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猪熊弦一郎展 馬と女性たち

昨秋に見に行きメモにまとめていたのに、いつの間にか会期が終わってしまい、公開するタイミングを逃してしまったなぁ、と思っていたら、noteで『熟成下書き』という企画があったので、投稿期間は終わってしまったものの折角だから便乗。書いたらどんどん公開していかないと。

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根岸森林公園にある馬の博物館で開催されていた「猪熊弦一郎展 馬と女性たち」へ。馬の博物館がある根岸森林公園は、日本初の洋式競馬場の跡地から生まれた公園として、市民の憩いの場となっています。

公園内には競馬場のメインスタンド跡が保存されています。


「明るさと自由な雰囲気にあふれる猪熊作品は、見るものを広く受け入れ心をほぐしてくれるような魅力があります。一方で、自分にしか描けない美しい絵を追い求めて挑戦し続けた姿勢は、私たちに勇気を与えてくれます」とは、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館の中野館長の言葉。

藝大時代の写実的な作風、
マティスの影響を大きく受けたパリ留学時代、
従軍記録時代の辛い記憶、
鮮烈な色彩がくすみはじめ 形態が分割していったNY時代、
ハワイで時間と猫の登場、
奥様の死去に伴う空虚を埋めるモチーフとしての顔、
と画風の変化を楽しみながら鑑賞。


女性と馬をモチーフにした作品の一部は撮影可能。撮影可能なエリアが分かれていたのも鑑賞者にとって分かりやすくて助かります。

馬と少女(1935)


七月の馬 「小説新潮」表紙絵(原画) 1996年7月号掲載


黒い裸子と馬(1991)


馬を「神様が作られた作品の中でも傑作の中の傑作」と述べたイノクマさん。女性についても「あんなに完全にバランスをもった美しい立体はない」と語り、両者は魅力に満ちたモチーフだったそう。
2018年の春に、Bunkamuraで行われていた「猫たち」展と比べてみると、『"救い"の対象としての猫』と『"魅力的なモチーフ"としての馬』との違いがはっきりと分かり、このあたりもかなり興味深い。

「芸術は一部の人のものではなく、全ての人に開かれているべき」
「目に触れる絵画の新鮮で明るい色彩や単純な形によって、毎日この駅を通る大勢の人達の生活に、希望と喜びを与えたい」
という言葉に代表される、『開かれた考え方』が魅力です。

2018年の春に、Bunkamuraで行われていた「猫たち」展と比べてみると、『"魅力的なモチーフ"としての馬』と『"救い"の対象としての猫』との違いがはっきりと伝わってきて、とても面白い展示でした。
写実的な作品よりも、抽象性の高い作品の方が想像力を掻き立てられることがあるのかもしれないけど、イノクマさんの作品を見ていると『アートは人生を豊かにし、人生はアートを豊かにする』ということをがヒシヒシと伝わってきて、なんだかココロが軽くなる感じがします。

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