高岳、中岳、烏帽子岳(えぼしだけ)、杵島岳(きしまだけ)、根子岳(ねこだけ) その2(全2回)


昨日の続きだよ、ポン!

そうしてとうとう根子岳は、一番のお兄ちゃんの高岳の背まで抜いてしまった。根子岳は天にも届くほど背が高くなっていったんだ。
「ぼくが大将だぁーい。一番背が高いから。僕が阿蘇の大将だぁーい」
根子岳は兄さんたちを見下ろして大きな声で威張って言っていたんだ。

ちょうどその頃、お父様の阿蘇大明神が帰ってきた。お父様は根子岳があんまり背が高くなっていたんで、そりゃあビックリしたよ。だけど、何かおかしいって思ったんだね。阿蘇大明神は夜になると、じぃーっと闇を透かして根子岳を見ていたんだ。見える。見える。よく見えた。な、なんと、大勢の赤鬼と青鬼たちが大きな笊(ざる)を持って、竹田(たけだ)の土を笊に山盛りに入れては、根子岳の頭の上まで、えっさえっさと運んでいるではないか。
「赤鬼ぃー、青鬼よ。お前たちは暴れもんだから、祖母山(そぼさん)の奥に押し込めておいたはずなのに、そんなところで何をしておるんじゃぁ。とっとと祖母山へ行かぬかぁ」
阿蘇大明神は地球が震えるほどの大きな声で言ったんだ。
「はい、根子岳さまが土をたくさん運んで背が高くなったら、阿蘇でうんとこさ暴れてもいいと言ったんで、こうしていたんです」
と言い捨てると、赤鬼も青鬼もバラバラと祖母山へと逃げて行ってしまった。阿蘇大明神は根子岳にお仕置きをしたんだよ。大きな木の枝で根子岳の頭を何度も何度も、バシャリン、バシャリン、と叩いたんだ。根子岳の頭はこの時からガタガタになってしまったんだ。もちろん高岳よりも背は低くなったよ。根子岳は涙を流して謝ったのさ。その涙は阿蘇谷に大きな湖となったんだ。鬼たちが土を掘り返した竹田は、今でも低い土地になったまんまなんだって。阿蘇大明神に叱られて鬼たちが捨てて行った土は、荻岳(おぎだけ)となって残っているんだって。ずるいことの嫌いな中岳は根子岳のことを怒っていて、今だってまだ頭から火を吹いているそうだよ。

おしまい。ポン!

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