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オタクはみんなメガネをかけてる

ヤンデル先生と『いんよう!』というPodcast番組をやっていて、その中で、「理系メガネ」について話をした回がある。
理系の知識を使って見ると、世界が違って見える、みたいな話だ。
例えば、車が自分の横を通り過ぎていった時に感じた風に、乱流とか揚力とか圧力とか、そういう流体力学的なことを思い出したりして、「風」という現象に情報を付加していたりするのではないかということだ。
「〜メガネ」というのは完全に他人の受け売りだ。
サンキュータツオさんが「BLを知ると世界が変わって見える。BLは違う世界を見るためのメガネなんです」って言っていたのを「理系」に変えただけだ。
だから他にもたくさんメガネがあるに違いない。
あるいはメガネといわず、AR(拡張現実)という言い方もできる。
これもサンキュータツオさんの言葉だ。
現実に映像情報を付加することを指す言葉として使われることが多いが、映像に限らず、自分の持ってる知識や物の見方によって情報を足した場合もARと呼ぶとすれば、という話だ。

それで、ここからが本題なのだけれど、先日、滋賀県の豊郷町にある「旧豊郷小学校」に行ってきた。
『けいおん!』の学校のモデルになった場所を、もうはっきりと潔いくらい定番の聖地巡りをしてきた。
近年のアニメーションはロケ地の再現度が総じて高いが、『けいおん!』もそういう作品のひとつなので、とにかく作品内で見た情景がそのまま目の前にある。
それがARと何の関係があるのかと言えば、もうひたすらにわたしはキャラクターたちを幻視していた。
階段の手すりに飾ってある亀のオブジェを触りながら階段を昇っていく律っちゃんとか、
階段を降りてきて廊下を左に曲がる時に、必ずちょっと滑ってこけそうになってる唯ちゃんとか、
講堂への渡り廊下を歩いている五人とか、
をひたすら見ていた。

建物自体も、明治期に近代教育の拡充という命題のもと地元の名士が私財を投じて建設しているので、とても素敵だった。
そういう、ただでさえ魅力的な場所にいて、ARをひとり発動させ、数時間にわたってひたすらに写真を撮っていた。
下手な写真しか撮れなかったけれど、どのアングルから撮れば脳内のAR映像を再現できるか、悩むこと自体が楽しかった。
作品を知らないで小学校を訪れた人よりずっと楽しんだと思う。
何かしらのメガネをかけるということはそういうことなのか、と再認識した。


P. S. ドール(カスタムして作る本気のやつ)を持ち込み、しゃがみ込んだまま、ずっと写真を撮っている青年がいた。きっと彼はわたしよりずっと業が深くて、ずっと楽しかったに違いない。

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