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#全宅ツイ本 の感想

全宅ツイによる書籍6冊が10/13(日)に発売されました。読み終わったので感想を僕が読んだ順番に書いときます。あくまで不動産にはかかわりのないへぼアカウントの私見なので、その辺はご了承ください。


1.稼げる会社が分かる!不動産就活2.0(159p)

 不動産業界の見取り図のような本。学生などの新卒就活組はもちろんのこと、異業種で既に不動産界隈にいるor既に不動産業界に身を置いていて、不動産業界でのキャリアって?ということを考え始めた人などもターゲットなのかな、と感じた。一つの会社の色んな部署から来た人がトークするイベントは沢山あるだろうけど、同じ業種でも違う会社の違う部署から来た人たちが集まって話をする…のを聞く機会って、あまりないんじゃないかな、と思うので。計42の企業を「給与・成長環境・ワークライフバランス・法令順守意識・職場の雰囲気」の各項目で5段階評価をつけて1ページで解説。見やすいし比較も容易だ。ちなみに、5段階で1をとった企業は1社しかない。
 これらの企業紹介の合間には、会員による座談会と、彼ら/彼女らの実体験に基づく小ネタというかエピソードが色々挟まっている。座談会は彼ら/彼女らが「面接対策」、「理想の(?)キャリアパス」、「女性の活躍」などについて語ってくれていて、これまた実用的な内容となっている。これ以降の書籍では伏字で会社名が出てくることもしばしばあるため、僕のように業界に不慣れな人は、ここで先に企業の名前とジャンル(立ち位置?)を抑えておいた方が読みやすいと思った。巻末の不動産用語集も親切だ。
 この本のみ、フォレスト・ダンプという名前でYohei Shiraishi氏が出演していることと、115ページだけあくのさんのアイコンがめちゃくちゃこっちに迫ってきてるところの2点は、マニアなら楽しめるところ。

2.クソ物件オブザイヤー(192p)

不動産業界になじみがない人にもとっつきやすい一冊。そこまで専門知識もいらないし、肩ひじ張らずに楽しめる。さらにカラーぺージが非常に豊富。「ナゼ?」「どーなる?」「「真相」を追跡!」のコーナーでノミネートされた物件の背景を詳しく解説しているし、「クソ物件はなぜ生まれる?」という章で、ジャンルごとに筆者が考察をしてくれていて、これもまたとても興味深い。間口は広く、奥は深い内容になっている。
 そのほかには、序文のしっかり度合いがすごくて、「はじめに」が6冊の中でも特に良い文章だと感じた。ぜひ一度、まずはそこだけでも目を通してほしいところ。登場人物のページで、会員と一緒にやましろさんがいるのもいいですね。あとは、クソ物件の活用方法を考えるくだりで、クッキングスタジオの話がでてきたのだが、これはくまクッキングへの広告出稿(動画参照)が伏線として、この話といつか繋がるのかもしれないと期待させられた。


3.実況! 会社つぶれる! !(168p)

 表紙の迫力は6冊の中でも一つ抜けている。さらに、筆者のうち2名の実体験に基づく漫画が2本収録されているという点から、6冊のうち一番視覚的に楽しめる一冊かも。「はじめに」では唐突に英語論文からの知見が参照され、既往研究には存在しない視点を提供するという本書の価値の強調、本書の目的とその意義などがしっかり語られた学術論文スタイルをしっかり踏まえてくる。そうかと思えば、肩ひじの張りようもない嘘のような本当の話がページを繰るたびに怒涛のように襲い掛かってきて、呆れるというか笑うしかない。そりゃ会社持たねえよ。それしかいうことないですね…。巻末に倒産した不動産関連の会社のリストがあり、2008~2009年に集中していることからやはり、リーマンショックの影響の大きさというのがデータで実感できました。本みたいに落ち着いてじっくり眺めるのが良いタイプの情報なのかもなーと思わされます。
 そのほかのところでいうと、忍び寄る倒産の気配に気づくもの、気づかぬものの違いを、嵐とサーファーの関係にたとえて解説したくだりは、さすがサーファーのかずおさんだと思いました。あとは、Twitter上で一コマだけ先出しされていたあくのさんの漫画ですね。あの1ページ目にたどりつくと、もう心が囁きだすんですよね。「来るぞ…あくのさん来るぞ…」って。めくった瞬間に、指さしたあくのさんが「会社って、倒産するんです!(なぜか自信に満ちた表情を添えて」って言ってきた瞬間にもう、「はい、いただきました~!」って心で絶叫します。やったー。タイムラインで見てからずっとこれが見たかったんだよな、僕は。見れて良かったです。

4.不動産営業マンはつらいよ(183p)

