見出し画像

仕事の合格ラインってどこにある?

2024年3月23日に、佐藤友美さん主催「さとゆみゼミ」を卒業。卒業後も、文章力・表現力をメキメキと上げ続けるため、仲間と共に、note投稿1,000日チャレンジをスタート。

#Challenge 24

職場のデスクの背後に、小さな段ボール箱がひとつ置いてあった。「なんだろう」と中を見ると、箱いっぱいにイベントのチラシが入っている。輪ゴムでいくつかの束に分けられていて、それぞれに「〇〇中学校 2年生」などと書かれたフセンが貼ってある。

「学校に配ります?」と、上司にたずねた。外部からのチラシは、教育委員会を通じて学校に渡るようになっている。

上司は、「チラシだけドーンと来てもねぇ。鑑(かがみ)がないまま配布すると、学校が困惑するよね。先方に電話してメールで鑑を送ってもらうことになっているから、その後で学校へチラシを送ろうか」と、わたしに言った。

鑑(かがみ)とは、「ヘッドレター」とも言い、書類の1枚目に添えるものだ。それを読めば「誰が、いつ、何のために」この文書を作ったのか、概要が把握できる。この場合、「学校長宛・生徒へのチラシ配布の依頼文」が鑑になるだろう。

数日経って、チラシの存在を忘れかけていたころ、先方からのメールが届いた。「やっときたか」と思いながら、添付されているPDFを開く。

PDF化された鑑は、2ページにまたがっていた。2枚目にあるのは、問い合わせ先情報の1部。2行だけハミ出てしまいました、といった感じ。

なるほど。「鑑は一枚に納めましょう」は常識かと思っていたが、思ってたほど一般的ではないのかしら。PDFだから編集できないなぁ(職場のPCでは)と、少し悩む。結局、「2枚とも印刷→ 2枚目の2行を、ハサミで切り取る→ 切り取った2行を、1枚目の下部にのりで貼る→ 学校分コピー」というアナログな方法を取った。

1階にある「文書室」と言う場所には、下駄箱のような棚があり学校名が印字されたラベルが貼ってある。毎日、各学校の用務員さんがやってきて、棚の中のものを学校へ運んでくれる。その日も、鑑を添えたチラシの束を封筒に入れ、各学校の棚に差し入れた。そして、「『想像力』なんだよなぁ……」としみじみ思う。

誰かに何かを渡すとき(文章であれ物であれ)、相手側の状況やアクションを想像できるか。受け取った相手が困惑しないように、手間をかけないように配慮する。私もクライアントワークをやって身につけた習慣だけど、できない人が本当に多いよなぁ。


昨夜、さとゆみゼミ卒業生の、ウサミさんによる「テープ起こしの勉強会」があった。ウサミさんは、さとゆみさんがいつもテープ起こしを依頼している方だ。

「どんなコツやノウハウがあるんだろう」。きっと一般的な「テープ起こし」以上の何かがあるはずだ、と考え参加した。

勉強会では、すぐに試してみたいノウハウがたくさんあった。しかし、一番心に残ったのは、ウサミさんの「執筆者への心配り」だ。ライターにどれくらい優しい「テープ起こし」を差し出せるか。ウサミさんのテープ起こしの工程には、相手への思いやりがベースにある気がした。

さとゆみさんが、今日のエッセイでこんなことを書かれていた。

そういえば、私が出会ったとき彼女は本業である人の秘書をしていたのだけれど、彼女が退職するとき、彼女の代わりに秘書が3人募集されたと聞いた。彼女の穴を埋めるには3人必要だったということだ。

おそらくその職場でも、彼女は私のテープ起こしのときのように、あらゆる仕事に工夫をこらして精度の高いアウトプットをしてきたのだろうなと想像する。

求められる人の仕事の仕方【さとゆみの今日もコレカラ/第169回】

昼間、「想像力なんだよなぁ」なんて偉ぶっていた自分が、恥ずかしくなった。

勉強会の最初、「テープ起こしとは?」と尋ねられたとき、「読んで意味や文脈がわかる文章にすること」と答えた。そこまでやれば、相手が「困ること」はないだろうと考えたからだ。

ウサミさんの視座は、「困らせない」なんて、ゆうに超えたところにあった。テープ起こしを受け取った人が、楽に執筆できるように、喜んでもらえるように、工夫する。

「困らせない」なんてギリギリラインじゃないか。どんな仕事をするときも「喜んでもらう」を合格ラインにしよう。リピートされる職業人になるために、視座をグッと上げていく。



この記事が参加している募集

ライターの仕事

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?