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【エッセイ】コンビニスイーツとシガレット

 会社からの帰り道。
 コンビニに所用があって立ち寄ると、とてもガーリーな様相をした女性がレジに並んでいた。大学生くらいだろうか。スプーンが必要なコンビニスイーツと一緒に彼女は店員に番号を伝える。
 店員はカウンターの奥からタバコを手に取り彼女へ渡す。慣れた素振りに似合わないシガレット。
 何か秘密を知ってしまったようで、私は心の所在がなくなってしまう。
 
 自分はといえばタバコの味も知らない。それが美味しいのが苦いのか辛いのか。メンソールの爽やかさも、喉元を通り過ぎるポカリスエットと何が異なるのだろう。
 そんな子どもっぽい思考を巡らせる自分が、隣のレジで購入していたのは明太子おにぎりとロールケーキ。

 同じようなタイミングで出口を抜けて、私は原付にまたがり、彼女は黒い車の助手席に乗り込んだ。
 運転席で笑う男の子。彼女から手渡されたタバコを慣れたようにポケットに仕舞う。
 そんなワンシーンを区切ったまま、私は30キロメートルの速度で道路を飛び出した。

 お使いが当たり前の風景で、二人はこれから夜の街を、どのように駆けていくのだろう。
 ひっそりと、あるいは甘いままに、ひょっとしたら涙を流しながら。
 そうやって重ねた想い出の断層にはきっと、あのコンビニの番号が染み込んで。
 匂いも、味も、思い出も、番号の触り心地すら、この夜が幾千も通り過ぎた後にだって思い出す。
  
 私には、そんな匂いも、味も、思い出もない。
 夜は平等に訪れる。
 彼女にも、彼にも、私にも、甘いコンビニスイーツにも、番号の割り振られたシガレットにも。
 
 家に帰ってロールケーキを食べた。
 夜は、少し長い。

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