本文:表紙に記された、「お前より悲惨なやつに会いに行く」というキャッチコピーのインパクトがすごいですね。ただ、この本が全体的に明るいトーンで書かれているせいで、この一文あんまり当てはまらない気がします。なぜなんでしょうね。友達から「数字ないからうちのとこの先輩、飯食わせてもらえないんだよな」とか、「浮気したせいで自分の部屋が2畳になったんだよな」とか言われたら、普段の僕ならドン引きするか、酷すぎてファンタジーの世界のお話だと思いこもうとします。でも、この本の登場人物全員「あ~。わかるわかる。あるよね~」みたいなスタンスで全部進めていくじゃないですか。なんかそのせいで、同じスタンスで読めちゃう。「あはは~」みたいな。あくのさんの持ち味なのかもしれないです。
 もし僕が不動産業界を第一志望にして就職活動するなら『就活2.0』とこの本を買うかな、と思います。「不動産を取り扱っている」といっても人や場所によって仕事は本当に色々あるわけで、「出勤して何をしているのか」の事例を知れるのが貴重だな、というのが一つ。それと、全宅ツイ会員の数名が転職サービスを利用してみる企画で記された履歴書が結構参考になるのではと思ったり。「自分の実績をどうやって記述するのか」の実例が現役社員によるお手本つきで学べる機会というのもレアだと思うんですよね。

5.宅建出るで!(158p)

裏表紙に出てくるアイドル3人が、ページ開いたとたんにいきなりグラビア飾ってて、違う本買っちゃったかな…となる。しかも3人とも宅建とか不動産屋に興味なさそうだけど、最後はみんな何となく応援している。なんか元気出る。俺、べつに宅建は受けないんだけどね…。可愛いは正義なんだって強く実感できます。というか、『「わーすた」があなたを写真で応援!』って書いてあるけど、この本のなかで宅建受験者を本気で応援している部分はたぶんこのコーナーだけだと思う。メインのコンテンツは(全く宅建に関係のない)問題⇒解説の繰り返しになっていて、それぞれの問題にコメンテーターがあれこれ言う、全チンのスタイルをとっている。テンポいいです。一部を除けば、「宅建用語の解説」コーナーも駆使すれば、宅建なくても不動産屋じゃなくても全然ついていけると思います。個人的にはしろくまさんが出題した10問目と、その解説が一番面白かったです。あとは、まゆずみ先生の杖は権力のメタファーだったっていうくだりですね。秀逸ですけど、めちゃくちゃ怖いですね。とにかくテンポがとてもよくて、サクッと読める一冊。

6.業界で噂の劇薬裏技集 不動産大技林(160p)

 もともと不動産大技林というのは、既にnoteで3部に分けて出版されていたシリーズ。この書籍はそれらの3部を1冊の書籍にまとめたものだと思う。「思う」と書いたのは、僕もnoteで1部だけ持っているものの、専門的な内容が多く含まれていて、それ以外の購入をためらってしまって確認ができていないから。アカウント名ははっきり記されてるんですけど、他のシリーズとは異なり、Twitterアイコンが全て別のものに置き換えられています。これは演出のせいなのか、本当に身バレしたくないからなのか…。書籍の性質上、「やっちゃダメ」なことばかり書いてあって、僕のような門外漢がこれを読んでどうすればいいのかはわからない。というか、後半は本当にちょっと専門的でわからないところがある。
 赤すぐりさんを筆頭に、本書のコメンテーターの方々のような、「これはダメ(なのでやりません)」と考えてくれる良心的な業者の方とご縁があれば、それは物件探しにおいてとてもラッキーなことなんだろうな…ということはわかった。6冊の出演者の皆さんすべてに通じることではあるんですけど、みなさんほんとに熱意も知識もありますし、何か不動産のことを考えるときにはこういう人に頼りたいなとしみじみ感じます。

7.総評

 テレビやラジオの番組、あるいは漫画などの作品は人気になると、「ファンブック」と呼ばれるものが出版されたりしますよね。これらの6冊はそういう類のものだと僕は思ってます。一部には全宅ツイ界隈のツイートや人物設定、それとそこそこの不動産の知識がないと楽しめない部分もやっぱりあると思います。でも、これファンブックだから。そう納得しています。どういうことかというと、全宅ツイの面々がリプ欄で披露する大喜利やコントに普段から慣れ親しんで、ほんとに普通の雑談からいきなりニュースを深く切り取る急旋回のコメントスタイル(逆もあると思うが)の全チンとかに面白みを感じるヘビーツイッタラーたちに一番刺さる仕様なんだと思うんです。だから、そういう本だからそれでいいのだ、と僕は思います。なんの脈絡もなく、女性のインタビュー記事なりグラビアなりが唐突に差し込まれても、「あ~、グラ魂みたいだなこれww」と、にやりとする。こういう姿勢で読むと、隅々まで楽しめるだろうなと。

 だからといって、全宅ツイや不動産を詳しく知らない人が楽しめない、というわけでは決してないはずです。不慣れな人はまず、とっつきやすい本のわかる部分だけ眺めればいいと思います。よくわからない掛け合いや話題、専門用語はすっ飛ばしてもいいと思います(僕もそうしてます)。そんな部分はきっと、ほんの一部分にすぎないですし、ほとんどのコンテンツはわかりやすくて面白いはずです。なんといっても全宅ツイは不動産関連のものごとを、一番触れやすいインターネットという場所で、一番わかりやすく解説している人たちですから。こんなふうに。

