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社員が自ら進んで取り組む施策、仕組み、社内制度の仕掛け

これまで数回のnoteで、会社が中・長期で安定的に成長するにも、急激で大きな環境変化に適切に対応するにも、社員が仕事を通じて学び成長する行動環境が十分に備わっていること、それが会社の経営理念・ビジョンやビジネスモデル、さまざまな仕組みや制度などと整合性がとれていることが重要であるということを説明してきました。とりわけ、会社における社員の行動環境の中で、社員の自律性が重要なカギを握っていることを前提とし、自律性を育み伸ばすためにどのようなことができるか、何をすべきか、また、そうしたことを考えるフレームワークをご紹介しました。

さて、次に、これらを踏まえて、会社の現場で具体的な施策を実施し、それを継続するための仕組みや制度を講じるフェーズへと進んでいくことになります。

整合性、影響の伝播だけでなく
社員の前向きな気持ちを引き出す

このフェーズにおいても、もっとも重要なことは、冒頭に掲げている「経営する際に脳裏に描いておきたい1枚のフレームワーク図」です。このnoteでも繰り返し、繰り返し述べてきましたが、施策も、仕組みや制度も、それが単発で機能するということなどあり得ません。それに影響を受ける/影響を与える、ありとあらゆることとの整合性やその影響の内容・度合いなどに留意しなければなりません。

それから、もう一つ重要なことは、社員の前向きな気持ち、取り組み姿勢を大切にすべきということです。

決定的に重要なこれら2つのポイントを外してしまっては、どんな施策も、仕組みや制度もうまく機能することはありえないでしょう。

ドライバ間の整合性や影響の伝播については、これまで何度も繰り返し述べてきましたので、ここでは社員の前向きな気持ち、取り組み姿勢について考えてみましょう。

まず、自律やストレッチ、サポート等に関連する施策を講じようとした場合に、よくある反応とはどのようなものでしょうか。

(社員)こんなにガチガチに管理されたくない
(社員)自分の人生やプライベートなことに会社に立ち入ってもらいたくない
(幹部・上司)こうした仕組みを運用することは負荷が大きい
(幹部・上司)自分の仕事をこなしながらメンバーのことを今以上に面倒をみることはできない

・・・さまざまな反応が考えられますが、整理するとこんなところでしょうか。

共感・理解、そして、前向きな取り組み姿勢には
時間がかかることを想定内に

何か仕組みをつくると、どうしても「型にはめられる」「管理される」「裁量が制限される」といった印象を持たれてしまうものです。その人間心理は、これまでに行ってきた仕組みや制度を廃して新たに合理的なものを導入するといった場合でも同様に起こるものです。

だからと言って、そうした心理的状態を頭ごなしに否定して、新しい仕組みを押し付けても効果は上がりません。まずは、なぜこのような施策、仕組み、制度が必要なのか理由を明確に示すことです。そして、これによって解決・解消される問題点や不都合を、社員が自分ゴトとして理解しやすい具体的な事例・事象にあてはめて説明することです。

経営者や幹部が考え抜いた一つの施策に対しても、100人社員がいれば、その捉え方は100通り。その施策の意図や狙いに気づかせてあげる配慮や仕掛けが大切なのです。良い会社づくりに取り組み始めた最初の頃は、どうしても社員による理解や共感が進まないということが多いことでしょう。時間がかかってもいいのです。拙速に仕組みにあてはめようとするのではなく、理解・共感を育むプロセスこそが「良い会社づくり」であるというくらいのスタンスでじっくりと取り組みましょう。

もちろん、「形から入る」ことの効用も否定するものではありません。それでも、社員と会社、社員と経営者・幹部との間の信頼感が十分に醸成されていない限りは、ネガティブな影響の方が大きいように思います。要は、仕組みを講じて、やっておしまいではなく、社員の反応や気持ち(の表れである言動)をしっかりと観察することが大切だということです。

変化や新しい仕組みに対する社員の抵抗感が強い場合には、「研修」と称して一度やってみるというのも有効な手です。さらに抵抗感が強い場合には外部の講師を招いて、第三者から話してもらうのです。そうして、たとえば半年後、一年後に、経営者・幹部・上司からさりげなく「そういえば、あの研修の時、あなたはどんなことを考えたのですか?」などと投げかけてみる。すると、その質問がきっかけとなって社員がこの半年、一年を振り返り、「そうだ、常に意識していなければ変われっこないんだ。だから、この仕組みが大切なんだ」と気づくのです。

改善の取り組みに半年も一年もかけていられないという経営者・幹部の焦りが目に見えるようですが、私としては、これくらいの時間をかけてでもやる価値はあると思いますし、社員の理解・共感がないうちに圧しつけてしまうことの悪影響を考えると、時間にこそ価値があると考えています。

管理されること・管理することへの心理的抵抗

また、社員の行動環境に関連する施策、制度には、一見して「管理するもの」「管理されるもの」と見えてしまうものが多いのですが、これも発想、また、伝え方を変えることが有効です。

すなわち、これらは「社員を管理するもの」ではなく、たとえば社員と上司など第三者との間で「語るためのフレームワーク」なのだというような落とし込み方をするのです。管理や、教育・指導といった要素を前面に出すのではなく、社員からのストーリーテリングのフレームワークという形をとり、実際にそのような運用をすることによって、社員の抵抗感を低めるとともに、社員の創造性を育む効果も上げられるはずです。

そして、このことは幹部・上司の観点から見ると、「この仕組みがあるから今まで以上に一生懸命にメンバーのことを見なければならない」のではなく、「この仕組みがあるから、自分から一生懸命にメンバーのことを見なくても、メンバーから勝手に自分のことを語ってくれるから、管理の要素を大幅に縮減することができる」と捉えられるようになるはずです。


以上のように、仕組みを作ったからと言ってそれで終わり、それで万事うまくいくと考えるべきではありません。その仕組みに乗っかって「やるんだ」「やり切るんだ」と社員が思わなければ、効果は限定的なのです。人間心理を大切にした「システム化・型決め」を講じることがポイントとなります。

そして、どんな施策を講じるにあたっても、上記フレームワーク図「行動環境」の中心にある「信頼」の如何が、施策の導入や推進のしやすさに、こんなにも大きく影響してくるのかと再認識させられることでしょう。(東渕)

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