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言葉の宝箱 0282【人がよくて、気も利くだろうが、芯の強さにはどこか欠けている。恵まれてきた人生を歩んできた者によく見られるタイプ】


『赤毛のアンナ』真保裕一(2016/1/31徳間書店)

こんな写真を撮れたらいいな。そう思って手にした本。

母を亡くし、施設に引き取られてきた少女・志場崎安那。
彼女は持ち前の明るさで、辛い経験を持つ仲間たちを盛り上げていく。
十五年後。突然のニュースが舞いこむ。
アンナが男を刺して逮捕された、と。何がアンナにあったのか。
彼女と出会い、掛け替えのない時を過ごした仲間が集まり、奔走を始める。やがて、アンナがひた隠しにしていた過去が見えてくる。
著者自身も愛読した名作へのオマージュをこめた青春サスペンス長篇。

・罪を犯した友人のために何ができるか。
そのテーマを考えていた時、
ふと思い出したのが名作『赤毛のアン』でした。
不幸な生い立ちであろうと、
明るく元気でありつづけようとしたアン・シャリーのひたむきさに
心打たれた若かりし頃を振り返りつつ、全力をこめて書きあげました。 ――著者

・この人は、多くの人に守られてきた子どもなんだって思えて。
泣けば、誰かが助けてくれる。
そう思って生きてきた人なんだろうなって。
わたしだって、泣きたかったのに・・・(略)
人がよくて、気も利くだろうが、芯の強さにはどこか欠けている。
恵まれてきた人生を歩んできた者によく見られるタイプの男に見えた(略)互いの歩んできた道が、生きていく多くの場面に表れてくる P352

そして、こう終る
・大丈夫だ。絶対にアンナはやり直せる。
今までアンナが与えてきてくれた元気を、
今度はみんなが彼女に返す番なのだった P354

*こんなにも無垢に人を愛し、
献身的に勇気づけられる人がいるのだろうか。
そんな思いがした。
だからこそ多くの人の心の中で大切な存在として生き続け
疎遠になってはいても、
どうにかしようと動き出さずにはいられなくなるだろう。
どんなに健全な環境に育ち、恵まれてはいても
何かのきっかけで人は豹変するものだと怖い思いもし考えさせられた。

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