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プロフェッショナルのレコーディングを見てきました!神谷えり&中塚武Recording at クリケットスタジオ

先日シンガー神谷えりさんのレコーディングの撮影に、青山のクリケットスタジオにお邪魔しました!
2020東京オリンピックの開会式で劇団ひとりさんがstartボタンを押した後に、東京に灯りがともる映像とともに流れた「Japanese Boy」の作曲者、中塚武さんのオリジナルアルバムに収録される楽曲のレコーディングでした。
(中塚武さんは名だたるアーティストの作編曲やアレンジ、CM音楽も制作されている方なので、音楽は必ずどこかで耳にしているはず。詳しくはWikipediaなどで。)

神谷えりさんが到着された頃には、すでに午前の管楽器の録音が終わっており、中塚さんも、エンジニアの栄田全晃さんも用意万端。
和やかな会話や談笑をして、リラックスした雰囲気のままレコーディングがスタートしていきます。

神谷えりさん自身には10日前に歌詞、譜面、音源や参考資料が送られてきたそうで、それから毎日歌いこまれたり、その曲のイメージを高めていたそうです。その間3回ほどのデータのやりとりのなかで、作曲者とイメージをすり合わせて迎えた当日。
ボーカルブースに入って、モニターの調整する中でトラックを流していたのですが、その上ですでに完璧な歌を歌われていました。
イメージが出来上がっているので、あとは本番でそれの微細な部分を調整するだけといった印象で、レコーディングが始まる前に用意は全て出来ており、頭の中ではほとんど完成されている。プロフェッショナルの現場と言うのはこういったものなんだな、と思わされました。

今回レコーディングする曲は、神谷えりさんと中塚武さん、そして村上ポンタ” 秀一さんの3人のバンドPETの新曲ということで作られた曲です。村上ポンタ” 秀一さんは日本一のスタジオミュージシャン、ドラマーです。この人のドラムを聞いたことのない日本人はいないというレジェンドです。残念ながらポンタさんは2021年に亡くなられてしまいました。

神谷さんがボーカルブースで歌っているときに、僕も初めてこの曲の歌詞を聞いたのですが、ああ、これは3人の歌であり、ポンタさんの事を歌われているんだな、と感じました。テイク0を歌い終わった後に、神谷さんも中塚さんも少し沈黙し、昔に想いを馳せているようでした。

レコーディング自体はものすごい速さで進み、モニターの調整やレコーディングの用意が終わったら、まずはテイク1。頭から最後まで通して歌い、イメージをすり合わせてテイク2、テイク3、とベーシックを3トラック録音。
その間もコントロールルームで中塚さんは歌詞カードとテイク数を見ながら、真剣に神谷さんの歌を聴き、言葉の一つ一つにチェックを入れていきます。

そこでほとんど出来上がっているので、あとは気になったところをパンチインで録っていきます。言葉の聞き取りやすさや技巧的な部分でのチェック。
印象的だったのは、神谷さんがこれはどっちの歌い方が良い?と2つ提案してきて、1つは自然に素朴に歌ったもの、もう1つはテクニックを少し混ぜたものでしたが、中塚さんは素朴な方を選ばれていました。

帰りの車内で神谷さんも言われていましたが「この曲に必要なものは歌のテクニックではなく、心なんです」とおっしゃっており、その曲が求めているもので歌い方や姿勢が全然変わるんだな、と考えさせられました。
技巧があると、ついそれを披露してしまいたくなるものですが、そういったものを超越しているのがプロの世界なんですね。

4時間スタジオをおさえていたのですが、最初の2時間もかからずにボーカル録りは終了、あとはセレクトの作業。
録った音源を中塚さんとエンジニアの栄田さんが選んでいきます。
言葉の一つ一つ、発音や長さ、ニュアンスをチェックしながら、選んでいく作業を横で見ていたのですが、やはり驚かされるのは判断の速さ。レコーディングで歌を録っている段階で頭の中で、どのテイクを使おう、というのはほぼ決まっているようで、あとはその際に撮ったメモを使いながら、それを実際並べ直し具現化している雰囲気でした。

時間はあっという間に経ち、予定の1時間前には全ての作業が終了、その間に音楽事務所の方々も集まり和やかな雰囲気の中、解散となりました。

プロフェッショナルの現場とはいったいどういうものなのかを体験させてくれる貴重な時間になりました。
この機会をくださった神谷えりさん、中塚武さん、栄田全晃さん、そしてスタッフの皆様ありがとうございました。
そしてこの長い文章を読んでくれた皆さま、ありがとうございます!

麻生洋平

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