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質問が持つ力

幸福とか幸せという言葉は、ちょっと使いづらい。そんなものを追い求めることに、軽薄な響きがしなくもない。最近は「ウェルビーイング」という言葉も広がっているけれど、それと幸福は何が違うのか、あまり確立してはいないようにも見える。

「たった今、楽しい時間を過ごしている」という一時的な快楽の感情と分けて考えるために、アリストテレスが提唱した「ユーダイモニア」という概念が使われることもある。ハーバードの授業では、その両方が必要であって、それを総合して幸福(hapiness)という単語を使っていたので、私もそうすることにしている。

幸福といっても、これが幸せという決まった状態があるわけでもないし、いったんそこに辿り着いたらずっとそこにとどまれるものでもない。だから授業では、「以前の自分と比べて、より幸せであること」を目指していた。教科書として使われていた講師のベンシャハー氏の著書のタイトルも「Happier」。最終講義に向けて語られるのは、「いい人生とは何か」ということだった。

ちなみに、この記事のトップ写真に使っているのが、その教科書。真っ黄色の表紙に、めちゃめちゃ大きい字でHAPPIERって書いてあるから、なんかちょっと…。教科書だから仕方ないのだが、大学の書店で買うのも勇気が必要だった。ちなみに、授業の間、私は時々オフィスアワーに通ってベンシャハー氏と話をしていて、最後にオフィスを訪れた際には、教科書に直筆のメッセージを書いてもらった。今では大事な宝物である。

この授業を受けたことをきっかけに、私はその後も、幸福について書かれたものをよく見聞きするようになった。幸福の定義はさまざまだが、日々のポジティブな感情(happy in your life)と、人生に満足していることや方向性が正しいと感じること(happy with your life)という2つに分けて考えるとわかりやすい、と私は思っている。

“幸せの国に来たのに、いまいち幸せじゃない”という状態に陥っていた頃、私が何をしたかについて連載で書いたこともあったが、私は、デンマークに来たという方向性そのものを後悔したことはなかった。問題は、日々の感情の方(happy in your life)だったと思う。

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