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三千櫻酒造さんを訪ねて

北海道上川郡東川町にある「三千櫻酒造」さんへ。


東川町は旭川空港から車で20分ほどとアクセスの良い場所にあります。
大雪山からの豊かな水に恵まれ、美味しいミネラルウォーターが井戸水としてこんこんと湧き、濾過の必要もないというから驚き✨
町には上水道がないんです。みんなこの井戸水。
いただきましたけど本当に美味しい水なの。
羨ましいなぁ。


しかも東川町は北海道屈指の米どころ。


本州とは規模が違いすぎる。どこまでも水田。


水と米が豊富というこの好条件で今まで酒蔵がなかったのが不思議ですね。

そんな東川町が待望の酒蔵を誘致するため、全国でも珍しい「公設民営酒蔵」を作りました。

酒蔵としてのハードの部分は「公」である町が用意する。酒造りや蔵の運営などソフトの部分は、酒造りのプロである民間の酒蔵に一任する。

新しい機械を導入する、とか
蔵を修理する、増設する、などが必要な場合はかかる費用の8割を町が出してくれます。
そのかわり、酒蔵側は施設使用料というか家賃というか毎月定額を町に支払います。

酒蔵ができると、雇用が生まれ
お酒を買いたい人や酒蔵を見たい人が町に来てくれる。
地元ならではのお土産ができる
ふるさと納税にも使える。
魅力ある町には移住者も増える。
もちろん企業(酒蔵)からの税金も入る。
だから町は、日本酒だけでなく
今後ワイナリーを誘致するためのブドウ栽培も始めているし、2〜3年後にはジンの醸造所も公設民営で作ろうと進めているんですって。(もう運営会社はすでに決まっています)

さて、公設民営酒蔵の
公募に名乗りをあげたのは岐阜の中津川で140年以上酒造りをしてきた三千櫻酒造さんでした。
温暖化と蔵の老朽化に頭を悩ませていたから。
酒蔵さんって特にその地方地域の個性や風土に深く関わる事業だから、歴史ある酒蔵が北海道の雪深い開拓地に住むなんてだいぶ勇気がいることだったでしょうね。

ちなみに酒蔵を全くの新規で開業することはできませんが現在「日本酒製造免許」を持っていれば 他県でも開業することは可能です。
上川大雪酒造が2016年に廃業予定の三重県の酒蔵を買取り、登記を北海道に移転させるという前例のない方法で上川町に酒蔵を設立したのをきっかけに 同様の方法が可能になりました。


さて、故郷の岐阜中津川をはなれて北海道に移り住んだ山田さん。
なんだか今の環境もすごく楽しんでいらっしゃる感じ。持ち前のコミュニケーション能力で、ちょっと外に出たらみんな知り合い。
常に誰かに声をかけられています。
なんと英語も中国語もペラペラなんです。

最近、増設した部分でご案内してくれる社長の山田さん



蔵内を見せていただきましたが、設計段階から社長兼杜氏の山田さんの酒造りに合わせた蔵にしたのでコンパクトながらとても機能的で使いやすい蔵です。

空調完備の蔵内は寒すぎず、暑くもならず快適。
そして清潔。




最新の醸造機器を使うよりも、手の感触や見た目などを大切にした職人気質な山田社長。
こちらに来て3年。
道産の米に慣れ、東川の水に慣れ。
毎年毎年美味しくなっていく三千櫻。



他の蔵と大きく違うところは、蒸した米を包む布などを外に干すことができないので 専用の洗濯乾燥機を使っているため今まで以上に麹の雑菌数が少なく清潔が保たれていること。
麹の造り方にはこだわりがあり、いまだ泊まりこみで手を入れること。ガチっと固まらず常にパラパラ麹。
公設の蔵なので、町役場関連や国内外からの視察が多く 仕込みタンクの横にプロジェクターがあり蔵の壁に映像を映し説明できること。


井戸水は年間通して5度を下回らないので凍結しないそうです。
全館空調完備の蔵内では、隙間風もないのでむしろ快適。
酵母が湧きつかないとか、凍ったとか
発酵不良とか、全くないのだそうですよ。

冬場、外は常に氷点下。干したら即凍ります。


仕込みタンクのすぐ横にプロジェクター。



研修生の受け入れも積極的で、現在は台湾から2名、さらに農大からも2名の学生さんを受け入れています。先ほども書きましたが山田社長は中国語を話せるので研修生たちも不自由なく学べます。

そして数年前に火災で蔵が全焼してしまった結城酒造の美智子さんも、現在 単身で東川で生活しながら三千櫻でお酒造りをしています。
あのときすかさず「うちへ来たら?」って声をかけたのが山田さんなんですよね。
三千櫻の酒はもちろんのこと 蔵を借りて「結」や「みちこざくら」なども醸造しています。
(今回はたまたまご家族の用事でご不在。お会いできず残念でした。)

みちこさんが、みちざくらで造るお酒「みちこざくら」




今回の訪問では山田社長に蔵見学だけでなく
東川町の取り組みや、施設、住宅環境などなど
全て学ばせていただきましたし
美味しいお店にも連れていっていただきました。

東川で美味しいランチやスイーツが食べられるTamJamさん!


紋別産タラと東川町の豆腐屋の豆乳とゆめぴりか玄米のドリア。美味しいポテトサラダやデザート、飲み物つき。



東川町は街づくりデザインに本当に力を入れていて、全国でも数少ない成功事例。
1985年から「写真の町」にという街づくりをしている他、外国との交流、隈研吾さん設計の建物、福祉や教育etc…魅力がたくさん。
どのような取り組みをしているかはまた別記事で書きたいと思います。

世界的建築家 隈研吾さんデザインの公共施設



東川、三千櫻
本当に素敵なところですし
お酒もめちゃくちゃ美味しいです。
ぜひ見つけたら手に取ってみてくださいね!

お米の種類ごとに色分けされたスタイリッシュなデザイン。



蔵を建てた時に周りに桜の木をたくさん植樹しました🌸
蔵の裏手も公園として整備する予定。
来年くらいにはお酒の名前のようにたくさんの桜に囲まれてお花見ができるようになるかもしれません。

三千櫻、東川町
これからもますます目が離せません。

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