国よりうんと色鮮やかだった。 短文バトルに参加中です。

          「床の国と上の国」

          はぁって言うゲームをオンラインで遊ぶときのコツと注意点

          はぁって言うゲームは「お題の一言を声と表情だけで表現するパーティーゲーム」。 幻冬舎から出ています。 https://www.gentosha-edu.co.jp/book/b378746.html たとえばお題が「はぁ」だったら、なんで? の「はぁ」や失恋の「はぁ」など、A~Hの8つの役がある。失恋役の人は「はぁ」の言い方だけで、ああこれは失恋の「はぁ」だわーとわかってもらわなくちゃいけない。 オンラインでもできるんじゃないかなあと思って、この間Zoomを使って、友達と

          はぁって言うゲームをオンラインで遊ぶときのコツと注意点

          短文バトル222第一回目「徹夜」与儀のおすすめ

          ざんげ。ぜんぶ読んで好きなのを選ぶの、2月24日までなのにだいぶ遅れました。ごめんなさい。 ってかこれ、送ったらほっとして、さくっと時間がたってしまう。あーだめにんげん。 私のおすすめは、りっきーさんのやつ。 さいごにぎょっとするかんじが生々しいなーと思って好きです。

          短文バトル222第一回目「徹夜」与儀のおすすめ

          海外旅行でいい店を見つける方法

          「本を頼りに海外旅行するなんて遅れてる」 ゲストハウスで知り合った人に言われた。 はじめてのパリ旅行。気合入れてパリ本100冊読んでノート1冊にまとめた。でも、行って気づいたんだよ。広大なパリのなかの偏った情報が日本人に伝えられ、そこに人が殺到するんだって。 「インスタグラムで現地の人の投稿を検索して店を見つける」とその人は言った。 確かに視覚情報だと言語依存しないからいいね。連れてってもらったレストラン、鴨肉とシャンパンが美味しかったー! ↑米光さんの短文バトルに参加

          海外旅行でいい店を見つける方法

          夜中にめちゃめちゃ音がする

          朝まで寝付けない子供だった。いつも夜中の3時ごろ、音が聞こえてきた。来る……という気配。ぶわん。コイルが軋む。直後、かつん。落下したものを床が受け止める固い響き。はたはたと打音が続き、飼い犬が顔をのぞかせた。母のベッドからダイブしてまだ起きている私の寝室に遊びにきたのだ。手を伸ばすと鼻を押し付けてへぶへぶうと鳴らした。犬はめちゃめちゃ音がする。生命がうるさい。静かな夜はなおさら。きゅー。ふぐぐぐ。音のする柔らかな犬を撫でて眠りを待った。 #短文バトル222  (222文字以

          夜中にめちゃめちゃ音がする

          図書館で文学ゲーム体験レポ

          図書館、めちゃめちゃいろんな人が来る江戸川区立東部図書館が「名作小説をボードゲームで楽しむ〜文学ゲーム全集」というイベントを企画。我々ゲームづくり道場生が制作した文学ゲームを遊んでもらいました。 視聴覚室に卓がたくさん。 やー、図書館でやると多様な人が来るものですねー。家族連れや、喜寿(77歳)を迎えた女性など、いろんな層の方が遊びに来てくれていました。 図書館も、アナログゲームも、いろんな人が楽しめる懐の深さは共通してるなーと実感。 犬と人とのコミュニケーションのズ

          図書館で文学ゲーム体験レポ

          アナログゲーム「ドメモ」プレイ記録

          私の正面でプレイした米光さんの視点はこちら。 私の左でプレイした水野さんの視点はこちら。 私の右でプレイした鈴木さんの視点はこちら 目の前にタイルが5枚ならんでいる。裏に書かれた数字は自分だけ見えない。 他のプレイヤーの数字は見える。 自分の数字を当てていく。 「ドメモ」は、アホにもフレンドリーなよいゲームだった。 数字は「1」が1枚、「2」が2枚で、「7」が最多で7枚とわかりやすい。 私のようにワーキングメモリが少なめ、人がどの手札を出したか覚えるやつまじ無理め! 

          アナログゲーム「ドメモ」プレイ記録