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外国詩あれこれ

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主にドイツの詩を訳したり、またよく知られた翻訳詩を紹介したりします。
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記事一覧

ガルシア・ロルカの詩「別れ」――ぼくが死んでも

ロルカの詩「Despedida(別れ)」は、小海永二訳が定番のようだ。ほかに長谷川四郎訳も知られ…

ヨジロー
3か月前
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アゴタ・クリストフの詩「昨日」―きみが伸ばした手には太陽

アゴタ・クリストフ(1935-2011)の小説『昨日』の内容についてはほとんど記憶に残っていない…

ヨジロー
1年前
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シュペルヴィエルの詩「動き」―ふりかえった馬は何を見たのか?

ジュール・シュペルヴィエル(1884-1960)はウルグアイ生まれのフランス詩人だ。「動き」は、1…

ヨジロー
1年前
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ランボーの詩「永遠」―それは太陽に溶ける海

外国の詩の場合は、どのような翻訳で読むかによって、感動したりしなかったりする。 ランボー…

ヨジロー
1年前
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ヴェルレーヌ「空は屋根のかなたに」補足―シュロの葉?

ヴェルレーヌの「空は屋根のかなたに」について記事を書いた。永井荷風が「偶成」という題で訳…

ヨジロー
1年前
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ランボーの詩「そゞろあるき」―遠くわれは歩まん

永井荷風による「そゞろあるき」は、ランボーの詩の日本最初の翻訳だそうだ(西原76)。 1950…

ヨジロー
1年前
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ヴェルレーヌの詩「空は屋根のかなたに」―質朴なる人生はかしこなりけり

川崎洋編『いのちのうた あなたにおくる世界の名詩8』を読んで、ヴェルレーヌの以下の詩を知った。 沢田としきの次のような挿絵がついていた。 いかにもこの詩にぴったりで、感動を高めてくれる。 ■ヴェルレーヌ「空は屋根のかなたに」(永井荷風訳)■語句題名――原詩には題はない。訳者の永井荷風は「偶成」という題をつけた。「偶成」とは、たまたま出来上がったものという意味。題が「偶成」ではさびしいので、ここでは「空は屋根のかなたに」とした。 かくも――こんなにも 青き葉――緑の葉

アネッテ・フォン・ドロステ=ヒュルスホフの詩「塔にて」―広野を自由に駆けまわる狩…

森泉朋子編訳の『ドイツ詩を読む愉しみ』で、アネッテ・フォン・ドロステ=ヒュルスホフの詩「…

ヨジロー
1年前
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サッフォーの詩「夕星の歌」―幼な子を母の手に

サッフォー(サッポーとも)は古代ギリシア最大の女性詩人。紀元前7世紀にレスボス島で生まれ…

ヨジロー
1年前
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ザーラ・キルシュの詩「白いパンジーのそばで」―ほらごらん 彼は来ないよ

ザーラ・キルシュ(Sarah Kirsch)の詩集『呪文のうた』を読む。「白いパンジーの傍らで」(内…

ヨジロー
2年前
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ローゼ・アウスレンダーの詩「誰が」―誰が私のことを思い出すだろう

ローゼ・アウスレンダー(1901-1988)の詩集『雨の言葉』(加藤丈雄訳)を読む。心に残る詩が…

ヨジロー
2年前
2

ツェランの詩「ポプラの木よ」―おまえの葉は白く闇を見つめている

パウル・ツェランの母親は、1942年の末か1943年の初めに、ナチスの強制収容所で首を銃で撃たれ…

ヨジロー
2年前
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ツェランの詩「頌歌」―あなたを讃えよう いない者よ

パウル・ツェランの詩「頌歌(Psalm)」は、1961年に書かれ、1963年刊行の詩集『誰でもない者…

ヨジロー
2年前
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ツェランの詩「死のフーガ」―夜明けの黒いミルク

パウル・ツェラン(Paul Celan、1920-1970)はルーマニア生まれのドイツ系ユダヤ人だ。 彼が書いた詩「死のフーガ(Todesfuge)」はおそらく第2次大戦後のドイツでもっとも有名な詩だろう。 恐ろしい詩だ。一度読むと、「夜明けの黒いミルク」というフレーズが頭にこびりついて離れなくなる。 ここではこの詩を訳し、解釈してみる。 ■ヨジロー訳■語句の説明フーガ――多声音楽の様式の一つ。ある声部の主題で始まり、これに第2声部が模倣的に応答する。先行主題は追いつ