日本企業のミドルリーダーもSFを読んでいる
早川書房が「世界のリーダーはSFを読んでいる」というフェアをやってます。その解説記事が、早川書房のnoteに掲載されていました。
SF好きの私は、大学時代にハヤカワのSF小説を読み漁ってました。今の私は世界的なリーダーではありませんが、そこそこの規模の日本企業の取締役なので、日本企業のミドルリーダーくらいかなと思います。
これまで、多くの素晴らしい同僚と共に、様々な仕事に関わらせてもらいました。幸いにも、四苦八苦しながらも成果を出してきたので、今の立場(ミドルリーダー?)になっていると思います。
改めて、これまでの仕事を振り返ると、若い頃にSF小説を読んで身につけた思考のひな形(SF思考)が、成果を出すのに活きていたと実感しています。
ハヤカワのフレーズに対抗して、たった1つの事例ですが、「日本企業のミドルリーダーもSF小説を読んでいる」と言いたいです。
そこで、自分の経験を元に、仕事に役立つSF思考とそれに関する代表作品を紹介します。仕事に役だったSF思考は、具体的には以下のようなものです。
とはいえ、書き出すとボリュームが増えそうなので、この記事はイントロくらいにして、詳細はシリーズで順番に書いていきたいと考えてます。
前提を疑う発想
当たり前と感じている社会の制度や慣習を、科学的なフィクションを導入して、覆している作品がSFには多くあります。このような、なんとなく存在する前提を疑う発想は、仕事で変革や新規のテーマに取り組む時に役立ちました。
上記の記事の中で、大澤先生が「枠組みを疑う力」と表現されている概念とほぼ同じではないかと思います。
仕事の役に立った作品:フェミニズムの帝国(村田基、早川書房、1988年)
フィクションとロジック
SF作品は、そのストーリーの根幹となる科学的なる設定がある作品がほとんどです。ただ、中には、その設定を表に出さずに背後に隠して、最後に示す作品もあります。
そうした作品では、 全体に科学的なロジック(シナリオ)が骨太にあって、ストーリーの至るところに伏線が散りばめられています。そして、ストーリーは起承転結になっていて、転から結で一気に盛り上がります。
この手法は、複雑なテーマの説明や研修講師などで長めのプレゼンを作る時に役立ちました。
仕事の役に立った作品:星を継ぐもの(J.P.ホーガン、東京創元社、1980年)
連続仮説から人間集団の反応を考察する
ある科学的フィクション(仮定)を軸に、それに影響される人間が社会として、どう対処していくかを描くSF作品があります。
社会活動は複雑系なので、仮定からの影響も複雑系となります。その複雑な社会活動の反応を、科学的フィクションで大胆な仮定を置くことで、際だって影響する特定部分を浮き彫りにさせています。
このように、大胆な仮定を置いて、その影響を考察する手法は、経営の変革などを行う場合の社内外への影響を想定していく際に役立ちました。
仕事の役に立った作品:小松左京の作品群(日本沈没、復活の日、こちらニッポン、他)
再利用と進化
SF作品の科学的フィクションの基本的なコンセプトは、おそらく数種類に集約されると思います。タイムマシン、宇宙戦争、ロボット、異星人、テレポーテーション、仮想現実などです。
こうした基本コンセプトは、ほぼ20世紀半ばに出尽くしていると思います。では、それ以降に出た作品が目新しさがないかというと、そんなことはありません。過去に出たSFコンセプトを練り直して再利用して、進化させていっています。
仕事をしている中で、全く新規のアイデアや発想は、そうそうあるものではありません。未知の仕事に対しても、現存するアイデアや発想を再利用して、磨き直しながら対処していくことが大半です。この際の、基本コンセプトを再利用して進化させるというアプローチは、SF小説を多読する中で学んだと思います。
仕事の役に立った作品:ハイペリオン(ダン・シモンズ、早川書房、1994年)
以上、イントロ的にSF思考がどう仕事に役立つのかを書いてみました。それぞれの詳細は、別の記事でシリーズで書いていきたいと思います。不定期になるかもしれませんが、興味のある方は、是非、お付き合いください!
追伸:
科学的フィクションを設定して、そこからビジネスのアイデアを導出していく手法が、「SFプロトタイピング」という分野として存在するようです。この分野は不勉強なので、今度、勉強してみようと思います。
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