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気候変動について知っておくべき2つのこと

気候変動(Climate Change)は、大規模で複雑な問題だ。個人で解決できる問題じゃないし、数字やグラフ、専門用語がいっぱい出てきて、理解する前に心が折れそうになる。でもGreta Thunbergや小泉環境大臣など、メディアで話題になることも多くなってきたように思う。先学期、Climate Justice(気候正義)という授業を取った僕から見て、忙しい人達でもこれだけは知っておいたほうがいいと思うのは、

「日本人の生活にも直接影響する」ということと、

「今まで通りの経済システムや生活のあり方では立ち行かなくなる」ということだ。

そして、これからはAIの時代、と言われているけれど、僕は気候変動の時代になると思う。ここに書くのは新しい常識のほんの一部だ。「環境問題を自分事として捉えよう」なんて言うつもりはない。そんなこと言って解決するようなものではない。これからの時代を生きていく上で、気候変動について知らないと置いて行かれることになる。そのエッセンスだけをシェアしたいと思う。

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1) 日本人の生活にも直接影響する

2019年は特に台風15号・19号の被害が甚大で、ニュースで川が氾濫している様子などを見て唖然としてしまった。しかし異常気象は今年に限ったことではない。2017年には北九州で、そして2018年は西日本で豪雨が甚大な被害をもたらした。これは偶然ではなく、気候変動が大いに関係している。

簡単に言うと、海水温の上昇によってより多くの海水が蒸発し、空気中の水蒸気量が増える。より不安定になった大気からより大きな雲が生まれ、異常気象を引き起こす、というメカニズムだ。

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もちろん、気候変動と異常気象は単純な因果関係にあるわけではない。台風は毎年来るし、規模も毎回違う。しかし、気候変動が進むと、より大規模な異常気象が、より頻繁に起こるということが明らかになっている。気候変動は数十年レベルの長期的な影響をもたらす。毎年台風19号レベルの異常気象が起きてもおかしくないということを覚悟しないといけない。

世界各地では、作物の収穫量が減ったり、耕作地が少なくなったり、という報告がたくさん上がっている。食料自給率37%の日本にとって、これは他人事ではない。このまま気候変動が進めば世界中で食糧危機が起きてもおかしくない。

気候変動は北極や小さい島国、アフリカの問題じゃなく、日本人の生活にも直接関わっている、ということを当たり前の事実として知っておいてほしい。

(ちなみに同じ自然現象でも、地震とは全く性質が異なる。地震は単発が多いが、予測が難しい。人間にはどうしようもできない分、備えと対応に重きが置かれる。一方、異常気象は定期的に起こるし、部分的に人間が引き起こしている。被災地への対応はもちろんだけれど、そもそもあまり起きないようにするために、気候変動への対策をすべきだ、という議論が必要だ。)

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2) 今まで通りの経済システムや生活のあり方では立ち行かなくなる

まずは、このグラフを見てほしい。

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(出典:IPCC Special Report: Global Warming of 1.5 ºC)

このグラフは、地球温暖化の影響を最小限に抑えるためには、CO2などの温室効果ガス排出量が最終的には「実質ゼロ」にならないといけない、ということを示している。(具体的には2030年までに45%削減、そして2050年までに実質ゼロと言われている。)2100年とかじゃなく、あと10年で約半分、あと30年でゼロだ。想像できるだろうか。

ちなみに「排出量ゼロ」ではなく「実質ゼロ」なのは、森林やテクノロジーで吸収する分を考えてのこと。でも二酸化炭素を吸収する新しいテクノロジー(CSS)はあまり現実的ではないし、森林もどんどん減っていっている。単純に、排出量を減らさないといけない。

現在、地球全体で毎年420億トンの温室効果ガスを排出している。毎年増え続けているものを、あと20~35年でゼロにするのが現実的ではないのは、グラフの急勾配を見れば誰でもわかることだと思う。けれど、そんなこと言っていられないのが今の状況だ。このままいくと地球温暖化は加速して、世界各地でどんどん被害が出る。

具体的な数字がなくても明らかなのは、「これからの将来、温室効果ガスを排出する活動は急激に縮小しなければいけなくなる」ということ。工業も、発電も、車も、プラスチックも、全て関係している。2050年の世界がどうなっているかは想像できないけれど、経済システムも生活スタイルもガラッと変わっていると思う。例えば、石油の採掘量が制限されて値段が急高騰するだけでなく、政府からの補助金もなくなって庶民がガソリンを使うのは夢のまた夢、なんてこともありえる。個人の生活レベルよりも会社レベルの方がもっと大きな変化になるはずだ。仕事に少しでも石油が関わっている人はこのことを深く考えるべきだと思う。あと20年ほどでビジネスが難しくなったりつぶれたりする可能性もあるのだ。

(詳しくは知らないけれど、degrowth(=逆成長)という考え方もある。国連の提唱するsustainable development(=持続可能な開発)は経済発展を前提にしている。グラフが示すように大幅な排出量削減を目指すならば開発・経済成長という前提から変えていかなければいけない、というアイデア。個人的にとても大事な考え方だと思う。)

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じゃあ何すればいいのか、という声が聞こえてきそうだけれど、実は個人にできることはあまり何もないというのが正直なところだ。対策には政府の数兆円規模のお金が必要になる。

一番簡単にできることは政府の石炭火力発電所に関する政策に注目することだと思う。国内外の設立に関して国際的に大きなバッシングを受けているにも関わらず、計画を変える予定は今の所ないと小泉環境大臣は発言している。これには断固反対して、再生可能エネルギーに投資すべきだ。

石炭火力発電所だけじゃなく、今後のマニフェストなどでも環境問題に対してどれだけ具体的に対策しようとしているかぜひ気にかけてほしい。ヨーロッパの多くの国では気候変動対策が争点の1つになるのが当たり前になっているそうだ。市民がプレッシャーを与えて日本でも早くそうなるべきだ。

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ニュースや新聞では、AI、ブロックチェーン、ビットコイン、プログラミング教育なんて言葉を毎日目にするようになった。21世紀はAIの時代になるのは間違いない。

同時に、21世紀は気候変動の時代になると思う。二酸化炭素は空気中に長く残るため、気候変動は数十年単位の長期的な影響がある。極端な話、明日世界が温室効果ガスの排出をピタッとやめたとしても、既にこの150年で蓄積した分が引き起こす気候変動は避けられないということだ。23歳の僕が生きている間は、ずっと付きまとう問題になると思う。仕事においても、普段の生活においても。それが、気候変動はこれからの新しい常識になる、ということの意味だ。

東京で生活していると、自分たちが地球に存在していることや、自然の中で生まれた生物だということをつい忘れてしまう。それにこの文明の中で生きていると、自然なんてコントロールできると思ってしまう。テクノロジーで何とかなるなんて絶対に思ってはいけない。相手は自然だ。人間が唯一敵わない相手だ。今こそ僕達人類は謙虚になるべき時だ。

繰り返しになるが、気候変動はこれからの時代を生きていく僕達にとって、新しい現実の一部になる。あと10年でCO2排出量を半分にしないといけないけれど、特効薬はないから少しずつ地道に減らしていくしかない。あまりうまい締め方が見つからないのは、簡単にできることがないからだ。だから僕から言えることは、このことを受け入れた上で生きなければいけないと思うということだ。そしてもっと調べて理解を深めよう。「地球を守る」ためじゃなく、自分たちの生活を守るために。

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