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知らなきゃ危険な共通言語

2024年3月23日に、佐藤友美さん主催「さとゆみゼミ」を卒業。卒業後も、文章力・表現力をメキメキと上げ続けるため、仲間と共に、note投稿1,000日チャレンジをスタート。

Challenge #25

福岡から東京へ移住したのは、25歳のころ。バリバリの博多弁を話していた私は、東京に住んでも方言を直そうとはしなかった。

大学生になる長男が、まだ小さかった頃。幼稚園のママ友が、私たちのアパートに遊びにきていた。4月も後半で暖かい日が続いていたのだが、その日ばかりは少し肌寒い。

「もう冬服、直したっちゃんねー」と言うと、ママ友が驚いた顔をして私を見ている。その瞬間、ピンときたのだが、「仕舞う(片付ける)」ことを「直す」と言うのは、九州の方言なのだった。

すぐに「もう春夏ものに衣替えして、冬服すぐに出せんっちゃん」と言い直した。彼女は最初、「冬服をお直ししたのかな?(お裁縫して)」と思ったそうだ。

そういえば昔、父が、「方言を話すのは良いが、方言を方言とわかっていないまま話すのは、タチが悪い」と言っていた。

これは、職業を始めとするコミュニティーの「共通言語」も同じだよなぁ、と思う。

昨日、上司のSさんに「横石さん、ちょっといい?」と話しかけられた。私がライターをしていると知っている彼女は、ある原稿をチェックして欲しいと言う。

市の広報誌に、「教育への取り組み」に関するコラムを毎月載せることになったらしく、その第1弾の原稿だった。教育委員会の取り組みについて、元校長先生が執筆した記事だ。Sさんは、「市民が読んでくれる文章にしたい」と言う。

読ませてもらって思った。先生たちの『共通言語』が、夜空に輝く星のようにちらばっている。

授業のあり方、単線型・複線型の授業……。先生同士なら理解できても、一般市民にはほとんど理解できないだろう。読者の頭に「?」が溜まって脳内のメモリを消耗し、きっと読み飛ばされる。これはさとゆみゼミで学んだことだ。

共通言語は、たしかに便利だ。たった一言で、説明を大いに省けるから。でも、「内輪でのみ理解し合える言葉」という認識を持って使わないと、コミュニティの外の人には伝わらない。

だから、私たちライターがいるんだ、と思った。コンテンツを持った人から話を聞いて、皆んなにわかるように翻訳して記事にする。この記事を書いた元校長先生だって、豊富な経験と知識を持っている素晴らしい方だ。その知見が市民に伝わらないなんて、勿体なさすぎる。

気がついたら、「私がインタビューするので、執筆させてください」と、名乗り出ていた。

驚いた顔をするSさんに、プレゼンまで始めてしまった。

「語るべきことを持っていても、伝わらなかったら意味がありません。取材音源をもとにして書かれた記事は、とても多いんです。(目の前にあった雑誌を開いて見せて)この記事も、間違いなくライターが書いています。今、私、インタビューして音源をもとに執筆することを学んでいて…。だから、ぜひ、やらせてくださいっっっ」。

Sさんは、すぐに関係各所に話をしてくれた。私の希望が、あっという間に通ってしまった。「取材をともなう、教育系の記事を書く」という立てたばかりの目標が、まさか本業で叶うとは。

とはいえ、大口を叩いたからには、良い記事を書かないと。来週の月曜日が、初取材。



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