多数の“Like”より、少数でも“Love”を

少し前までマーケティング専門誌の編集の仕事をしていたこともあって、人並み以上にはマーケティング関連本を読んできたけど、最近読んだ佐藤尚之さんの『ファンベース』はとくに学びが多かった。

この本が発するメッセージを自分なりに咀嚼すれば、「多数の“Like”よりも、少数でも“Love”を徹底的に重視せよ」と言えるのではないかと思う。

雑誌編集時代の自分は、とにかく話題になったキャンペーン施策を取材していた。でも本書に書かれている通り、話題になったとしても一過性かつ瞬間風速的なキャンペーンが圧倒的多数だった。

以前なら、話題になれば広くリーチして、リーチした分は認知され、それが売上につながっていったけど、いまはそうではない。話題化することの難易度が上がっているのに、話題になったとしてもすぐに忘れられてしまう。

そこで、「ファンベース」という考え方が提唱される。ファンベースというのは、ファン(支持者)をベース(土台)にして、中長期的に売上や価値を上げていくことを言う。

この本を読んで驚いたのが、少数のファンが売上を支える大黒柱になっているということ。

「全顧客の上位20%が売上の80%を生み出している」という「パレートの法則」はもちろん知ってはいたけど、それがあらゆる商品ジャンルにあてはまることがデータによって示されていて、とても説得力があった。

企業はとかく新規顧客の認知を拡大して、より多くの人に買ってもらおうと他社としのぎを削る。でも、すでにファンになっている既存顧客が実は売上の大半を支えている事実が示される。

ならば、「ファンにファンであり続けてもらうこと」「それを土台とした施策を行うこと」が収益の安定に直結するというのは、とても自然な考え方だと納得できる。

そうした「ファンベースが必然な理由」について丁寧にロジックが積み重ねられていくのだけど、本書では以下の3つに整理している。

(1)ファンは売上の大半を支え、伸ばしてくれる
(2)時代的・社会的にファンを大切にすることがより重要になってきた
(3)ファンが新たなファンを作ってくれる

それらを踏まえた具体的な施策については、最も間違えがちなこととして、「全員にファンになってもらいたい」と望んでしまうことを挙げる。

ファンベースでは、少数のファンに深く刺さる訴求を追求し、支持の強度を上げることを優先する。つまり、「多数の“Like”よりも、少数でも“Love”を徹底的に重視せよ」ということだ。

そのアプローチとして、価値自体を上げる「共感」、価値を代え難いものにする「愛着」、価値の提供元の評判を上げる「信頼」をキーワードにした施策が紹介されている。

一例として、ファンに「愛着」という感情を起こすためには、モノの背景に「人」がいることを感じさせることが大事であり、企業の創業や商品開発、苦難のストーリーをコンテンツにすることがある。

それは「モノからコトへ」などの文脈でここ最近強調されることが多いけど、ただ単にそうすればいいわけではない。ファンベースという考え方をもとに実践することに意味があるのだと、本書を読めば理解できる。

そして何より、こうしたファンベースという考え方は、自分の経験に照らし合わせてみても、多くのことで当てはまった。

たとえば何かの商品の販売戦略で考えれば、瞬間風速的に話題になるのと、ものすごく高い熱量で書かれたブログとでは、もちろんケースバイケースではあるけど、中長期的に実売につながりやすいのは後者だと思う。

自分が雑誌をつくっていたときも、SNSで拡散を狙うこと以上に、熱量の高いブログを書いてもらえることを意識していた。SNSは広いけど浅く、ブログは狭いけど深い。消費期限もブログのほうが長いから、長い目で見ても実売につながりやすかった。

いずれにしても、ファンベースという「支持者の土台」をどう設計するかが、これからのマーケティングには問われる。

それはまさに、ここ数年で活況を呈するコミュニティ論とも深くつながってくるし、「不特定多数」ではなく「特定少数」からスケールを目指すというあり方なのかなと思う。

『ファンベース』の気になったところをざっと抽出しつつ、自分なりの解釈も加えてみたけど、もう納得感しかない読後感だった。

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鈴木洋平(編集者)

1988年2月生まれ。2017年まで出版社で『編集会議』をはじめとするメディアや広告・マーケティング専門誌の編集者。2018年より“社会の無関心の打破”を掲げる社会問題に特化したメディア「リディラバジャーナル」記者。さまざまな社会問題の現場を取材している。

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