見出し画像

ブランチ研究会


フランスに来てから私のまわりの皆がブランチ、ブランチと騒ぎ出し始めたのはそんなに遠い昔ではない。
私にしては日本にいたときから知っていたものだから何故今更という感じでさえあった。
週末に朝昼兼でホテルの朝食みたいなヴォリュームのある洋朝食を摂ることと理解していた。

しばらくはあまり聞かなかったのだが、それは私が学生だったのであまりそんな優雅な生活スタイルに縁がなかったからであろう(今でも優雅と言うにはほど遠いが)。


フィットネスクラブに通うようになってから知り合った二人と仲良し三人組のブランチ研究会を結成した事は楽しい思い出であったが今ではそのうちの一人がリール市に定住し始めたので自然解散となってしまった。
そのブランチ研究会とは内容としては何のことはない、よく一緒にごはんを食べにいったり、お茶したりしたものであった。
しかしここだけの話だが、他の二人と私は食事に関して波長が合わなかったようだ。今考えてみれば年齢が10歳位違うからかとも思うが、日本でも居酒屋とか焼鳥屋の好きな私とクレープやカップケーキの好きな(アルコールは殆ど飲まない)二人と嗜好が合うわけがなかった。 

多数決(と言っても2対1)でしばしば負けて食べたくもないものを食べる私は結構限界にきていた。
それを見かねたのか、一人がある日私にタパス食べに行かないかと誘ってくれて嬉しかったのを覚えている。

後から発覚したのだが彼女は実は何でも食べられるのだが、もう一人が自分でも認めるように超偏食だったので合わせていたらしかった。

私は感動した。

皆が満足するように常に考えて工夫している彼女。
とうとう三人が気を使わないで行けそうな<ブランチ>のあるレストランを見つけた。

実はあまり良く覚えていないのだが、いわゆる<ブレックファーストセット>のようなもの、そうそうアメリカン・ブレックファーストだった。
フレッシュジュース、温かいドリンク、卵料理、パンケーキやトーストにフルーツだったと思う。

ここでまた私の中の悪魔が囁やき始め、「これだったら家で食べても同じ。」
と、喉まで出てきそうだったが、そこは少し考えれば、

<皆で食べることに意義がある>
という結論に何とか達することができた。


しかしながら、やはり気になるのは実際にいつからフランスで、特にパリでブランチが流行りだしたのだろうかと言うこと。
今では多くのレストランやカフェで週末になるとブランチが食べられる。

ちょっと調べたところ、フランスにブランチが入ってきたのは1980年代だそうだ。
ブランチの歴史は浅いし、最初に広まった国はフランスではなくイギリスらしいが、その名前(ブレックファーストとランチを合体させてブランチにしたそうだ)からしてイギリスやアメリカらしい。

アメリカにこの習慣が上陸したのは第二次世界大戦あたりらしい。
 
さてイギリスではどのようにして誕生したかというと、もとは20世紀初旬のようであるが、お金持ちの若者が週末に飲み会をして、翌日朝8時前に起きて朝食を平日通りに摂るのはキツかったからというのだが、確かに考えて見れば典型的イギリス式朝食は量が凄い。
私はホテルでしか食べたことないのであまりあーだこーだ言えないが、イギリスだったらハイティーセットでスコーンにクロテッド・クリームとジャム、これが良いなと思うのである。
もっと若い頃はプラスでサンドウィッチも嬉しかったが今では重苦しい愛になってしまうようになった。

歳は取りたくないね。

イギリス在住の皆さん、是非こんな私にコメントを。或いはnoteで挑戦状を書いてほしい。
因みに朝食に関しては私もフランス式(甘いだけで栄養のない朝食)に関して満足していないのであっさり負けるかも。
かと言って賞品やましてや賞金を期待されてもお答え出来ない。

で、話を戻すと、当時日曜に大抵の人に必須であったミサや狩猟の前に食事を摂るのが不可能だからと終了後にドバっと食べる事になったわけだが、やはり肉類、しかも脂っこいもの中心になるので、睡眠不足や二日酔いの胃袋には拷問のような内容だ。

何とか日曜の食事を考え直さないといけないと言うことになり、朝食をヴォリュームアップしたものを遅い時間(午前11時頃)に摂る習慣が広がっていったのであると聞いている。

