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生徒あるある⑤ 「なんでさ、もう何年も英語やってんのに話せないわけ?聞けないわけ?」

私は高校の英語教員として25年間勤め、今年の3月に定年退職をしました。4月からは、オンラインで講座を開講する傍ら、非常勤講師として引き続き教壇に立っています。現在勤めている高校は、高校入試の倍率も高い人気校です。生徒たちは行事にも授業にも積極的に臨んでおり、活気に満ちた学校で授業をしていてもとても楽しい。

さて、タイトルの質問はある生徒から授業中に受けたものです。どこの学校に勤務していても、異口同音に生徒に言われるセリフです。皆さんならなんと答えるのでしょうか?
これはまさに日本の英語教育の核心をついた問いかけです。文部科学省も日本人のスピーキング力やリスニング力を危惧して、特にここ何年もコニュニケーションに特化した科目を必修として高校の教育課程に導入しています。難しい話をするのは嫌いではないのですが、本日はこの高校生の素朴な疑問について考えます。

答えは簡単です。話せるようになるまで話していないからです。聞けるようになるまで聞いてないからです。

例えば、週4時間の英語の授業をまるまる1時間ずっと英語を聞き続け、話し続けられたら、たとえ週4時間でも多少なりとも話せるようになるはずです。でも実際には40人の生徒に1時間英語を話し続けさせる授業はほぼ不可能です。1時間の中で、たとえ5分でも英語で考えクラスメイトと意見の交換をする活動を中学から一貫してやっていくとスピーキング力はつくと思いますが、中学は高校受験を見据え、高校では大学や卒業後の進路を見据えてたカリキュラムが優先されます。それでも以前に比べたら圧倒的に生徒たちの話す、聞く機会は授業の中で増えました。生徒のアウトプットの力は確実に伸びていると実感します。やった分だけ力になるんだと生徒を見ていて思います。

現実問題として学校の授業時間だけで、英語を話せるようになる(人によってその基準は違いますが)のは難しい。ではどうすればいいのか。これも答えは簡単です。生徒に対して答えるのなら、「家庭学習が重要だよね」と返すでしょう。学校での不足分を自分の時間で補わないといけないということです。スピーキングやリスニングの宿題を毎日出せばいいのでしょうが、それも学校現場の状況を鑑みると厳しい現状です。ただ、定期的に英語でのプレゼンやスピーチのテストを勤務校では行なっており、そのために生徒は入念な準備をします。自ずと英語で話す、聞く訓練を自ら行うことになります。10年前の高校生に比べると、今の高校生は多少なりとも英語でのコニュニケーション力は向上していると実感します。タイトルの質問を私に投げかけた生徒も、英語で質問されると、その内容を理解し英語で答えようとします。ただ、なかなか英語が出てこず、もどかしさがあるのでしょう。

ここで大事なのは、自分でどこにいても英語に取り組むという意欲と意識を持つことです。これは学生に限ったことではありません。社会人の中にも、オンライン英会話やYouTubeで学習する等、英語学習に取り組んでいる方も多いかと思います。しかし、どんなにやっても英語が身につきません、という方は、実は圧倒的に学習時間が足りない方がほとんどです。(もちろん学習方法そのものの問題も同じくらい大事ですが。)なかなか身につかない、これでいいのかと感じいつの間にか学習から遠のくというのが現状なのでは?

英語力はすぐに身につくものではありません。そう割り切って、気長に地道に取り組むしかないと感じています。話せるまで話すための練習を、聞けるようになるまで聞く訓練を積み重ねていけばいい。高校で教えている私は、そのための方法の伝授と導きを本当はもっと生徒にしてあげたい、と心底思います。


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