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学年上位0.1%の進学先の統計分析④(京大の学力レベル比較)

趣味の統計分析シリーズです。共通テストリサーチを使って、学年上位層がどの大学を受験しているか=進学しているかの分析をこれまで3回行ってきました。

同じ共通テストリサーチのデータから文系と理系の学力レベル比較を行っていたところ、京大に興味深い傾向が見つかりました。そこで、文系と理系の比較の前に、京大の学力レベル比較を行いましたので、今回はそれを記事にします。

なお、京大の総合人間学部は、共通テストリサーチの集計対象が5教科ではないため、以下の分析から除外しています。

1. 前提

共通テストリサーチを使った学力上位分析の考え方は、過去の記事を参照ください(文末に総括記事のリンクを記載)。2次試験で合否が大きく変わるのですが、上方(合格)と下方(不合格)は同等の確率で起こるとみなし、共通テストリサーチの点数別の志望人数=合格人数として集計しています。

学力レベルのランク分けは、これまでと同様にイブリースさんの定義を利用させていただいています。

また、グラフの下部に入れている数字は駿台全国模試のB判定偏差値(2023年8月調査)となります。B判定は合格可能性60%の水準であり、学部・学科の定員のボーダー付近の学力レベルを示していると見なせます。

以下では、学力上位○%はその学部・学科の学力レベルを示す指標として取り扱い、駿台偏差値は最下層の学力水準(=ボーダー)を示す指標として取り扱います。前回の記事(東大vs医学部の分析)で示された通り、学力レベルとボーダーは逆転が起こります。

2. 学力上位層の東大・京大への進学数

以降の分析の基本データがこの表となります。2020〜2024年度入試の平均値を使っています。

表2

この期間の18歳人口の平均値が111.8万人であり、その上位○%が母数の行になります。例えば、学力上位0.1%(Lv6)だと1,118人です。この1,118人の進学先(共通テストリサーチの志望先)から東大・京大を抜き出すと、898人が東大・京大に進学していることがわかります。

例えば、東大理一には学力上位0.1%の1,118人のうち348人が進学しています。東大理一の定員は1,108人のため、学力上位0.1%の定員占有率は348人÷1,108人=31%となります。この定員占有率を学力レベルの指標として見ていきます。

今回の分析対象は京大です。東大についての分析は前回行っているので、興味のある方はそちらをご覧下さい。

3. 京大の学部別の学力レベル

京大の学部別の定員占有率はこのグラフとなります。工学部と農学部は学科別の入試(共通テストリサーチ)の数字を合算しています。

グラフ1

学力上位0.3%(Lv5)の定員占有率の高い順から並べていますが、京大でも医学部医学科は別格です。それ以外は、概ね駿台B判定偏差値の順番ですが、逆転も起きています。

医学部医学科以外では、学力上位0.3%の定員占有率(青の三角)が、全体平均26%を超えているのは、経済学部(文系入試)37%と理学部36%の2つだけです。ただ、全体平均から突出して上にいるわけではありません。

また、全体平均の下には薬学部・文学部などが並びますが、学力上位0.3%の定員占有率は全体平均26%に体して、21〜26%に6学部が入っていて、団子状態であることがわかります。

法学部と農学部が一段落ちて並び、最後に大幅なギャップの先に医学部健康科学科があります。法学部は駿台B判定偏差値が65であり、ボーダー付近は京大の中でも難関学部ですが、上位層の厚みが薄く、学部全体の学力レベルは京大の中では下から3番目となってしまうようです。

さらに学力上位層の厚みを示す指標が、学力上位0.1%(Lv6)のオレンジの四角の数字です。全国の学力上位1,000人の学部別の占有率です。

こちらも医学部医学科が突出していますが、理学部11%、薬学部8%、工学部8%など理系の学部に、学力上位0.1%の最優秀層が一定数集まっていることが見て取れます。京大理学部のブランド力はまだ存在し、理系の最優秀層の学生を集めているようです。

