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『全裸監督』村西とおるとアントレプレナーシップ

ベンチャー企業をいくつか経営している方とお話しする機会があった。編集者も新しいマネタイズの形を模索せねばならない時代に突入し、新規事業案件などを立ち上げる際の参考になればと質問をした。

以下は、とりわけ鮮烈に記憶に残った発言。

ベンチャー立ち上げに必要な要素は?

「マーケティングとか、ファイナンスとか、ストラテジーとか、いろいろ考えなくてはならないことも多いけれど、スタートアップの際に大切なわりに、意外と軽視されがちなのがロー。つまり、法律。法的に白黒ついてるジャンルはスルーした方がいい。白黒ついている時点で、それはもう誰かが手をつけてるわけだし、盤石な大手だったりするから。その変わり、グレーだったら、それはGOサイン‼︎   グレーを攻められるのがベンチャーの強みだから」。

どんな人がアントレプレナー(起業家)には多いの?

「0→1の作業が好きな人は、実は事業をグロースさせることにはさほど興味がない。成功が見えたら、その事業を売って、次の0→1を探したくなってしまうもの」。脳を見てみると、ギャンブラーと同じ部分が刺激されやすく、ギャンブラーと同じ脳内麻薬様物質が出まくっていることがわかっているのだそうだ。

付き合うべき優秀なベンチャー起業、アントレプレナーの見抜き方は?

「 アントレプレナーは概ね詐欺師だと思った方が良い。どんな事業であっても、成功確率なんて1、2割程度と言われている。それなのに自分の信じる未来を絶対成功すると自信満々に説明できて、それを聞いた人たちに夢を見させることができるわけだから」。成功するまでは詐欺師となんら変わらないし、夢を見続けさせられるならそれは詐欺師ではなくアントレプレナーなのだとも言える。かのイーロン・マスクだって、ある側面から見たら詐欺師だと彼は笑う(ちなみに、彼はイーロンの事業に投資しているらしい)。

山田孝之さんがAV監督の村西とおるさんを演じた話題の『全裸監督』全8話を一気に観た。

村西とおるさんは、彼が語るアントレプレナーの素養をたぶんにもった人なのだなぁ、と。あまりにシンクロしすぎて笑ってしまうくらいだった。時が違えば、きっと違うジャンルで七転八倒していたのだろう。

備忘

①バディものとして最高

撮影前に、コロンビアの麻薬組織を描く『ナルコス』に携わった脚本家のワークショップが開かれたよう。さらに、本作品に携わる人すべてにコンプランスのセミナーへの参加が義務づけられていたとか。

タブーへの挑戦、世界同時配信。気合いみなぎる役者たちの仕上がりぶりが素晴らしかったが、とりわけ山田孝之&満島真之介のバディものとしてのストーリー展開がツボだった。

洋楽を使える強み

Bobby Vintonの『Mr.Lonely』とエイミー・ワインハウスの『Back to Black』が劇中で使われたシーンが好みだった。どちらも人間描写にグッときたシーンだ。

③80年代からの問いかけ

当時のことをよく覚えている(自分は代々木忠監督派だと主張する)知人曰く「村西さんが英雄のように格好よく描かれすぎているのは気になる」。扱うテーマがテーマだけに、美化していい部分としてはいけない部分の線引きに、製作陣もかなり苦慮したことは想像に難くない。

いずれにせよ、黒木香さんがあの時代にあげた狼煙への真摯なアンサーを、今、私たちは問われている気がする。



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