ブランチがフランスに入ってきてからは一般のレストラン等で徐々に広まり、現在では週末に多くのレストランで食べられるようになったがその内容は様々、値段も色々といったところである。

印象に残っているのは、一度バスティーユを歩いていて行列を見つけたので常に好奇心のかたまりである私は早速聞いてみたところ、予約の出来ないブランチ専門レストランであった。
その名も<KAFKAF  Brunch>, 特に若い人に人気だ。
この店の売りは「毎日がブランチ。」で言い方を変えれば平日でもブランチしか出さない。
セットはなくてア・ラ・カルトのみ。
しかしながら一皿はヴォリューム多くて値段はそこそこ。
美味しかったが普通の人は半分で丁度よいくらいであった。
たとえば初めて行ったとき、私はパンケーキ(大きいのが3枚)にマスカルポーネチーズのクリームにフルーツどっさり、友人はアボカドトースト、これも大きかった。
半分ずつシェアすれば丁度よいくらいであったが、その時はコロナ対策の外出制限が終わって間もない位だったのでお互いに分け合う事を考えなかった。

今思うと食べ始める前に分ければ良かったなと後悔。
でもまだ皆外食するのも久しぶりで、久し振りに会う友とのシェアというアイディアがすっかり頭の中から抜けていた。
おかしなもので。

知り合い同士での電話やSMSなどのやり取りは何も変わらず続いていたのにねえ。

Covid 19は生活習慣まで変えてしまった。

また、個人的に気に入ったブランチの話をさせてもらえるなら、だいぶ前のことなので、しかもそのレストランは数年前にとっくに閉店していた。名前も忘れていて、偶然インターネットで古い記録を見つけた。
<Riad Nejma>というモロッコ料理のレストラン。
私はモロッコ旅行未体験者だが、まるでちょっとリッチ名ホテルに宿泊した気分を味わえる、料理も内装も「ス・テ・キ」なところなのだ。

最初はお茶セットから始めた。
ミント・ティーに小菓子セットで当時9ユーロ程。
ミント・ティーは勿論高いところから砂糖入りのあま〜い、そして熱々のお茶をサーヴィスしてくれる。
小菓子はいくつあったか全く覚えていないけれどおそらく3から4個くらいだと思う。
その後一体何人誘って行ったか記憶にないが、ディナーの方が断然雰囲気が良くて、リゾート気分で必ず喜ばれた。
だいたい野菜などの前菜を分け合って、メインはタジンかクスクスといったところである。
デザートはフルーツ中心で甘ったるくはなかった。

その後ブランチにトライしたが、確か29ユーロで温・冷菜がビュッフェスタイルでメインは別だったかもしれない。

もう実在しないレストランの紹介なんて意味無いではないかと、いや、それどころか行けないとわかってるのに「良かった〜。」って言われても嬉しくない!「私も行きたかった〜。」という淋しい声は私だって聞きたいわけではないし。

でもね、フランスのブランチ史上にモロッコスタイルのこんなのがあって今でもあったらまた行きたい。
というコメントを残すことは決して悪い事ではないと思うのだよ。

もしかして今後誰かが同じようなスタイルのブランチを再開してくれるかもしれないし。

そう、パリでブランチスタイルのレストランの多様性は今後益々エスカレートしていくような気がしてならない。

今朝インターネット上で、秋にニュースタイルのブランチレストランがオープンという情報をキャッチした。

そしてこれは私個人のオピニオンだが、レストランの収益を上げるには平日のディナーに力を入れるよりも週末のブランチに重きをおくほうがというアイディアも否めないのでは?

現にホテル等でのブランチメニューを見ると多くが軽く100ユーロを超えてるし、さらにシャンパーニュやカクテルを加えると少々お得になるプランを勧めているところもある。

飲食業界がどんどん伸びていかなくてはいけない今、新しいアイディアを積極的に取り入れていくことが大切ではと思う。
伝統的なものは勿論守っていきたいし、フランスにもともとなかったブランチというスタイルが更に注目されるのも悪いことではないかもとつくづく思う今日この頃であった。


よろしければサポートお願いします。これからもフランスの魅力を皆様に伝え続けて行きたいです!