一方、グレーの帯の上にある学力上位1.0%(Lv4)の定員占有率を見ると、凸凹しています。工学部や農学部は学科別の入試ですが、一部に穴場的な学科があり、ボーダー水準が低いことから、こうした傾向が出ているようです。この仮説は、学力上位1.0%の定員占有率と、駿台B判定偏差値の低い方の数字を見比べると、相関していそうなことから、概ね確からしいのではないかと思います。

4. 京大vs東大の学力レベル比較

上記グラフに東大の科類を差し込んでみました。同様に学力上位0.3%の定員占有率の順番に並べています。

グラフ2

左2つの医学部医学科を横に置いておくと、基本的には東大の学力レベルは京大よりも高いのですが、京大の経済学部(文系)と理学部は東大・文三の学力レベルを上回っています。駿台B判定偏差値は文三の方が少し上なのですが、学力上位層の厚みは文三の方が低いようです。

特に京大理学部を見ると、学力上位0.1%(Lv6・オレンジの四角)の定員占有率は11%であり、理二の13%に肉薄する数字となってます。精度は落ちるのですが、棒グラフ一番したの青の帯が示す学力上位0.01%(Lv8・上位100人)の定員占有率は、理二だけでなく文一・文二も上回っています。

京大の中では、理学部の学力レベルは、他の学部よりも一つ格上で、東大並の学力レベルがある印象です。

5. 京大vs医学部の学力レベル比較

最後に、京大と医学部の比較です。京大は理系だけです。医学部は国公立医学部医学科を4グループに分けたうち、地方旧帝大と難関11大学を比較対象としています。これまでと同じように、学力上位0.3%の定員占有率で並べると、このようになります。

グラフ3

これを見ると、京大の理系学部は、地方旧帝・医医と国公立医医・難関のちょうど真ん中くらいの学力レベルと言えます。京大理学部が東北大・千葉大・神戸大の医学部医学科と同等の学力レベルです。同様に、薬学部が大阪公立大・岡山大と同等、工学部が北海道大・筑波大と同等という感じです。

同等と書いた医医と比較すると、学力上位0.1%(オレンジの四角)では京大が上、駿台B判定偏差値では京大が下という傾向があります。例えば、京大理学部は学力上位0.1%の定員占有率は11%と、前後にある東北大10%、千葉大9%、神戸大9%よりも高い数字です。一方で、京大理学部の駿台B判定偏差値は65であり、東北大68、千葉大69、神戸大68より下です。

なお、各大学の医学部医学科と京大理系学部は定員数が違います。前者は100人前後に対して、京大理系では理学部が約300人、工学部が約900人です。

そのため、もし京大理学部の上位3分の1(青い三角の学力上位0.3%レベル)の100名が、近隣の神戸大や大阪公立大の医学部医学科に志望先を変えたら、これら両大学の合格者の半数が不合格になります。

同様に京大工学部の上位5分の1(青い三角の学力上位0.3%レベル)の約200名が、岡山大・奈良県立医大・京都府立医大の医学部医学科に志望先を変えても、これら両大学の合格者の約8割が不合格になります。

医学部人気と言われますが、関西の医学部医学科のボーダーが上昇せずに、それなりの学生(学力上位1%・Lv4)でも入学できているのは、医学よりも理工系に興味のある学生が京大を受験しているからと言えるかもしれません。

6. まとめ

上記の分析をまとめると、京大の学力レベルはこんなイメージになります。

東大 理三
京大 医医
> 医科歯科大 医医 > 東大 理一=阪大 医医
> 文一・文二 =名大 医医・九州大 医医
京大 理
京大 経済=千葉大 医医・神戸大 医医
> 東大 文三
京大 薬・文・工=岡山大 医医・奈良県立医大 医医・京都府立医大 医医
京大 法・農
> 国公立医医
京大 健康科学
※京大 総合人間学部は5教科でないため比較対象から除外

模試のボーダー偏差値には出ないのですが、上位層の厚みを見ると、京大理学部の学力レベル(ブランド)はまだまだ健在という感じがしました。

以上です。


<共通テストリサーチを用いた学力レベル分析の総括記事>


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