読んでいるうちに興味がわいて、Twitterを追いかけ始めたり、全チン読んだりして、全宅ツイのノリとキャラ設定を徐々に理解していけば、わかんなかったやり取りが突然、面白いと思えるようになってくると思います。たぶん。僕も今回読んでいて「あぁグル氏のアカウント名って昔はセラ義だったんだろうな…」とか知りました。
 というか、マジで知りたい・わからないところはツイッターで聞けばいいですよね。呼吸レベルでツイッターしている方々なので、快く回答してくださるでしょう。
 この6冊は不動産と全宅ツイという、よくわかんないけどいつも楽しそうな人たちがあれこれやってる、僕たちの非日常の入り口へのガイドブックみたいなもんだと思います。ドアを開けっぱなしにして覗いてみてもいいし、クソリプとかDMでもう一歩踏み込んでもいいのかもしれません。1年ちょっと前の僕も、突然クソリプ爆弾を体に巻いて彼らのもとにずんずんと踏み込んでいったら、意外と優しく受け入れてもらえましたし…。

 このシリーズ、たぶん作り手としては「6冊で1セット」くらいの気持ちで作ったのだろうな、と思っています。例えば、『クソ物件オブザイヤー』はカラーページがほとんどを占めている一方で、ほぼモノクロの本もあったりします。これがどうして同じ価格になるのだろうと思ったときに、「いや、トータルで買ってもらえば、個々のコストの差は均されていくのか」…とか思いました。そのへんどうなんでしょう。

 ただ、この予想が正しくないとしても、この世界に不慣れであればこそ、内容的にこの6冊は全部読むべきなのかなー、と感じています。重要なテーマについては本ごとに違う視点から解説がされて、繰り返しそのテーマの情報が頭に入って、ちゃんと内容を押さえられるようになっていると思うからです。例えば、どの本でもスルガとレオパレスとフラット35はよく出てくるので、「ああ重要な話題なんだな」と。そのほかには、大技林の序盤で出た消毒料のはなしは、クソ物件オブザイヤーの「アパマンショップ大爆発」のとこでも出てきます。2冊の間では微妙に説明するときの視点が違うので、同じテーマについて深堀りできます。そういうネタは他にも色々あると思います。

だから結局はあれですよね。全部買っとけ。そういうことです。まあ、表紙ちょっと怪しいし電車でカバーかけずに読むにはアレですけど、のぞみで大阪―東京間とかのお供にはちょうどいい分量ですから。#考えるな買え 

8.備考

以下の全ての書籍について、著者は全宅ツイ、出版社はKKベストセラーズ、出版年月は2019/10となっていますので、書誌情報は省略します。登場人物のアカウント名は書籍自体でも統一されていないですし、元々敬称(君, ちゃん, さんetc…)が固有名詞に含まれるアカウントも多いので、この記事で用いた呼称は必ずしも本来の名前と一致するものではないことをご了承下さい。

9.関連する記事へのリンク

著者の座談会のリンク張っておきます。

10.よくわからなかった点(誤植?)

僕も知らない用語とか言いまわしなのかもしれないし、誤植なのかもしれないのでちょっとわからないです。

『クソ物件オブザイヤー』
p53: こんなクソに気をつけろ!!3つ目「小さな隙が大きな物件を転ばすんや」
p83: 「みなさんから、本来クソ物件オブザイヤーはおもしろ間取りを投稿する楽しい企画なのに、変な不動産屋のおじさんが変な不動産の事件を投稿し始めて面白くなったとご指摘いただいたことは絶対に忘れません。」
(※p179の全宅ツイのグルのプロフィール、解説欄において「今年のKBOYはおもしろ間取りキッズに占領されないように頑張りたいです。」とあるので、たぶん「面白くなくなった」と指摘された、と書きたかったのではないか)

『実況、会社つぶれる!!』
p79: 「社長の愛人が経営していた郊外のの山カフェの庭で」
p164: エスグランドコーポレーション負債額「1,91億円」

『不動産営業マンはつらいよ』
p48: 「俺の親父は無職で源泉も収入証明も作りで不動産買ったのに…」
p64: 購入したいと言われ書類を全部揃えても、当日電話でドタキャン。占い師からの助言といった荒唐無稽な理由もあった。「そんな言われたら心折れますよね」
(※太字部分は「そんなこと」/「そんなの」/「そんなに」などかな、と思ったが話し言葉なのかもしれないしよくわからない)

『宅建出るで!』
p16: 「後日検針がったときに」
p34: 「また3階までまた登山」

10/14追記:p144: 「顔晴らせてくれた」も誤植では?とコメントしていたのですが、あってるとの指摘をいただきました。DJあかいさんから「うちナビリスペクトでは」とのコメントいただきました。というか、KBOY2016にエントリーされてました。皆様ご指摘ありがとうございました。
参考:


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