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バイクの旅人 4

第4回 キャンプツーリングの魅力

 朝からたっぷりと、走る。リアにはテントと寝袋、そして自炊道具。陽が傾いたら、大地を間借りし荷を降ろす。米を研ぎ、ロウソクを灯し、星空の下に寝ころぶ。明日吹く風の行方を思い。
 バイク旅の魅力は、その非日常性にあります。そしてその中でも際立っているのが、「キャンプツーリング」です。ホテルや旅館に投宿せず、キャンプ場などで野営するのです。

 テントを張り火を熾し、飯を炊き寝袋にもぐる。闇の深さと夜行動物の賑やかさに驚き、テントごと朝日に包まれ目を覚ます。どれも刺激にあふれ、新鮮です。
 もちろん、キャンプなら四輪でもでき、荷物もはるかに運べます。でもバイクは、大荷物が積めないところに面白さがあります。
 バイク旅のキャンパーを見ればわかりますが、慎ましいのにとても逞しい。空き缶で容器を作り、紙パックを広げてまな板にし、レジ袋で水を汲む。そこには創意と工夫で遊ぶ、アウトドア本来の楽しさがあります。そして同時に、「足る」が学べます。本当に必要な物のいかに少ないことか。四輪の、なんでもありの王様キャンプと比べ、とても創造的で健康的、そして哲学的な野営となります。

 そしてキャンプ場などでは、バイクの旅人同士がすぐに仲良くなれるのが、嬉しい。車種も排気量も、性別も年齢も関係ありません。情報を交換し、夜には酒を酌み交わし、朝にはそれぞれの旅に戻ります。互いの職業も住所も、名前さえ口にしないことがほとんどです。けれどその出会いと別れは、その地の情景とともにいつまでも心に残ります。私がキャンプツーリングに感じる、最大の魅力です。

 さて、四回に渡り私が思うバイク旅の魅力を語りました。しかしバイク人口、そしてツーリング人口は今後減ってゆくでしょう。けれど私は、本当に好きな人たちが走る時代になったと喜んでいます。
 ということで同好の皆様、いずれどこかの空の下で。
 ピース。

初出 共同通信社

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