迷惑をかけてばかりと思っていたあなたへ
社会人1年目が終わるころ、私はくすぶっていた。
会社に違和感を持ち、何かを変えたいと思っても周囲にうまく伝えることができなかった。どうすればいいのか分からなくて、つのらせた違和感を表情と行動に出してしまったときもあった。
そして4年で会社を辞めた。
たくさん迷惑をかけたから、チームの人にはもう会えない。そう思っていた。
***
退職してから3年後、会社で働いていた日々の記憶がすっかり薄れていたころ。
突然、直属の上司だった2つ上の先輩が連絡をくれた。
「海外に駐在することになったよ!それまでに会える日ある?」
そうしてチームの飲み会に参加することになった。辞めてから初めての再会。
久しぶりに会えることがうれしい半面、とても怖かった。だってたくさん自分の悪いところを見せて迷惑をかけてしまったのだ。そもそも参加していいのだろうか。
当日は時間が近づくにつれ不安がどんどん増していった。吐きたくなるほど緊張はピークに達し、笑顔はひきつっていた。
でも、予想は裏切られた。
その飲み会には、私が退職してから新しくチームに入った人たちも来ていた。
「すごく優秀だったって聞いてるよ〜」
「会社に戻ってきなよ」
「洋子さんの出張レポートが、私のバイブルです」
と言ってくださったけど、「いやっそんなことないですよ〜」と謙遜した。だってお世辞かもしれない。思い出が美化されているのかもしれない。だって迷惑をかけたんだから。勘違いしちゃいけない。
そして会も終わり、一行は地下鉄の入り口へと歩みを進めていく。それぞれの路線へと分かれていくとき、一番迷惑をかけたと思っていた人が握手の手を差し伸べてくださった。私の手を包んでくれた両手はやさしかった。「元気でね」「また会いましょう」。
こんなにあたたかく受け入れてもらえるなんて思っていなかった。
ひとり帰路につきながらボーッとしていた。今日起こったことが少しずつ咀嚼され、「よかったのかもしれない」という感情がぽつぽつと湧いてきた。押さえ込んでいた感情の蓋が開いていくようだった。
申し訳ない気持ちと感謝の気持ち。
あんな私でもちょっとは役に立てていたのかもしれない。
ずっと背負っていた肩の荷がおりたような感覚だった。
***
迷惑をかけてばかりだと思っていたけど、あの頃の私が残してくれたものに3年経ってから会うことができた。
がんばったことの結果って、あとから実感できるものなのかもしれない。
少し離れた位置から冷静に受け止められるし、時を経っても色あせないものを残せたことが分かるから。
あのとき悩みながらもふんばってよかった。きっとそれは今のふんばりも同じで、「がんばってよかった」と言えるときがきっとくるのだろう。
過去の私に励まされ、未来の私を信じ、今日の私は前に進んでいく。
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