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追憶のミーコ その5


きれい好きだったのだと思う。 いや、レディのたしなみだったのかもしれない。

ミーコは、とても躾の行き届いた猫だった。
いや、彼女の性格もあったのだと思う。
部屋に入りたい時はドアやガラス戸を叩き、
出たい時もそうする。
室内を荒らすこともないし、
必要以上にまとわりつくこともない。
引っかかれたことなど一度もないし、
粗相をしたこともない。
テーブルの上に乗ることもなかった。
毛づくろいをし、
居心地のよい場所を見つけて横になり、
私に目を細め、
ウインクのつもりか片目を閉じて見せ、
そして静かに眠りだすのだ。
なので私は、困ることはなにもなかった。

のだが。

ノミには、とても困った。
ミーコが置いて帰るのだ。

もう、こちらは痒くてしかたがない。
仕事にならないほどである。
そのためにノミトラップを自作し、
ガムテープで室内をペタペタし、
大枚をはたいてバルサンを買うはめにもなった。
そしてそれは、だいたい夏であった。

なのでこの時期だけは、簡単に部屋に入れなかった。
まずは外のミーコを観察する。
やたら痒そうにしていたら、入室を断る。
「悪いなあ、ミーコ。今日は入れられないわ」
「ですよね。駆除してもらってきます」
そう言いながら、痒そうにして帰るミーコを何度か見送った。

ミーコは、私の許可なく入ることは一度もなかった。


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